第19話 厚生省の監査
 
 看護婦の控え室で仮眠をとっている紀子と由佳は、あわただしい音で起こされた。
「一体、なに事かしら?」白衣の乱れを直してから、2人は騒がしい方に歩いていく。
途中で小走りで動き回る百合と出会った。
「一体どうしたの?」
「知らないんだ。外科医の南条さんが、亡くなったんだって。しかも病院の中で!」
「それって、いつの話?」
「たった、今よ!」3人は急いで当直室に向かって小走りでいくと、朝の6時だというに、入院患者で人垣が出来ていた。

 そこに、警察官と検死官が現れた。
「退きなさい。ここは現場ですから!」人垣をどかせて中に入り込む。
そして、院長の前川と事務長の相原が現れたが、2人は困った顔で当直室に入っていく。
「お騒がせしました。院長の前川です」
「私は鑑識のものです。ちょっとお尋ねしますが、亡くなった南条さんは、心臓の方はどうだったんですか?」
「いやー。確かに去年の健康診断では不正脈がありましたが、業務に支障があるほどではなかったし…」
「それで薬は?」
「いいえ、わかりません」
「不整脈があったのは間違いないですね?」
「はい。医師と看護婦の健康診断の結果は保存してありますから…」
 
 「実は、南条さんは心臓が悪いのに、バイアグラを飲んだみたいなんですが?」鑑識の言葉で院長の顔色が変わった。
「そ、それは秘密にしてもらえませんか?」
連れの警察官は「そうですよね、病院の中で医師がセックスしてたなんて言えませんしね。でも安心してください。する前に亡くなってますから、私としては、個人のプライドと相手の女性のプライバシーもあるし、公表するつもりはありません」その言葉に院長は安堵の色を現した。
しかし、これからが院長にとって地獄が待っていた。
 
 事件から数週間たって、一通の文書がある機関から、公立横川病院に届いた。
それを見た、院長と事務長は顔色が真っ青になった。
その文書には、厚生省からの監査実施が書かれてあった。

 通常、監査は各都道府県が実施するが、直接、厚生省が行うのは異例である。
また、病院にとって、厚生省の監査は鬼より怖い存在でもあった。
「明日から監査だそうだ。コンピューターのデータを入れ替えられるかね?」慌てて院長は言う。
「無理です。それに、厚生省の指示に従って、日付も入れてあります。中身を入れ替えても、日付は変えられません…」事務長の相原は答えた。
「そうか、だめか。おしまいだな…」
「そうです、終わりです。この際、あきらめて失業しましょう」2人はガックリと肩を落としていた。
 
 翌日、玄関にテレビカメラが数台準備され、病院関係者がオドオドするなか、玄関に数台の車が停まった。
車からは厚生省の監査官が降りてきた。
その姿を見た看護婦達はこれから病院が変わるのを予想して、笑顔になっている。

 監査官は院長室に入り監査理由を院長と事務長に告げた。
「監査理由は水増し請求、不正な補助金請求、医師の患者に対する冒涜、患者データのねつ造だ。それに、これには書いてないが医師による看護婦への婦女暴行だ。この件は警察にも言ってない。ここだけの秘密だ。個人の人権に関わるし、マスコミに洩れたら、自殺者がでるかもしれないから絶対に言うなよ。いいな!」
「はい!」ブルブルと震える院長と事務長である。
 
 監査官は、3班に別れて手際よく調べている。
不正請求が行われていた、画像診断データや経理、それに看護婦への聞き取りなどが行われた。
さすがに、医師による看護婦へのレイプは婦人の監査官があたり、絶対に公開しないとの確約をしてから行われ、公立横川病院の不正が明るみにされた。

 その不正で儲けたお金が代議士、市議会議員、さらにマスコミ各社にまで工作資金として流れていたのが横川市議会でも明らかにされた。
しかし、看護婦へのレイプは人権を考えて、厚生省は秘密を守り、医師達には個別に呼んで医師の免状返還をせまった。
厚生省は、それを拒む医師に対して二度と国内では医師に付けないよう公表する旨を伝え、政府の海外協力隊の医師として10年間移住するか、レイプを公表するかと迫った。
すると、政府の海外協力隊として働く旨を伝えてきた。
 
 この事件は国会でも取り上げられて、院長の前川と事務長の相原は証人として喚問され、その姿がテレビ、新聞で報道されている。
それは犯罪人を扱うように報道していた。
マスコミ各社は、今まで多額の工作資金を宣伝料の名目で受け取っておきながらながら、掌を返して凶悪犯扱いをしている。

 また、議員達もそうだ。
喚問で吊るし上げている代議士に、前川は数億の献金をしていたのにだ。
前川と相原は、この時に人間のずるさがイヤと言うほど味わされた。
(人間は、金でも動くが、それは見せかけだったんだ…)前川は国会で証言しながら、そう思った。

 そんな中、日曜日にランドタワーの前でまた3組のアベックが鉢合わせした。
「どうして紀子がここに?」
「百合こそ、どうして…」
「あら、百合に紀子が…」6人は一斉に笑い出す。
「実は、これから彼氏の両親と合う約束なの」由佳は恥ずかしそうに言うと「えっ、由佳もなの。私もなのよ」紀子も言う。
「あら、私もなのよ」百合の言葉に3人は笑い、3組のアベックはそこから別れて別々な方向に歩いていく。



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