第10話 急患の見殺し
 
 真弓は、次の日に由佳を呼び出した。
「婦長、なにかご用ですか?」
「実は、今夜も夜勤を、お願いしたいのよ」
「わかりました」笑顔で由佳は婦長室からでていく。
(これで、お仕置きもできる)微笑む真弓だ。

 内科のステーションに戻った由佳は、紀子に今夜も夜勤だと告げた。
「ひどいわよ、連日の夜勤よ。体、壊さないでね」
「ありがとう、紀子さん」今夜は、特別に婦長が由佳と一緒の夜勤になった。

 病院の診察時間を終えて、通院する患者もなく、廊下を見舞いに来た家族が歩いていくだけで、由佳は暇を弄んでいる。
いつもなら、紀子が一緒にいるので話ができたが、今夜は婦長なので、あまり気軽には話せず、2人は黙ったまま本を読んでいる。
 
 その静けさを破って、突然電話が鳴った。
「はい、急患ですね。はい、分かりました。外科医も待機させます!」電話を置いた真弓は「交通事故よ、しかも、かなり重傷みたい。内藤先生と藤田先生に連絡して!」
「はい!」2人の看護婦が、急いで部屋から出ると、遠くで救急車の出す、電子音が聞こえた。
「来るわよ!」
「はい!」技師の内藤と外科医の藤田も救急患者を待った。

 「今回は、かなり、重傷らしいわ」4人が緊張して待っていると、救急車が到着した。
赤色灯を点滅させたまま横付けになり、ドアが開くと血で真っ赤になった患者が、救急隊員によってストレッチャーごと降ろされた。
「急いで、CT室に運んで!」婦長の真弓も必死になっている。

 CT室では、内藤が待っていて、患者をCTに乗せると撮影が始まった。
その間に、救急隊員は事情を真弓に説明していく。
「手術しないとだめだ。内出血がひどい。藤田先生これを見て下さい!」藤田も言われなくても予想はしていた。
顔が、出血で赤らんでいるからだ。

 通常なら、これだけ出血したら蒼白になっていく。
「だめだ、手術は無理だ…」CTの画像を見て叫んだ。
「先生、助けてあげて下さい!」由佳は、泣きながら藤田にすがりついた。
「たとえ、成功したとしても、1人で生きていけない体になる。それに、一生、人工呼吸器を離せない体にもなる。早い話が、植物人間だ。家族の為にも、このまま死んだほうがいい。それに心拍もない…」

 「そんな~。生きるのを、家族も願ってるはずです!」
「くどい!」藤田はすがる由佳の体を払い除け、てCT室から出ていく。
「ひ、ひどい。あんまりだわ!」泣き崩れる由佳を後目に、真弓は呼吸が止まった急患を安置室へ運んでいく。
「行きましょう」泣いている由佳の背中を軽く叩いて、内藤も出ていく。
(許さない、これが横川病院のやり方なの。絶対に許されないわ。こんな病院、無い方がいい!)
 
  安置室に置かれた遺体は、血で汚れた服が脱がされ、警察の検死の準備を始めた。
無言の2人は患者を全裸にすると、腰の部分が砕けていて、変形している。
そして、家族と思われる男性と警官が現れた。

 「美由紀!」男性は、泣きながら死体にすがる。
「なぜ、死んだ!」そう叫ぶ声に(ごめんなさい、助けてやれなくてご免なさい…)由佳は涙を流して自分達のしたことを謝っている。
まともに見れず、由佳は俯いていた。

 警察官は、検死を終えると、家族と一緒に出ていく。
由佳は、一旦自分のロッカーに行ってから、衣服を持ってきた。
「ごめんなさい!」泣いて謝りながら、由佳は自分が着ていた服を、女性に着せていく。
数時間して、葬儀屋が遺体を引き取りに現れて、安置室には誰もいなくなった。

 テーションに戻った2人は無言である。
「そろそろ、見回りを始めるか。元気出して!」真弓は立ち上がって出て行く。
由佳もその後を追って廊下に出た。
 
 この病院は、入院患者が多いので、病棟ごとに、夜勤のステーションが置かれている。
また、巡回は病室の全てを回って、患者の様子を調べながら、記録に残さなければならない。
入院患者の全てを見回ると、2時間近くかかり、それを嫌って、手抜きを行う看護婦もいた。
軽傷な入院患者を無視して、重傷や、家族からの贈り物を貰った患者しか見ないのが、この病院では公然と行われている。
しかし、由佳と紀子の2人は手抜きをせず、必ず全部の入院患者を見回っている。
それが当たり前と考えていたからだ。

 ステーションに戻った2人は、仮眠室のベッドで横になり、いつしか2人は深い眠りに付いた。
しかし、真弓はそっと部屋から出て、待ち合わせた場所に向かう。
「もう、寝てるわ。今がチャンスよ。しっかりやりなさいよ」
「わかっているよ、飯島由佳の処女をいただくか!」ニヤニヤしながら、男性は誰もいない廊下を歩いていく。
その後を、付ける黒い影があるのを、由佳の全裸しか頭にない男は気が付かなかった。



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