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<第4話:犯行開始> 「有難う山田君。でも、何で脱げちゃったんだろう?ちゃんと留めてたのに。」 靴を履かせてもらおうと、しゃがむ太郎の肩に手を軽く乗せた祐佳は、左足を太郎の面前に上げ、足を靴に通そうとした。 太郎の視界には、黒くて薄い生地が透かす祐佳の爪先や足の甲が入っている。 太郎は右手で恭しく包みこむように祐佳の足を支え、靴に向かって誘導する仕草をとった。 が、ここに至ったところで、太郎は左手に持つ靴を地面に置き、右と左、両手で祐佳の足を包み込むように握りなおした。 そして、握る手を少しずつ前後に動かし、祐佳の爪先から踝にかけて、パンスト越しに足を撫で始めた。 「え!?山田君。。。?どうしたの?」 何が起きたのか理解出来ない祐佳が、怪訝そうに尋ねる。 右足に履いている靴のピンヒールがグラグラと揺れている。こんな靴でそう長く片足立ちが出来る訳でもあるまい。 太郎はそんな祐佳の足元を見つめながら、右手で足首を掴み、左手でパンストに包まれた爪先を弄っていた。祐佳の問いなぞは無視して。 「へぇ、先輩の足先ってこんな綺麗なんだ。高校ん時は分厚いルーズソックスと黒いローファに隠されてたから、見たこともなかった。 あの女子高生姿も良かったけど、こうやって薄くて黒いストッキングから透けて見える綺麗な脚も良いもんだね。」 「ちょ、ちょっと止めてよ!」 訳も分からず、しかし不快感を覚えた祐佳が強い口調で太郎に話かけながら、掴まれている左足を抜こうと手前に引いた。 が、その程度では抜けない。太郎がしっかりと掴んでいるのだから。むしろ片足立ちになっている祐佳の身体がグラついた。 「なに焦ってるの?及川先輩。高校ん時に、そんな焦った先輩は見たこと無いな。」 茶化すような目で下から見上げる太郎。去年は見せたことのない太郎の反応に、祐佳は少なからず驚いた。 「嫌だ!止めて!!」 さっきよりも大きな声で拒絶した祐佳は、その場を逃れようと左足を強く引いた。 今度は抜けた。が、 「きゃっ!」 バランスを崩した祐佳は、その場に尻餅をついた。 しかもあろうことか、左足こそは太郎の手から逃れたものの、その手には黒いものが握られていた。パンストの先である。 足首を握る右手は放した太郎であったが、爪先を弄る左手は、パンストを掴んで引っ張り上げていた。 祐佳の左脚を収める黒くて薄い布の筒は、足先から太郎の左手まで引き伸ばされて細くて黒い帯を作っている。 「うわ。及川先輩が尻餅ついてるよ。こんな薄っぺらなパンストでも、掴み取って引っ張り上げると、先輩の足元すくって転ばせることが出来るんだね。 凄い恰好だよ。スカートも捲れ上がって、パンティまで覗かせてる。こんな先輩の姿は初めて見た(笑)」 ハッとした祐佳は、両手でスカートの裾を押さえ、慌てて中を隠した。そして、涙目になりながら太郎を見つめた。 「何で?何でこんな事するの?」 声に強さが無い。明らかに狼狽したまま。そんな祐佳を蔑むように太郎が語り始めた。 「何でかって?だって憧れの及川祐佳先輩が綺麗な恰好して目の前に再登場したんだもん。何もしないって手はないじゃん。 ウチの高校でずっとトップ取ってて、あっさりと英明大学に入っちゃうくらい頭良くて、しかも超美人の先輩だぜ。 そんな最高の獲物と遊べるチャンスを貰えたんだから、活用しないとね。 ほ~ら、才色兼備の及川先輩も、こうやってパンスト掴み取っちゃえば、脱ぎでもしないと逃げられないもんね。最高の景色だよ。」 「信じられない!訳わかんない!ヤダ!!止めてよこんな事!!」 大声で喚きながら、引き伸ばされた黒い布を両手で掴んだ祐佳は、力いっぱい引っ張って、太郎の手から引き抜こうとした。 しかし、頭ならともかく、力は太郎の方が圧倒的に強い。ただ生地が更に薄く長く伸びるだけで、太郎自身は微動だにしない。 「な~んだ。先輩こういう時は頭の良さが役に立たないんだね。そんな力で引っ張ったって抜ける訳ないじゃん。 大切なパンストちゃんが裂けちゃうよ。ウェストから下して脱いで逃げた方が早いんじゃない?ここで見ててあげるから。憧れの先輩がパンスト脱ぐ姿。」 完全に馬鹿にしたような言い方である。必死な祐佳は太郎が何と言ってるかなど一切考えず、ひたすらパンストを太郎の手から引き抜こうと引っ張り続けた。 「ヤダー!返してぇ~!」 ニヤニヤ笑いながら祐佳を見下ろす太郎。必死の形相で叫びながら布を引っ張る祐佳。 「きゃっ!!」 祐佳は、突然悲鳴を上げるなり後ろにつんのめって地面に背中をついた。太郎がパンストを掴む手を放したのだ。 一瞬放心状態で地面に座っていた祐佳は、太郎が近寄ろうとしているのに気付くと慌てて立ち上がり、太郎に背を向けて階段に向かって逃げ出した。 右足に履いてるパンプスの細いヒールをグラつかせ、引っ張られて足先のパンストがダボダボになった左足は爪先立ちのままフラフラと。 逃げるといっても、こんな覚束ない足許では早く歩くこともできない。 「ヤダー!誰かぁ~!」 疎らとはいえ、ホームには未だ人も居る。しかしどういう訳か誰も祐佳を助けようとするどころか、見向きもしない。 大声で喚きながら必死に逃げる祐佳。その後ろをスタスタと追いかける太郎。唯その動きだけが際立っていた。 前頁/次頁 |