第3章 昔話「性奴隷への誘い」(1)
カランッカラン…
「いらっしゃいませ~」
扉に取り付けた鐘が鳴り、条件反射で接客の挨拶をする。
私はここの店主。
自分で言うのはなんだが、スタイルは良い方で背も高い。まぁ胸は人並みだが。顔もそこそこ。ロシア人の祖母譲りの銀髪は私の自慢。
どこにでもいそうな平凡なサラリーマンの旦那がいる。
「こんちわ綾香さん。」
来店したのは水島暎。
高校生の頃からの常連客。180cm以上の長身が第一印象。
特に不良でも優等生でもない感じの風貌。特徴と言えば眠たげな目と、額に髪がかかるのが嫌だと言う理由で立たせている黒髪。
客と言えるのかわからないほど客扱いしていない男の一人。
別にチェーン店でないのだから、それくらいの無礼は関係ない。
「ここんとこ毎日ね? 学校忙しいの?」
彼はすぐ近くのデザイン学校に通っているため、昼休みや放課後によく来る。
「まぁそれなりに。自分で飯作るのが面倒なのもありますけど。」
「んなことだと思ったわ。座ってなさい。作ってあげるから。」
「え? 俺、注文してないですよ?」
「あんたは好きな物だけ食べ過ぎ。栄養片寄らないように私が作ってあげようっていう、私の善意じゃない。」
「とかなんとか言って、高い物食わそうって腹だったり?」
「あ、バレた?」
「え!? ちょッマジで!?」
「冗談よ。座ってなさい。」
私は調理場に立ち料理をし始める。
「そう言えばあんた、先月の一ヶ月間全然来なかったけど、どうしたの?」
「あー入院してた。」
「は? なんでまた。」
「歩いてたら道の曲がり角で車とぶつかって。肋骨2本折っただけで済みましたけど。」
「ボーっとしてるからよ。」
「ひどいなぁ…いたわりの言葉無しですか。」
「死んでないなら必要ない。はい、出来たわよ。」
私は水橋くんの席に料理を置く。
「いただきます。」
ガツガツと料理を口に運ぶ水橋くん。
男のこういう食事の仕方は好きだ。チマチマと行儀良く食うやつなんかよりは断然。
カランッカラン…
「いらっしゃいませ。あ、一美さん。」
ドアのベルが鳴り、来客かと思い振り向くとそこには巨乳美女。六条一美さん。妹さんと待ち合わせだろう。
「あ、一美さんじゃないですか。」
一美さんを席に案内していると、突然水橋くんが声をあげた。
「ん? あんた知ってんの? 一美さんのこと。」
「入院してるときの看護婦さんだったんですよ。ね、一美さん。」
その時、一美さんの体がビクリと跳ねる。まるで何かに脅えているような。
「え、ええ、そうなの。久しぶりね。ご…水橋くん。」
まただ。何かに脅えるような一美さんの反応。そして何故か水橋くんの声を聞く度、赤くなる顔。
「?」
しかし私はその反応を気のせいだと思い深くは考えなかった。
「それじゃ、俺は学校に戻ります。綾香さんお会計。」
「はいはい。」
彼は会計を済ませ、店を後にする。
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