第2章 昔話「待ち焦がれた快楽」(4)
目の前が白く染まり、体が弾け、宙に浮くような感覚。まるで自分の体が自分でなくなるような感覚だった。
「!!!――――――――ひはああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ…あ……ああ…あ………」
「くッ…中に出すぞ!」
「ひ!?熱ぅ…中が…子宮が熱いぃ…」
絶対に越えてはならない一線。そんなこと考える余裕などなかった。いや、中に出される感覚すら待ち焦がれていた。
…
…
…
「………………」
数十分、私はベットに体を預けていた。強烈すぎる絶頂が体を弛緩させていた。
「ふ―――…」
御主人様は煙草を吸い、満足そうに煙を吐く。
「…注意しないの?」
「…う…」
私は力の入らぬ体を起こし、御主人様の方に向き直る。しかし、顔は見ることが出来ず目を伏せた。
「私は奴隷です…奴隷は主人に口堪えはできません…」
「ん~、まぁそうだろうけどさ、周りに関係気付かれたくないだろ?
普段はいつも通りでいい。調教中は奴隷でいてもらうけど。」
「は、はい…」
少し嬉しかった。御主人様が私を気遣ってくれることが。
「…。一美さん仕事戻らなくて良いんですか? いくらなんでも、見回り長すぎでしょ。」
「え、あッ…」
御主人様の言葉に気付き、慌てて服を着る。
「あ…あの…」
「パンツでしょう? はい。」
御主人様はショーツを投げ渡してくれた。それを急いで履き、全ての準備を整える。
「あの…」
「じゃ、おやすみ一美さん。」
「はい、お休みなさいませ御主人様。」
私はこの夜、人を捨て奴隷として生まれ変わった。
まだ心から服従していない。
しかし、近い将来、必ず肉体だけでなく心までも虜にさせられると確信している。
別れ際の彼の不適な笑みがそれを物語っていた。
…
…
…
次の日は私は休暇だった。夜勤の次の日は休みが多い。この時もそうだった。
恥ずかしいことに、その日私はオナニーをした。昨日御主人様にされたことを思いだし欲情してしまったのだ。
しかし満足することは出来なかった。早く彼に会いたかった。
次の日彼の病室に急いだ。
「ん~まだ検温の時間じゃないですよ?」
病室に行くと彼は普段と変わらぬ、『患者の水橋くん』で私を出迎えた。
「え…あ、その…」
「まぁいいけどさ。そうだ、昨日、病院抜け出して一美さんにプレゼント買ってきたんだ。」
「え…?」
今の『看護婦の一美』としては、抜け出したことを怒るべきなのだろうが、プレゼントと言う言葉に嬉しさを感じてしまい、顔を赤くし唖然となってしまう。。
水橋くんは私に紙袋を手渡した。少し重く、チャラチャラと金属音が聞こえてくる。
「早く仕事戻った方がいいですよ。あ、昼休みに、それを持ってここに来てください。」
…
…
…
昼休み、私は水橋くんの病室に急いだ。
ガラッ…
白い引き戸を開け病室に入ると、彼はいなかった。
「…?」
彼がいない代わりにベットの上に置き手紙があった。
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