第11話 二人目の死
 
 男は、由佳が仮眠しているステーションに入った。
男はいきなり、由佳のスカートを捲り上げて確認し、白衣のボタンを外しだす。
白衣の襟が開かれてスリップから、淡いピンクのブラジャーが透けて見えている。
男の手はさらに大胆になっていく。

 「いやー!」目を覚ました由佳は、白衣を脱がそうとする男の手を押さえ、顔を見て驚いた。
「氷室さん!」由佳はすかさず突き飛ばしたが、直ぐに氷室は態勢を立て直して襲ってくる。
「いやー!」叫び声をあげ、由佳はステーションから飛び出した。
ボタンの外れた襟を両手で隠しながら、廊下を走り、階段まで走った。

 由佳の全裸しか頭にない氷室は、獲物を追いかける野獣のようだ。
由佳は必死で階段を掛け登るが、氷室はニヤリと笑う。
(上は屋上の行き止まりだ!)氷室は後を追い、由佳は屋上にしか、逃げ道がない。
もう、助けてくれる人もおらず、由佳は屋上のフェンスで「逃げれない!」そう悟った。
 
 氷室は目を輝かせ、ゆっくり近づいてくる。
「来ないで。来たら私、死ぬから!」由佳は、フェンスから、飛び降りるまねをした。
「慌てるな、落ち着け!」氷室はゆっくりと近づき、由佳はフェンスを背中にして脅えていた。
「飯島!」氷室は、由佳を目掛けて飛び込んだ。
すかさず「いや~!」由佳は横に動いた。
「チェッ。失敗か!」氷室はフェンスにぶつかった。

 そして、振り向こうとしたが、氷室はそれができなかった。
氷室は、フェンスから離れて、宙を飛んでいる。
そこで、氷室は自分の状況がわかり「いやだー。死にたくないー!」それが、最後の言葉だった。
「由佳さん!」震える由佳に、どこから現れたか知らないが、内藤が声を掛ける。
それと同時に「何て事に!」真弓が、顔を引き吊らせ、登った階段を降りていく。
 
 錯乱状態の由佳を内藤は必死に押さえている。
もし、内藤がいなければ、由佳も後追い自殺をしていたろう。
「助けに行かないと!」由佳は内藤に肩を抱かれながら、階段を降りていく。

 先に降りた真弓は、ぐったりとした氷室を介護していた。
「藤田さん、どうなの?」
「だめだ。助からない!」
「お願い、助けて!」
「勿論だよ、全力をつくすよ。CT室に運ぶんだ!」氷室は3人によってCTに乗せられた。
 
 内藤はSCANOといわれる画像を最初に撮った。
「だめだ、藤田さん、破裂している!」さらにSCANさせて破裂している部分を撮る。
「だめだ、1人じゃあ無理だ。脳はどうだ?」内藤は寝台を移動させて頭部を集中してSCANを撮るが、どの画像にも、出血を示す斑点が脳内部を占めている。

 「人工呼吸で助けて!」
「分かってるよ」藤田の態度に由佳は怒りを表した。
(なぜ、身内にはこんなに、最後まで尽くすのよ。どうして、さっきはしてあげなかったのよ!)
由佳は再び、先ほど手術を断られた患者の事を思い出す。
(ご免なさい、助けてあげられたのに…)再び由佳はうずくまって、泣きだした。

 懸命の治療にも関わらず、氷室は生きを吹き返す事はなかった。
「もう、だめだ!」藤田が真弓の肩を叩く。
「いやー、死んじゃいや!」真弓は氷室にすがって、泣いている。
暫く沈黙が続いたが「臨終です!」藤田が沈黙を破って、氷室の死を宣言した。
「いやー!」真弓は泣き崩れている。
(ふん、急患は、なんとも、思ってなかったくせに!)ドアの隙間から、そっと様子を見ている影があったが、それには、真弓と藤田も気が付かなかった。
 
 翌日に警察の検証が始まった。
しかし、なぜ根本からフェンスが倒れたか、警察でも解明ができない。
金属で切れば、しっかりと切った後が残るが、それがなかった。
それに、前日までは、しっかりと、フェンスはその役目をしていたのを、入院していた患者が証言している。

 断面は腐食したような断面をし、フェンスの支柱の根本の部分が白くなっていた。
それは、コンクリートが吹き出したようだったが、なぜ、一晩で腐ったか理解できなかった。
そして、これは事故として片付けられてしまった。

 本来なら、科学捜査官に任せなければならなが、警察は嫌っていた。
いや、メンツを保つために、事故としてしまった。

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 氷室の死を確認して、3人は次ぎの計画を立てている。
「3人目の男は誰かしら?」
「分からない。ただ、宮園真弓が鍵を握っている」
「だったら、宮園真弓を捕らえて、聞くしかないのね」
「残念だけど、それしかないな」
「どうやって、捕らえるの?」
「まだ、計画が立たないんだ。でも、必ずやつの口を割らせてやる!」
「もし、事件に加わっていたとしたら、どうするの?」
「許さないわ。必ず抹殺してやる!」
「勿論だ。許さないよ」
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