第7章 ― 知恵の実を口に(7) ―
「ちょッ…い、いや…ッ――――――!!」
口を抑え、全身の痙攣を悟られぬよう体をこわばらせた。
イってしまった。生徒の前で。
きっと彼の狙いはこれ。
大衆の前で辱めることだ。
「はッ…はッ…はッ…」
「だ、大丈夫ですか?」
「はッ…はッ…んく…だ、大丈夫です。すみません、今日は体調が良くないので…」
下手な言い訳をしつつ授業を進めていく。
何度か絶頂を向かえる。
軽いものから深い絶頂まで、幾度となくバレないように歯を食い縛り声を抑え込んだ。
狂いそうだ。
絶頂を迎えても幾度となく快楽を送り込まれ発情は治まらない。
「はぁ―…はぁ―…んんッ…はぁ…はぁ………?」
最後の授業前、玩具の振動が弱くなった。
不意にあの臭いが鼻を突いた。
少しだけ。少しだけだが、確実に水橋さんの煙草の臭いがした。
「水橋さん…」
彼の少しなりの優しさだと思った。
これなら先程より楽に授業が出来る。
それが優しさではなく、更なる責めだと気付いたのは、授業が始まって20分ほど経ってからだった。
「ん……はぁ……はぁ………」
強い振動で幾度となく絶頂に押し上げられた私の体に、弱い振動は物足りなかった。
ただただ性感を高めるもののそれ以上の快楽を与えてくれなかった。
それを何十分も続けられる。快楽はもどかしさに変わり私を責め立てた。
決定打が欲しかった。性感のダムを壊し、絶頂へと押し上げる決定打が。
しかし今は授業中。そんなことはできない。
これが彼の狙いだ。あれだけイカせた後に、欲求不満にさせ性からの逃避を抑える。
これ以上彼の掌で踊らされては堕ちる所まで堕ちてしまう。
授業が終り、すぐにトイレまで急ぐ。このうずきを止めないと気が変になる。
「来ると思いましたよ。暁先生。」
トイレの前で彼は待っていた。
私がこの中で自慰をするのを見越していた。
「さぁ帰りましょう。」
「い、嫌です…帰るのならお一人でどうぞ。」
「駄目ですよ。今日は炎之花と一緒に一美を可愛がる約束があるんだ。飼い主が奴隷を裏切ったら締まりが着かないだろう?」
「また姉さんと…」
嫌だ。
あの姉さんを見せられるのは耐えられない。尊敬していた姉の堕ちた姿は私の精神を著しく蝕んだ。
「ま、言うこと聞いてくれないと酷いことするまでですけどね。」
結局彼に従う他なかった。
………
……
…
車が走り、向かった建物に入るとわかる。
匂いと光の加減でそこが水橋さんの家だと。
「今日は、我が家のキッチンにご案内します。」
彼は私の手を引き歩き出した。
廊下を歩き扉を開いた彼は、ソファに私を座らせた。
ピンポーン…
暫くしてチャイムが鳴った。
体がビクリと跳ねる。
きっと姉さんだ。
ガチャッ
「来たね。あがって。」
インターフォンを手に取り、客を向かえた。
この空間が淫獄に変わる。
少し、待ちどうしく思えた自分にゾッとした。
知恵の実はすぐそこにある。
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