第12章 ― 日  常(1) ―

なんだかんだで、教生の期間も2週間が過ぎた。
ただ俺が好きなようにしただけの事。それが一人の看護婦の寂しさを癒し、教師の目を治し始めた。
善行をした覚えはないんだけどなぁ…

「なにボケッとしてんだよ、暎。」
「ん、ああ夜のくせに明るいなぁっと思ってな。」

深夜2時。
俺は中学時代からの悪友二人と車で河川敷に来ていた。

空には雲一つ無く、明るすぎなくらいの白い月が辺りを照らしていた。
特に来た理由もなく、何か理由をつけるとすればただボーっとしに。

「で? 暎。お前、律女で可愛い娘見付けたか?」
「ん~。可愛い先生ならいたぜ。」
「相変わらず年上好きだな。」
「まぁな。」

明るい月の下で煙草を吹かし、なんの目的もなく空を見てどうでも良い話をする。
なんにも変わらない。
彼女達を手に入れて唯一恐ろしかったこと。それは日常の変化。

だけど変わらない。俺の日常は変わらず回転している。
適当に楽しんで授業をこなし、休み前の深夜には友達となんの目的もなく集まり、どうでも良い話をして、眠くなったら帰って寝る。
そこにあいつらを抱くと言う少しの刺激の介入以外、俺の日常ってやつは回転している。

「平和だなぁ…」
「突然なんだ?」
「いや何でもねぇ…」

これが俺が望んだもの。
刺激的な日常ではなく、生き甲斐がハッキリと見える毎日でもなく、急ぎ足で進む人生でもない。
生き甲斐が曖昧で、ゆっくりと歩いて、面倒じゃないくらいの少しの刺激がある、そんなのったりくったり回転する日常を望んだ。
それを俺は手に入れた。

「そういや、頼まれてたもん出来上がったぜ。」
「お、あんがと。」

俺は友達から金属の輪を六個受け取った。シルバーのピアスだ。

「んなもんどうすんだ? お前、教生だろ。」
「まぁ色々と。」





そして数日経ち、俺は三人を家に招いた。
三人を居間のソファに並んで座らせ、その対面に俺が座る。

「さて、今日は仕上げをしたいと思います。」
「仕上げ?」

炎之花たちは三人そろって首を傾げている。

「ああ。これをお前達にやる。俺がデザインして、友達に作ってもらった。」

俺はピアスを一個ずつ手渡した。
鎖の模様をあしらった銀のピアス。

「これ、ピアス?」
「ああ。最後の仕上げはピアッシングだ。」
「!!」

三人の顔が険しくなる。俺が普通にピアスをつけるはずがないとわかっている。

「まぁやる、やらないは自由だ。特に綾香は旦那に見付かったら大問題だし。」
「このピアスは…御主人様のものだって言う証になるんですよね?」

沈黙を破り口を開いたのは炎之花だった。

「まぁそうなるかな。別にこれをつけなきゃ奴隷をやめろとは言わん。まぁ形だけさ。首輪もあるしな。」

首輪も三人には渡してある。最近あまりつけている姿を見ていないが、マジで調教する時には必ずつけさせる。
そのせいか、三人の鞄にはいつも首輪が入っている。


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