第11章 ― 光ある世界へ(4) ―
「見逃してやるよ。楽しんだし。その代わり、次同じようなことしてみろ。次こそ、写真が学校に送られるからな。」
「は、はい…」
「ならとっとと出てけボケ。」
山村先生は慌てた様子で教室を出ていった。
なんとなく御主人様の狙いがわかった。山村先生を裁くのが目的ではなく、弱味を握り、行動を支配するのが目的。
裁いた後、報復されないとは限らない。それを防ぐため、弱味を握り続ける気なのだろう。
「よう。大丈夫か?」
「ご…御主人様ぁ~…」
ようやく助かったことを実感し涙が出てきた。
「泣くなよ。まったく…」
御主人様は私の頭を撫で、優しく乱れた服を直してくれた。
やっぱり御主人様は優しい。そう改めて思った。
「あの…何でここが…?」
「ん、ああ。この部屋の先の非常階段が俺の喫煙スポットだからな。煙草吸いに来たら、お前の叫び声が聞こえて。」
「そうなんですか…。
…………………………………ん? 駄目じゃないですか! 校内は禁煙です!」
学校の中は禁煙が当たり前。御主人様はそれを知っていて、隠れて煙草を吸いに来たらしい。
安心半分、呆れてしまう。
「まぁまぁ。だから見付からねぇように、外の非常階段なんだって。なんか高校のころみてぇで懐かしいし。」
「高校生の頃から吸ってたんですか!? 未成年が駄目です!」
そう言えば私が高校生の頃にも、隠れて煙草を吸っている学生はいたらしい。
非常階段や校庭隅は、そんな不良たちの喫煙スポットらしかった。御主人様もその類の学生だったのだろう。
「もうッ!」
「そう怒るなよ。まったく。………そういや飯まだだろ? 一緒に食おうぜ。」
「え…あ、はい。」
なんか話をうやむやにされ、彼とご飯を食べることになった。
お互いお弁当を持って例の非常階段で落ち合い、食事をする。
「涼しい…」
「ああここは日陰になってるし、風通し良いし、他の棟からも完全に死角だからな。のんびりするにはちょうど良いんだ。」
「そうなんですか。」
「にしてさっきは大変だったな。俺が来なきゃマジで犯されてたぞ。」
「…ご、ごめんなさい…」
「いや、謝る必要はない。悪いのあの糞オヤジだ。…………………なんか思い出したらまた腹立ってきた。あのオヤジやっぱ殴って…」
「も、もう良いですから、御主人様!」
なんかほのぼのとした感じだ。
涼しい風に吹かれお弁当を食べて。
最近では教会でのお昼のお祈りもサボり気味だ。彼と一緒にご飯を食べたり、お話をしたりしているせいだ。
「まぁあんな野郎だ。そのうち自滅すんだろ。」
キンッシュボッ
「ふぅ――――………食った食った。」
「だから学校で煙草は…」
「まぁまぁ。」
さっき怒ったのに喫煙しだす。
御主人様は私のことを年上と思っていないと思った。
私、年上の威厳無いのかなぁ…
戻る/
進む
image