第5章 ―悪魔と神の天秤(7)―

「なら、姉として、奴隷の先輩として精液を吸い出してやれよ。」
「……………はい…」
「処女失ったばっかだから指入れたりするなよ。全て口と舌でやれ。」

姉さんと水橋さんは何かを話しているようだったが、今の私は処女を失ったショックと疲労でよくわからなかった。
体を動かすことすら憂鬱だった。脚を開いたまま、閉じることすら忘れていた。

ピチャ…

「!?」

生暖かい感触が私の下半身を襲う。

「ピチャッんん…はぁ…御主人様の精液の味と炎之花の血の味がする…」
「ね、姉さん!?」

この感覚は先程味わった姉さんの舌だった。穴に舌を侵入させ、必死に吸引している。

「ねえ…さん…やめ…あうぅッ…」
「ズロロッ…ピチャッ……だ、だめ…早く吸いとらないと…ん…炎之花、妊娠しちゃう…」

嘘だ。たかだか舌で吸い出したところで焼け石に水だろう。看護婦の姉さんならそれくらいわかるだろう。
きっと飲みたいだけ。先ほどから聞こえる姉さんの声には喜びと興奮の色が混ざっている。

「ふぅ…綾香、綺麗にしてくれ。上手かったらそのまま出してやる。」
「はい…頑張って綺麗にします…」

あちらでは綾香さんと水橋さんが戯れている。
この空間は私の知る喫茶店ではなくなった。一匹の牡とそれに膝まづき、性を求める牝達の淫獄となっている。
私もその淫獄に捕われた牝だ。きっと逃げることなど出来はしない。

カシャッ
カメラのシャッター音が聞こえる。その音と共に私の意識は闇に沈んでいった。





ピピピピピッピピピピピッ…

「ん…」

聞き覚えのある電子音。私の部屋の目覚まし時計だ。

ピピッピッ…

目覚まし時計を止め、半身をお越し、部屋の空気を感じる。間違いなく私の部屋。
昨日の出来事は夢?

ズキ…

股間に違和感を感じる。軽い痛みと何かを挟んだような感覚。
処女を失った感覚?

「!…下着がない…」

私は下着がないことに気付く。夢じゃない。あの出来事は紛れもなく現実。

「私…ああぁぁ…」

絶望。たぶんそれが適切な感情だと思う。

ピリリリッピリリリッ…
突然、携帯電話の着信音が響く。

「え、あ、電話…」

私は慌ててバッグから携帯電話を取り出し、通話ボタンを押した。

ピッ
「もしもし…?」

「もしもし炎之花さん?」
「み、水橋さん…」

電話の相手は水橋さんだった。
自然に声が震える。

「くくッ…そんな脅えないでくださいよ。」
「な、なんのご用ですか!?」

「そんな邪険にしなくてもいいじゃないですか。まぁ用件はありますけど。…放課後喫茶店で待ち合わせましょう。」
「い、嫌です!」

「あなたに拒否権はない。あの時の写真、しっかりと撮ってあります。…これ以上は言わなくてもわかりますね?」
「あぁ…そんな…」

「じゃあ放課後お待ちしています。」
ピッ…ツー…ツー…
電話は切れた。

私は電話を床に落とし、うなだれた。
またあの狂った宴が始まる。



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