第5章 ―悪魔と神の天秤(2)―

男の人に体を触られるのは初めてだった。
そのイヤらしい手付きは私の体に嫌悪とも言える感覚を与えた。いえ、嫌悪ととってしまった。
神の教えに反する行為に恐怖が浮かんできた。

「ッ…」
彼は痛みを感じたのか短い息を吐く。

「あ…ご、ごめんなさい…でも…私は神に仕える身です…」
「…。では、その神の教えとやらがどんなに無力か教えてあげます。」

水橋さんは私の両手を素早く掴み拘束した。

「祈ってみたらどうです? 神に助けてくれと。」
「ああ…主よ私をお救い下さい…」

それがどれだけ無意味なものかわかっていた。
彼はまたゆっくりと私に歩み寄った。

「神は助けてくれましたか? まぁ見ればわかりますけど。」
「ひッ…」
「大丈夫。脅えないで。」

まただ。また優しく囁き私の体に手を這わせる。

だめだ。逆らえない。
この優しさはいつもの水橋さんだ。今の彼に逆らいたくないと本能が訴えていた。

「痛くはしません。」
彼はゆっくりと優しく私の性感を刺激する。

「ああ…」

一人ヨガリではない、確実に性感を高める彼の手は着実に私の理性を剥がしていく。
段々と私も女だと自覚させられていく。

「お姉さんほどではないですが、なかなか大きいですね。」

彼は私の胸をゆっくりとこね回しそんなことを口にする。
更に血液が顔に集まる。

「いくつです?」
「え…?」

「バストのサイズですよ。てかスリーサイズ教えてください。」
「い、いやです!」

「まぁその反応が普通ですね。じゃあ一美に聞きます。」
「え!?やめてください!」

確に姉は私のスリーサイズを知っている。
しかし私以外の口から彼に知られるのは嫌だった。
たぶん、私だけじゃない。自分の体のことを自分以外の人間から知られることは誰でも嫌悪するだろう。

「なら、教えてくれます?」
「あ……え…と………………」

再度彼に問われ沈黙してしまう。
なんで私、逃げなかったんだろう?
きっと水橋さんは、もう逃がしてくれない。
言わなければならない。私が言い出さなければ、きっと姉さんが水橋さんに教えてしまう。

「…………………です。」
「え? 小さすぎて聞こえませんよ。」

「89…54…85…です…」
「へぇ…モデル並のプロポーションですね。」
「………」

顔から火が出そうだ。
うつ向いて沈黙してしまう。

「この体を維持できるなんて、なにか運動でもしてるんですか?」

彼は、私のスーツとワイシャツのボタンをはずし、ブラジャーをむしり取る。私の胸が露になる。

「やッ……してないです。これ以上言わないでください…恥ずかしい…」
「恥ずかしがることないですよ。自慢して良いくらいです。女として美しく産まれたことは神に感謝しなきゃ。」
「感謝なんて……神に仕える身には不要な体です。」

私は首を左右に振った。


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