第7章 ―知恵の実を口に(2)―

しばらくし、最後の一口を食べ終った。

「ごちそうさまでした。」
「お粗末さまでした~。っともう10時か…寝過ぎたな。明日学校だろ?」

「え、あ、はい。」
「じゃ、早く帰らなきゃな。送るぜ。忘れ物ない?」
「は、はい。」

「よし、行こうか。」
彼は私の手を引き玄関を出る。

ガララッ。
ド、ブルルッ。

暫く私を待たせるとシャッターの音らしきものが聞こえた。次に聞こえたのは車のエンジン音。

「乗って。」
彼は私を車に乗せ走り出した。

車の中では俗に言うパンクロックが大音量で流れている。
歌詞が全部英語なので洋楽だろう。

彼の私生活を目にし、私の胸は高鳴った。まだ彼への恋愛感情は消えてはいなかった。





次の日、まるで犯されたことが嘘のように、私の心は晴れ晴れとしていた。
彼の優しさのせいか、最初の日に比べれば酷いことをされてないためかはわからない。ただ憂鬱な気分ではなかった。

「先生おはよう~!」
「はい。おはようございます。」
「先生おはようございます。」
「おはようございます。」

生徒たちと挨拶を交し、教員室に足を伸ばす。
今日は、教員会議が朝にある。
この学園と同じ系列の大学や専門学校から、教育実習生がくる。
マンモス校だけあり、2~3人ではなく、数クラスに一人ずつ、教科ごとに3人ずつとかなり多い。

「では、皆さん。先生方に挨拶を。」

教頭先生が実習生に挨拶をさせている。

名前、所属校、担当教科などそれぞれの自己紹介をしていく、実習生たち。
熱意に満ちた人、遊び半分な人、嫌々来た感じの人もいる。

「律海デザイン専門学校から来ました。水橋暎です。担当は美術です。よろしくお願いします。」
「!?」

ガタッ
思わず立ってしまった。何で彼が?

「? 暁先生、どうしたんですか?」
「え…あ…」

教頭先生の指摘にうろたえてしまう。

「あ、教頭先生。暁さんとは知り合いなんです。今日のこと言い忘れてまして…それで驚いてるんでしょう。」
「そうなんですか。暁先生座って。」

「は、はい…」
言われるがまま椅子に座った。

暫く実習生の挨拶が続き、最後の一人が終ると教頭先生が校則や注意事項を説明している。

「では、各教室に行ってください。」
その一言で教員会議は終りを告げた。

私も水橋さんも、他の先生と実習生と共に第3棟に向かった。
この学校は5つの棟に別れている。

教室は第1棟。
今から行く第3棟は美術室、音楽室、書道室があり、美術部や吹奏楽部、華道部や書道部の部室もある。通称芸術棟。

「あ、あの…水橋さん。」
「なんですか暁先生?」

「なんで…」
「ああ、学校が毎年一人ずつ教生を派遣するですよ。なんつーか、非常勤なら教員免許はいらないし、就職先が増えるだろうってことらしいですが。」

「そ、そうなんですか…」
「俺がここに来たのはマジで偶然だ。何より予定されていたのは一ヶ月も前だしな。」

最後の言葉だけが支配者の言葉、それを耳元で囁かれた。


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