※※ 女子大生・伊東莉奈 (6) ※※

 ・・・その日、夏樹はいつものファミレスで、莉奈と向き合っていた。

「あ…あの…」と言いかける莉奈の様子が、いつもより硬い。

「お…お願いがあるんです…けど……今度の土曜日、家に来ていただけません?」

 ・・・それって、手土産どうする?
 ・・・じゃなくて、ご両親に何て挨拶すればいい?
 内心あたふたとする夏樹。

「そ…その……両親が旅行で家を空けるので…わ…わたし、一人なんです…」

 ・・・何のこと? もしかして誘われてる??

「わ…わたし、一人でお留守番したことなくて…あの…怖いから…」

 ・・・俺って用心棒かよ?

「ね…お、お願いします……」

 期待が半分、釈然としない気持ちが半分ながら、もちろん夏樹は泊まりに行く約束をした。

 その土曜日は、あっという間にやって来た。
 約束の夕方6時、指定された駅の改札口──初めて莉奈の住んでいるところを教えて貰ったそこは、市でも有数の高級住宅街である──に着いたとき、莉奈はもう待っていた。
 夏樹が見つけるより早く、手を振っている莉奈。

「ごめん、待たせた?」
「ううん、わたしも今来たところ」

 いつもよりぴったりと寄り添う莉奈に、そっと手を握る夏樹。ふわっとした感触の、小さな手。夏樹は握りしめる力の加減がわからなかった。
 嫌がるか・・・覚悟したものの、そんな様子もない。

 歩きながら、莉奈に話しかける。

「ご両親、泊まりに来るって、何か言われなかったの?」
「あ、大丈夫です。大学の友達って言っておいたから、何も言われませんでしたよ~」
 悪戯っぽく笑って、ペロッと舌を出す莉奈。

 ・・・うっ、意外と策士、かも?

 そんな話をしながら10分も歩いたころ、ひときわ大きな屋敷が見えてきた。

「わたし…ここなんです」
「うわぁっ、大きな家ですね」
「ううん、そんなことないですよ…友達の家なんか、もっと大きいし」

 ・・・やっぱり清美のお嬢様!
 嫌味にもなりかねないことを、なんの躊躇いもなく口にする。

「こんな大きな家で、ご両親と3人?」
「ううん、普段はハウスキーパーさんと、そのちっちゃいお嬢さんがいるから、5人なんです。でもハウスキーパーさんも、今日はお休みとってるし…」

 ・・・ますます清美のお嬢様モード、全開なんですけど。
 少し、というよりかなりの戸惑いを覚える夏樹であった。


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「お風呂、先に入ります? 後になると、面倒じゃないかしら…」
 食事も済ませ、リビングで寛いでいた夏樹に、莉奈が言った。

「じゃあ、お先にいただきます」

 案内された風呂場…ジャグジーもついているゆったりとした湯船につかり、さっぱりとした気分で脱衣室に上がる。タオルも洗面具も一通り用意してきたが、使って下さいと言われたバスタオルを借りることにする。

 ・・・さて、どうする?
 パジャマに着替えるのは、下心がありそうに見えるし・・・
 ということで、上はTシャツ、下はジーンズにしてリビングに戻る。

「あら…それ、窮屈じゃありません? 楽にしてくださってよかったのに…」
「いやぁ、あんまりダラけた格好もどうかと思いまして・・・でも、ウチでもこんな格好ですから」
「じゃあ、わたしも入ってきますね。テレビでも見ていて下さい。映画がよければ、そっちのラックにCDがたくさんありますから…」

 莉奈が風呂にゆくと・・・夏樹はテレビどころではなかった。
 どうしても、この先のシチュエーションが様々に頭を過る。
 つい、風呂場の様子が聞こえないかと、耳を澄ませてしまう。

 ぱたぱたと軽い足音がして、莉奈が湯上りの顔を上気させ、パジャマ姿で入ってきた。

「わたしは自宅ですから…ダラケさせていただきました」
 そう言って微笑む。



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