官能小説『父親の面影を追い求め』

知佳 作



桂子(image)





7「逝ってなかった。逝ったふり・・・」 そのことだった。

ソファーでのいかがわしい行為
 オーナーがコトに及ぼうとしたのもそうなら桂子自身が人妻特有のあの背徳願望を隠しきれなくなったのではないかとオーナーが感じたのも昼休憩で店内の灯りを落としていたときであり、暗がりこそ人妻に羞恥を忘れさせその気に至らしめるようなのだ。 だから昼下がりの店内であってもデキたようなのだ。

 未だ明けやらぬ薄暗いひとつ屋根の下、庭から忍び込み旦那が眠るその脇で薄い掛布団の中に忍び込み待ち受けてくれていた人妻の腰を割って気配を殺し快楽を貪るような、そんな気にさせてくれていたからだ。 桂子が明け方の靄の中で見た黒い影の正体は実は自宅で飼っていた猫だったようなのだが、眠れぬことに、佳子という人妻を抱きたくて男根が反り返ることに苛立ちを覚えたオーナーはそれよりずっと早い時間に来て物陰に隠れながら桂子の寝乱れたあられもない姿を覗き見つつあらぬ妄想に耽ってくれていたのだ。

 オーナーが桂子に目を付けたのはガソリンスタンドで揉め事を起こしたことによる噂が拡散したのを耳に挟んだからではない。 
それより以前、彼女が出逢い系に登録しまくってた頃に一度だけ若者のふりして桂子にアタックを試み、ものの見事にフラれたことで大人げなく激高してしまい、つい実像を探し求め、執念が実って行きついただけなのだ。 
彼女を雇うというのはつまり、職をあっせんした風に見せかけた体の良いストーカーなのだ。

それで分かったのは桂子の、いかにも人の良いところと噓のつけないところであった。
若くきれいな女性によくある好きな風を装いその実金目当てに表面上のみ取り繕う・・・が桂子には全くなかったのである。
援助目的でもなければ職探しでもない、本心から頼れる男を つまりご無沙汰を解消してくれる男根を探していたのである。
若かりし頃、数々の女を泣かしてきた手前うぬぼれだけは人一倍強かったオーナーは老いているとはいえ彼女が相手ならひょっとするとひょっとなるんじゃなかろうかという気持ちに行きつき物は試し我こそはと名乗りを上げたわけであった。 そしてそれはものの見事に的中したように思えた。
勘違いが始まると店の客の桂子を見る目つきでさえ癇に障った。
久しく忘れていた腹の底から突き上げるような性的興奮を覚えるようになってきたからだ。

なるほど厨房で若い人妻の肉体に触れた時の、あのなんとも心地よい気持ち。
オーナーこそ若い女性の肉体の虜になり、自分にとって彼女は従業員であるはずなのに、その若妻の豊かな尻を仕事も忘れ懸命に追いかけ始めていたのだ。
そうやって隅に追い込み、先だってやっとの思いで説き伏せ目指す豊かな尻に覆い隠された繁みの中のワレメを拝むことが出来たのである。

 桂子にしても事情は似たようなものだ。 愛だ恋だの屁理屈をこねてはいるが、結局のところ女性器に向かいいやらしい真似をする相手を睨み据えながらの結合、悪事と知りつつ快感に浸る言おうか夫への裏切り、これに尽きる。 オ〇ンコにチ〇ポが挿し込まれ危険と知りつつ中に注がせることに至上の喜びを感じるのだ。

そこに至るまでひたすら尽くさねばならないのが男だ。 男とは誠さほどに悲しいもの。
いや、W不倫とは悲しいもので、逢わぬ間 相手がどこで何をしでかしているのか疑念を抱き、挙句の果て不義密通を疑ってやまない。
殊にたとえ一度であっても旦那以外の男根に溺れてしまうような女と聞けば己だって実際に試したく、金玉が肉胴が驕っていてもたってもおれなくなる。

それがゆえにあの時、場所がらも立場もわきまえず店の隅のソファーで男根に飢え切った人妻という名の彼女を抑え込みまるで獣じみた絡み合いに及んでしまっていたのだ。
最初に起こった物音は桂子の喘ぎ声とオーナーの唸り声に搔き消され、恐らく手が届くような場所でこれを覗き見ていたとしてもそ奴も気が付かなかったんじゃないかと思われる。 聞こえたとしても当人同士は気にかける余裕などあろうはずがなかった。
だが二度目のソレはオーナーをして逸物を引き抜かねばならないほどはっきり明瞭に聞こえた。

無情に過ぎる時間との戦いの中でご無沙汰続きで飢え切った他人妻のワレメと横恋慕に狂った初老の他人棒を娶せ(めあわせ)ようとの試みが始まっていて、しかもその若妻桂子との情事を初老の男は途中下車しなければならないような事態が起こったのだ。
目のやり場に困るほど卑猥に口を広げ始めた桂子の蜜壺は初老の男のカリ首を前に既にして我慢の限界を超えてくれており 先走りが始まった太いカリ首を後ろ髪引く旦那という存在を押しやり他人棒をやっと迎え入れてくれる気になってくれたと感じた。 その矢先の出来事と言おうか中断だったのだ。
お互いの気持ちがひとつになれたのではないかと確信しかけた瞬間、無情にも鍵を掛け開かなくしていた扉が表から強くノックされたのだ。 オーナーですらたじろぐほど怒りに満ち満ちたノックだった。

「キャッ!! なになに!?」 桂子は悲鳴を上げ、先端をやっと挿し込んでもらえたというのにすげなく振り払い起き上がって背もたれに掛かっていた服で慌てて胸を隠し、しかし逃げることなくその場に居竦んで(いすくんで)しまったのだ。
人妻でありながら、しかも薄暗いとはいえ真昼間の店内で背徳に身を焦がすような状態になってしまっていることに恥じて我に返り、胸を隠したついでに下腹部も包み隠そうとしたが、いかんせんたくし上げたスカートが窮屈過ぎて上手く下がってくれない。

剛毛に覆われたワレメを隠したくても肝心のパンティーはオーナーが脱がし、足首に引っかかった状態で事に及んでいる間にどこかに失せてしまっていたのだ。
逝かせ始めたと舌なめずりし挿し込みにかかったというのに、如何に行為中ドアを叩かれたとはいえ人妻の正気に戻る速さは年老いたオーナーと比較にならなかったのである。
事情が呑み込めず呆然自失のオーナーと違い桂子は目の前に散らばる服をかき集め小脇に抱え裸身のまま着替え室に向かって脱兎のごとく逃げ出したのである。

最初オロオロしていたオーナーも桂子がその場から消えたことに気づくと桂子の愛液がネットリと付着したサオを拭きもせずパンツの中に仕舞い、仕事服を着て現場の後始末に掛かった。

ソファーの中央付近がワレメから滴り落ちたシルでベットリと濡れ、そのままではお客様をお通しするわけにはいかない状態になっていた。
惜しいが匂いを嗅いだり舐めたりし味からオ〇ンコの具合を妄想している暇など無い、取り敢えず今まで使っていたカバーを外しキッチンペーパーをその上に重ね置き、奥から引き出してきたクリーニング済みの代用カバーで覆って隠した。

これが亭主の居ぬ間の自宅での不貞なら女の桂子にやらせたはず。 ここまでさいなませたなら開く努力を惜しまなかった男の当然の権利として命じたはずであったが・・・
情けないかな初回はフラれてしまっていた。 これからというときになって振り払われたのだ。

こんな惨めったらしい立場で桂子に後始末をしろなどと、口が裂けても言えないし、ましてや呼び戻せる立場でもない。
桂子がパンティーを探し、慌てふためいているのは自分の責任だと思ったからだ。
だが、ドアのノックは無情にもあれから幾度となく続いている。 時間がない。

 パンツの中から得も言われぬ芳香が立ち上って来て、客のことよりまず第一に桂子のことが気になってノコノコ厨房の奥に確かめに向かった。
桂子が着替えているはずの部屋を覗きに行ってみた。
トイレに逃げ込んだらしく着替え室にも準備室にも誰もいなかった。

オーナーは落胆し、常ならんノックに観念し、店のカギを開けた。
午後の開店時間は僅かだが過ぎていて、午前中に負けが込んだ客は目の色を変えゲーム機の前に殺到し、着くやいなや操作を始めてしまいゲーム機の醸し出す騒音が店内を支配し、桂子の気持ちはどこかに置き去りにされてしまったような空気に包まれ始めた。
オーナーは焦った。

お客様に詫びもまじえ、無料サービスの飲み物を提供し、雰囲気が和らいだところで恥も外聞もなく桂子を探しにかかった。
今日はどうしてもこのまま家に帰したくなかったからだ。
ましてや他の男にひいては旦那に続きを譲るわけにはいかない。

騒音に包まれた店の奥、この時になって初めて、オーナーは桂子から掠め取ったパンティーをポケットから取り出し鼻腔に当てた。
あの折に顔を埋め味わった甘酸っぱい芳香が微かだがパンティーからも感じられクロッチ部の黄ばんだ汚れやマンスジの跡に改めて漲りを覚えた。
桂子には悪かったが先日奪っておいたパンティーはオーナー自らズボンのポケットに収めて時々取り出しては嗅いでいたのだ。 (あの折あの子は何処でどうやって過ごしていた! 思い出せバカ頭!!) 懸命に彼女の居場所を無い頭で描いた。 興奮と緊張、挫折感で脂汗が額に滲んだ。

桂子はトイレいた。 だが、何故だかトイレから出ることができなかったようなのだ。
桂子にしてみれば確かにパンティーの行方は気になる。 が、しかし もっと気になったのがオーナーの自分を想ってくれる気持ちで、心底夫から奪おうとしてくれているのかそれとも・・・
それを十分確かめることができないまま桂子のほうから、せっかく挿し込んでくれた亀頭を腰を押し付けてくれること自体抗うようにワレメから振り払ってしまっている。 嫌われたくなく、捨てられたくなく、しかし今更どうにもならなく気が気じゃなかったのだ。 事案や程度こそ違えどガソリンスタンドの同僚の時と同様に思えたからだ。

「もう一度だけチャンスを・・・」 桂子は口に出して呟いてみた。
帰ろうとすれば帰れただろうが、それでは今宵もそしてそれから永遠にワレメがオーナーを求め大人しくしてはくれないことはわかりきっていた。
そんなことをしてしまったら二度とオーナーは自宅に深夜寝取りたくて潜んで来てはくれないだろうと危ぶんだ。

昼休み中とはいえ店内のソファーでのいかがわしい行為にオーナーを、いつものように尻や胸を魅せ付けながら誘い込んだまでは良かった。 だが、その後がいけない。
その後悔が桂子をして トイレから出るのを躊躇わせもしたが逆に店内で顔を合わせたら、たとえ客がそこにいようとも、また誘ってしまうに違いないほどワレメの潤みは尽きないでいた。 スタンドではこのことについて罵倒されたのだ。
ミニの下がスッポンポンのままオーナーに心配させつつお店に立ちお客様にも魅せ付け舐めてもらえたらと思うまでになっていた。

オーナーはオーナーで桂子のこの後の行動と、何より己が勝ち得た蜜壺の入り口を男根やふぐりを使って隠そうと挿し込んだものを振り払うオンナの本当の気持ちが気になった。
気になるというより勿体ぶってないで何故一気に挿し込まなかったかの悔やみに近い。 男として自分の自慢のチ〇ポで逝かせて堕としてあげてご褒美に中にたっぷり放出したかった。 己の専用物にしたかったが仕損じたことでまるで仕事が手につかなくなった。

パンツの中に強引にしまい込んだ怒りは、客を迎えるとそのちょっとした気持ちの変化だけで自己嫌悪に陥り萎んだ。
残るのは腹部から湧き上がる桂子の心地よい香りとサオに付着し垂れ流れ、股間や太ももにまで粘りつき始めた愛のシル、その心地よくも後味の悪いヌルヌルした感触だけだった。
ドアの向こうであらぬ妄想をオカズに自慰に耽り夢中になった拍子に昇りつめてしまい耐えられなくて射出した瞬間、軽蔑のまなざしをした妻がそこにいた。 あんたバカかという風な顔をし睨み据えていたときの、あの感覚が湧き起り胴震いした。 こうなった時の男は情けない。 溜まり過ぎると勃起も射精もしにくくなる。 なんとしても出さないことにはらちが明かないような気持にさせられる。 正直自分で擦り上げ抜いてしまえば楽になると思ってしまったのだ。

男としてあの時は確かに桂子が身動きできないほどにワレメも乳房・蕾も陥れたつもりだったのだ。
乳房を捉え腰に手を廻したまま完全に挿し込んでいれば決して振り払わせもしなければ抜かせることもしなかった自負は、あるにはあったはずだが・・・
花弁を割って亀頭冠のみめり込んだのは確かで、その折はもう彼女の腹部は常軌を逸し しっかり波打っていたように見えたが今はそれすら揺らいでいた。

亀頭冠は処女膜付近まで制圧したし、揉まれることで乳房はさらに豊かになってくれていたと思った。
だが、肝心の心まで奪っていなかったようなのだ。 若かりし頃失敗など考えもしなかったのに老いたと、亀頭を振り払われたときに気づかされた。

「逝ってなかった。 逝ったふり・・・」 そのことだった。 老齢から来る焦りが失敗につながったと認めるしかない、後悔が先に立った。
ご主人の寝ている脇で堂々と寝取るようでなければ桂子は堕ちないような気がしてしまっていた。 
そこまで追い込んでやるんだと、やっと今になって腹は決まった。

桂子がこのまま自宅に帰ってしまうようなことになれば徹夜してでも桂子を裏庭の繁みの中から見張り、豊かな裸身を情念で射殺し
いきり勃つ怒張を擦りながらチャンスを伺った。 あの執念とも思える努力が水泡に帰す。
「たとえ薄い掛布団一枚を隔て、旦那が脇で寝ていようとも挿し込んで逝かせ 寝取ってやる」 相手が目の前にいるわけでも、合意を取り付けたわけでもないのに彼女の中に放精したくて独り気色ばむしかなかった。

オーナーはゲームが一段落すると、この客は必ずコーヒーを注文することを思いだし先んじてコーヒーを作り、黙って客の前に差し出し 「調子は」 どうかと 挨拶代わりに聞いた。
だが、客の返事など聞いてはいなかった。

こうしておけば 他に用事はないはずで、ほんの少しの時間席を外せる。 
オーナーの足は自然にトイレに向かっていた。
逃げ込み居座るとすれば恐らくここしかない。
トイレには鍵がかかっており、中から桂子の切ない息遣いが聞こえる。 「・・・いてくれた。 間違いなく」

年甲斐もなく充血させてしまった脳裏は確かに若かりし頃の冷静さと逞しさをこの瞬間取り戻しつつあった。
いや、トイレの中の桂子の存在が萎えかけたモノをあの頃に引き戻してくれていた。

オーナーは忍び足で店内に戻って、先ほど行為を繰り返していたソファーに腰かけ煙草を取り出した。
深々と吸い灰皿に一旦置くふりをし、それを不用意に足元に落としてみた。
落とした煙草の行方を追うふりをしてその薄明りを頼りに覗いたソファーの下に桂子のパンティーはあった。
うれしかった。 ひたすらうれしかった。 ポケットに押し込み準備室に持ち帰り、思いっきり臭いを嗅いだ。

桂子は未だ自分の腕の中から逃れられず悶えているんだと、やっと実感がわいた。



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<筆者知佳さんのブログ>

元ヤン介護士 知佳さん。 友人久美さんが語る実話「高原ホテル」や創作小説「入谷村の淫習」など

『【知佳の美貌録】高原ホテル別版 艶本「知佳」』



女衒の家系に生まれ、それは売られていった女たちの呪いなのか、輪廻の炎は運命の高原ホテルへ彼女をいざなう……

『Japanese-wifeblog』










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