第9章 ― 支配者の傍ら(2) ―

「ん…んん…」
「あむ…モグモグ…」

私の舌を唇に挟んだまま料理を飲み下していく。

ジワ…
久しぶりのキスに股間が熱くなるのを感じた。
たぶん、もう下着にシミができ始めている。

料理が半分なくなるくらいまで口移しを続けていった。

「んんッ…ぷは…」
「もぐ…」

彼は指示も文句もなく、ひたすらに移された料理を胃に落としていった。

「はぁはぁ…」

自らの息が上がっていくのがわかる。
意識的に手を股間に持てっていく。

「……」

パシッ
腕を捕まれ睨まれた。

いくら発情してるとはいえ、彼に、御主人様に許しを請わなければ自慰すら許されない。それが奴隷なのだ。

「ご、ごめんなさい…」
「お仕置きの覚悟があってやったのか?」

「いえ…あの…我慢できなくて…その…」
「覚悟があろうが無かろうが、受けてもらうんだけどな。来い。」
「きゃ!!」

髪を捕まれ厨房まで引きずられた。苦痛よりもこれから起こるであろう虐拷に胸を高鳴らせた。

「さてさて、俺はそこら辺の馬鹿なオヤジ達と違って、ガムシャラに叱るつもりはない。
 まずは言い分を聞こうかな。何で許しも乞わずに勝手なことをした?」
「その…我慢が出来なくて…」

怖い。ただ怒鳴ったり叫んだりは怖くない。頭にくるだけだ。
しかし今の彼のように静かに威圧されると、体の芯から恐怖を植え付けられている感覚にされる。

「我慢できなかったらして良いのか? 奴隷の分際で。」
「しては…駄目…です…」
「だよなぁ。駄目だよなぁ。だが、優しい俺君は、綾香にお仕置きを選ばせてあげようと思う。」

そう言うと彼は厨房をあさり、ワインビネガーとアイスピックを取りだし私に見せ付けた。

「浣腸とピアッシング。どっちが良い?」

彼の提示したお仕置きは、どちらも未知のものだった。
浣腸はされたことがあるが、水以外の物を入れたことはない。
ピアッシングは問題外。耳にピアスはするが彼が言っているのはそんなものじゃない。しかも普通の針じゃない。

「ど、どっちも嫌です…」
「…逆らうのか?」

彼の目が冷たさを増していく。

怖い。
怖い怖い怖い…
きっともっと酷いことをされる。
嫌な汗が背中を流れ始める。

「あ……あ……あのッ……ごめんなさいッ…やります!やりますからッ酷いことしないで!!」
「…………。」

「い…いや…」
「………………ぷッ…はッははははははッ。」

「?……え…あの?」
「いや、わりぃわりぃ。」

いきなり雰囲気が変わり、御主人様は笑い続けた。

「久々におまえのビビった顔が見たくてさ。安心しろ。今日は道具も無いし、浣腸もピアスもしねぇよ。」
「あ…」

そういえば御主人様は今日は手ぶらで来店してきた。
だけど少し残念に感じてしまう。確実に奴隷として私が作り変えられていると実感した。


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