ファンタジー官能小説『セクスカリバー』

Shyrock 作



<第35章「武術家メグメグ」目次>

第35章「武術家メグメグ」 第1話
第35章「武術家メグメグ」 第2話
第35章「武術家メグメグ」 第3話
第35章「武術家メグメグ」 第4話
第35章「武術家メグメグ」 第5話
第35章「武術家メグメグ」 第6話
第35章「武術家メグメグ」 第7話
第35章「武術家メグメグ」 第8話
第35章「武術家メグメグ」 第9話
第35章「武術家メグメグ」 第10話
第35章「武術家メグメグ」 第11話

『セクスカリバー世界地図』
『ピエトラ・ブルの地図』




<登場人物の現在の体力・魔力>

~オデッセイ大陸を冒険する仲間たち~

シャム 勇者 HP 960/960 MP 0/0
イヴ 神官 HP 760/760 MP 810/810
アリサ 猫耳 HP 780/780 MP 0/0
キュー ワルキューレ HP870/870 MP480/480
エリカ ウンディーネ女王 HP 660/660 MP 890/890
マリア 聖女 HP 650/650 MP 920/920
チルチル 街少女 HP 600/600 MP 0/0
ウチャギーナ 魔導師 HP 690/690 MP 860/860
リョマ 竜騎士 HP 1060/1060 MP 0/0

⚔⚔⚔

~ロマンチーノ城に向かった仲間たち~

シャルル 漁師・レジスタンス運動指導者 HP 1020/020 MP 0/0
ユマ 姫剣士 850/850 MP 0/0
エンポリオ アーチャー HP 760/760 MP 0/0

⚔⚔⚔

~ピエトラ村(自警団)~

メグメグ 武術家(女性) 21才 自警団団長 拳法の達人
ルッソ 村人(男性) 35才 自警団副団長 自警団の知恵袋
マルツィオ 剣士(男性)16才 ピエトラ公国王子 ピエトラ城から避難
ジェーロ 神官(男性) 28才 ピエトラ城から合流
🛡
アウジリオ 村長(男性) 52才 村人たちの信頼が厚い
ブルネッタ 狩人(女性) 村長の娘 18才 
アリーチェ 街人(女性) 26才 村に逃亡中夫を殺害される



⚔⚔⚔



第35章「武術家メグメグ」 第1話

 シャムたちは隊列を組んで村の西側に近づいていた。
 村の周囲には魔物の侵入を防ぐため頑丈な柵が設置されており、まるで砦のような殺伐とした風景を呈している。
 村の出入口は予想したとおり西側に存在した。
 出入口の内側には高さが6メートル程の見張り台がそびえていて魔物の侵入に備えている。
 見張りがシャムたちの接近に気付いたようだ。

見張り「この村にどんな用だね?」
シャム「先程この近くで街の人が魔物に襲われて亡くなった。葬ってあげたいので中に入れてくれないか?」
見張り「なんと……それは気の毒に……。ところであんたはどちらの人だね?」
シャム「おいらは魔物を倒すため旅をしているシャムという者だ」

 シャムの名前を知っているようで、見張りは目を丸くしている。

見張り「シャ、シャムさん……もしや? あなたが噂の救世主様ですか!?」

 急に見張りの言葉遣いが丁寧になった。

シャム「そんな大袈裟な呼び方をする人もいるようだけど」
見張り「これは驚きました! ちょっと待っててください。上に話を通してきますので」

 自身の判断で外部の者を入場させることを禁じられているのだろう。
 見張りは階段を駆け下りると小走りで去っていった。

 しばらくすると上司らしき男が現れ、自分は自警団副団長のルッソだと名乗った。
 シャムたちはルッソの案内で村の集会所に向かった。

⚔⚔⚔

ルッソ「なるほど、お話はよく分かりました。ルーカさんのご無念お察しします。ルーカさんはこの村で埋葬しましょう。アリーチェさん、よろしいですね?」
アリーチェ「ううう……ルッソ様のご厚意に大変感謝いたします。亡きルーカもピエトラの地で眠ることができてきっと喜ぶと思います」
ルッソ「同じ国に暮らす民として当然のことです。それからアリーチェさん、街に戻るのは危険です。よろしければこの村で暮らしてください。お住まいはこちらで用意しますので」
アリーチェ「何から何まで親切にしていただき、感謝してもしきれません。本当にありがとうございます」

 ルッソはポリュラスから食料と水を届けてくれたシャムたちに深く感謝した。

ルッソ「実は畑に魔物が出没するため耕作もできないし、街には魔物が溢れているので買い出しにも行けず、とても困っていました」
シャム「村の人は何人いるの?」
ルッソ「現在村には、村民が80人、街からの避難民が20人、城からの避難民が10人、合計110人います。全員が魔物と戦えるように男性だけでなく女性も子供も訓練に明け暮れる毎日です」
シャム「おいらたちもいっしょに戦うよ!」
ルッソ「何と! 救世主様のご支援があればどれだけ心強いことか。ありがとうございます! よろしくお願いします!」
シャム「ところで、団長さんはどこに行ったの? こんなことを言うのはどうかと思うけど、この大変な時にボスがいないって拙くない?」

 突然ルッソの表情が曇った。

ルッソ「実は、団長のメグメグはシャム様たちが来られる1時間ほど前に街の教会に向かいました」
シャム「礼拝に行くことは悪くはないけど、何もこの大変なときにここより危険な街に行かなくても良いと思うんだけど」
ルッソ「これには事情がありまして……」
シャム「何か深い訳がありそうだね。聞かせてくれる?」

 ルッソは理由を語りはじめた。
 ピエトラ公国の王子マルツィオがわずかな手勢とともに城を出て村に逃れてきたのは1か月前のことであった。
 その後マルツィオは若干16才ながら剣に未熟な村人たちに剣技を教えていた。
 ところが肝心の剣があまりにも少ない。
 村に武器屋がないため街まで行かなければならない。
 魔物たちが徘徊する街だが危険を承知でわずかな兵をともなって3日前に街に向かった。
 しかし夜になってもマルツィオたちは村に戻ってくることはなかった。

 翌日、伝書烏が飛来し手紙に『マルツィオ王子を預かった 王子を助けたければ明日正午 団長1人でラピスラズリ1,000カラットを持ってこい 仲間を1人でも連れてくれば王子の命はないと思え デルピュネより』と記載されていた。

 シャムたちは隊列を組んで村の西側に近づいていた。
 村の周囲には魔物の侵入を防ぐため頑丈な柵が設置されており、まるで砦のような殺伐とした風景を呈している。
 村の出入口は予想したとおり西側に存在した。
 出入口の内側には高さが6メートル程の見張り台がそびえていて魔物の侵入に備えている。
 見張りがシャムたちの接近に気付いたようだ。

見張り「この村にどんな用だね?」
シャム「先程この近くで街の人が魔物に襲われて亡くなった。葬ってあげたいので中に入れてくれないか?」
見張り「なんと……それは気の毒に……。ところであんたはどちらの人だね?」
シャム「おいらは魔物を倒すため旅をしているシャムという者だ」

 シャムの名前を知っているようで、見張りは目を丸くしている。

見張り「シャ、シャムさん……もしや? あなたが噂の救世主様ですか!?」

 急に見張りの言葉遣いが丁寧になった。

シャム「そんな大袈裟な呼び方をする人もいるようだけど」
見張り「これは驚きました! ちょっと待っててください。上に話を通してきますので」

 自身の判断で外部の者を入場させることを禁じられているのだろう。
 見張りは階段を駆け下りると小走りで去っていった。

 しばらくすると上司らしき男が現れ、自分は自警団副団長のルッソだと名乗った。
 シャムたちはルッソの案内で村の集会所に向かった。

⚔⚔⚔

ルッソ「なるほど、お話はよく分かりました。ルーカさんのご無念お察しします。ルーカさんはこの村で埋葬しましょう。アリーチェさん、よろしいですね?」
アリーチェ「ううう……ルッソ様のご厚意に大変感謝いたします。亡きルーカもピエトラの地で眠ることができてきっと喜ぶと思います」
ルッソ「同じ国に暮らす民として当然のことです。それからアリーチェさん、街に戻るのは危険です。よろしければこの村で暮らしてください。お住まいはこちらで用意しますので」
アリーチェ「何から何まで親切にしていただき、感謝してもしきれません。本当にありがとうございます」

 ルッソはポリュラスから食料と水を届けてくれたシャムたちに深く感謝した。

ルッソ「実は畑に魔物が出没するため耕作もできないし、街には魔物が溢れているので買い出しにも行けず、とても困っていました」
シャム「村の人は何人いるの?」
ルッソ「現在村には、村民が80人、街からの避難民が20人、城からの避難民が10人、合計110人います。全員が魔物と戦えるように男性だけでなく女性も子供も訓練に明け暮れる毎日です」
シャム「おいらたちもいっしょに戦うよ!」
ルッソ「何と! 救世主様のご支援があればどれだけ心強いことか。ありがとうございます! よろしくお願いします!」
シャム「ところで、団長さんはどこに行ったの? こんなことを言うのはどうかと思うけど、この大変な時にボスがいないって拙くない?」

 突然ルッソの顔色が曇った。

ルッソ「実は、団長のメグメグはシャム様たちが来られる1時間ほど前に街の教会に向かいました」
シャム「礼拝に行くことは悪くはないけど、何もこの大変なときにここより危険な街に行かなくても良いと思うんだけど」
ルッソ「これには事情がありまして……」
シャム「何か深い訳がありそうだね。聞かせてくれる?」

 ルッソは苦しげな表情で語りはじめた。。
 ピエトラ公国の王子マルツィオがわずかな手勢とともに城を脱出して村に逃れてきたのは1か月前のことであった。
 その後マルツィオは若干16才ながら剣に未熟な村人たちに剣技を教えていた。
 ところが村には肝心の剣があまりにも少ない。
 村に武器屋がないため街まで買い求めに行かなければならない。
 マリツィオは団長や副団長の制止も聞かず、危険を承知でわずかな兵をともない3日前に街に向かった。
 ところが夜になってもマルツィオたちは村に戻ってくる気配がなかった。

  翌日、伝書烏が飛来し手紙に『マルツィオ王子は預かった 王子を救いたければ明日正午 団長みずからラピスラズリ1,000カラットを持って街の教会に来い 仲間を1人でも連れてくれば王子の命はないと思え デルピュネより』と記載されていた。



第35章「武術家メグメグ」 第2話

シャム「それで団長は王子を救出するために1人で街の武器屋に出掛けたの?」
ルッソ「はい、いくら止めても無駄でした。私たちを振り切って鬼気迫る表情で出掛けて行きました」
シャム「ゴールドではなくラピスラズリを要求してきたのはどうして?」
ルッソ「魔物はゴールドにはまったく興味を示しません。興味があるのはラピスラズリだけなのです」
イヴ「ラピスラズリは魔物にとってパワーの源なのよ。分かりやすくいうと魔物の体力と魔力の数値が大幅に上がるの」
シャム「そう言うことか。ラピスラズリが欲しくて王子を捕らえて身代金代として要求してきたのだな?」
イヴ「それはあくまで表向きだと思うの。ラピスラズリを渡せば王子を返してくれるかどうか分からないし、団長の命も危ないわ! 彼らの本音は自警団の団長であるメグメグさんを捕えて自警団の力を削ぐことが狙いだと思うの」
シャム「ルッソさん、これは罠かもしれないぞ!」
ルッソ「ま、まさか!? 彼らの狙いはラピスラズリなので渡せば王子を返してくるはずだ……と団長は言っていましたが……」
リョマ「甘い! 団長が出掛けたのはいつ頃ですか?」

 リョマが血相を変えて椅子から立ち上がった。
 ふだん温厚なリョマとしては珍しいことだ。

ルッソ「そんなに時間は経っていません! 皆さんが来られるよりも少し前でした!」
シャム「よし! みんな、すぐに街へ向かうぞ!」
ルッソ「私もいっしょに行きます!」
イヴ「ルッソさんは副団長なのでここに残って。いつ魔物が攻めて来るか分からないので」
ルッソ「いいえ、団長を1人で行かせた責任は私にもあります。村は村長に託し、私も皆さんと参ります」

 その時、村長の娘のブルネッタと神官のジェーロが集会所に飛び込んできた。

ブルネッタ「ごめんなさい、部屋の外でお話を聞いていました! 私も連れていってください! 副団長はここに残って村の指揮をとってください!」
ジェーロ「道案内人として私が同行します! ブルネッタさんがいうとおり副団長は村を守ってください!」
ルッソ「分かった。では2人はシャムさんたちに同行してくれ。村は私の命に替えても守ってみせるから」

⚔⚔⚔

 時は少し前にさかのぼる。

メグメグ「マルツィオ様を街に行かせたのは私の失敗……何としても止めるべきだった。マルツィオ様、どうかご無事で……」

 メグメグは武器の調達のため王子マルツィオを街に行かせたことを大いに後悔した。
 しかしいくら悔やんでも今となっては後の祭りだ。今はマルツィオが無事であることを祈るしかない。
 王子を助けるためにはやむを得ない……と村長は苦渋の決断をし村の財産であるラピスラズリ1,000カラットをメグメグに託したのだった。

メグメグ「たとえ私の命に替えても必ずマルツィオ様を守ってみせるわ」

 教会に到着するまで随所に敵は潜んでいるだろう。
 それらを撃破して教会にいるマルツィオを救出する。
 メグメグは固く心に誓った。

 まもなく街に到着した。

メグメグ「ああ、街がむちゃくちゃだわ……」

 見慣れた街並みは無残に壊され、道路には魔物やゾンビで溢れている。
 ところどころに人々の遺体が横たわっておりその悲惨さを物語っている。
 もしかしたら建物の中で息を潜めて耐えている人々がいるかもしれない。
 マルツィオを救出した後、一刻も早く人々を救わなければならない。

(そのためにも早く王子様をお助けしなければ……)

 そんなことを考えていると数体のスケルトン兵が襲いかかってきた。
 メグメグはローキックで次々にスケルトン兵を倒していく。
 雑魚相手に体力を消耗する大技は要らない。
 武器に注意して敵の関節を蹴れば簡単に倒すことができる。

 スケルトン兵を倒すと、次に現れたのはゾンビであった。
 ゾンビは非力なうえスピードにも劣るのでメグメグほどの達人なら恐れることはないが、一撃で倒すなら脳を粉砕しなければならないので結構厄介だ。
 とにかく噛まれないように注意すれば問題ないだろう。
 結局4体のゾンビを一撃で葬ってしまったメグメグは東側にある教会へと急ぐ。

 まもなくピットバイパーという赤い蛇が3匹現れた。
 メグメグの技術があれば容易に倒すことができるが、毒を持っているので注意が必要だ。
 メグメグは素手による攻撃は控えてヌンチャクを取り出し瞬く間に3匹を葬り去った。

メグメグ「次々に出てきてうっとうしいなあ。ふんっ、またお次のお出ましか?」

 次に現れたのは2体のオークであった。
 接近型魔物であり魔力や飛び道具がないので対処しやすい相手といえる。
 メグメグはオークのタックルを軽くかわし、頭にハイキックを見舞った。
 崩れ落ちる2体のオーク。

メグメグ「もうすぐ教会だわ! 急がなくては!」



第35章「武術家メグメグ」 第3話

 雑魚ばかりとはいえ、これほど続けて敵が現れると辟易する。

メグメグ「喉が渇いた……」

 敵が途切れるとどっと喉の渇きが襲ってきた。

(水が欲しい……)

 水筒の中はすでに空っぽになっている。
 メグメグは小さくため息をつくと、辺りをぐるりと見回してみた。
 すると無残に壊された商店近くにある馬の水飲み場が目に入った。
 
メグメグ「あっ、あれは馬の水飲み場だわ……これぞ天の助け!」

 ただし水飲み場は馬が飲み易い高さに造られているので、人が使うには高いが、少しだけ背伸びをすれば飲むことが可能だ。
 メグメグは水飲み場に駆け寄ると両手で水を掬って何度も口に運んだ。

メグメグ「ああ、美味しい……」

 その時、メグメグはふと背後に不穏な気配を感じた。
 常人であればおそらく気付かなかったろう。
 メグメグは稀有の気配察知能力の持ち主なのだ。

 メグメグは手のひらいっぱいに水を掬って、振り向きざま相手の顔面に水を浴びせた。
 水は武器にはならないが、突然顔に掛けられたら人でも魔物でも一瞬ひるんでしまう。
 メグメグの背後にいたのは襲いかかろうと構えているリザードマンであった。
 リザードマンは二足歩行型のトカゲとであり、言葉は話さないが知能は意外に高い。
 武器は持たず自慢の力でパンチを繰り出してくる。また足の筋肉が発達しており恐るべきスピードを持っている。

 リザードマンがパンチを繰り出そうとするとさらりと躱し、敵の顔面目掛けて正拳突きを浴びせた。
 よろけながらもさらに挑みかかってくるリザードマンだが、メグメグの敵ではなかった。
 二撃目を浴びせられると堪らず逃げ出した。
 メグメグは追いかけるがリザードマンは意外に足が速くなかなか追いつかない。

メグメグ(あの魔物を捕らえて締め上げ、王子様が本当に教会にいるのかを吐かせてやるわ)

 リザードマンは壊れかけた建物の中へと逃げ込んでいく。
 瓦礫の隙間に駆け込んだリザードマンは、はたと立ち止まると急に屈みこんでしまった。
 先程メグメグから受けた正拳突きが効いてきたのかもしれない。
 メグメグがリザードマンに接近すると、横合いから何やら甘い空気が流れた。

メグメグ「うっ、なに?……?」

 メグメグは突然激しい眠気に襲われそのままへなへなと崩れた。
 そして瞬く間に深い眠りに落ちていった。

⚔⚔⚔

 村を出発したシャムたちはメグメグの後を追い街へと向かっていた。
 道案内に自警団の神官ジェーロと村長の娘ブルネッタをともなって。
 街に入る途中、ゾンビの一団による急襲を受けたがシャムたちは圧倒的な力差で退けてしまった。

ジェーロ「あそこから先が街です」
シャム「うわ~、かなりやられているなあ」
ブルネッタ「あの美しい街がどうしてこんな酷い目に……」

 ブルネッタは頬に涙を浮かべた。

イヴ「ブルネッタさん、泣かないで。魔物たちを倒して必ず街を元に戻しましょう」
ブルネッタ「イヴさん、ありがとう。ここでくじけていてはダメだよね」

 街に入るとメグメグが倒したスケルトン兵の残骸があった。

ジェーロ「おそらく団長が倒したんだと思います」
キュー「団長のメグメグさんって聞きしに勝る武術家なのね。スケルトン兵が完全にぶっ壊れてる……」

 メグメグの強さに舌を巻くキュー。
 同じ戦士としてその破壊力は骸を見ただけで分かるのだろう。

ジェーロ「団長は強さもさることながら、村のみんなを統率する力が凄いのです。それにとても思いやりのある優しい人なんです」
ウチャギーナ「べた褒めなのね。それほどすごい人なんだね」
アリサ「魔物だらけの街に1人で乗り込むなんて凄い勇気だね。と言おうとしたら、目の前にゾンビの死体が転がってたああああ」
シャム「全部、一撃で頭が壊されているぞ」
エリカ「道路に転がっている魔物やアンデッドを追いかけて行ったら、メグメグさんにいる場所にたどり着くことになりますね」
シャム「いや、そんな単純ではないと思うぞ」
マリア「メグメグさん、どうかご無事で」

 マリアは立ち止まり祈りを捧げた。

 さらに進むと毒蛇ピットバイパーとオークの死体を発見した。

ブルネッタ「もう少し行くと教会が見えてくると思います。急ぎましょう!」
チルチル「ねえねえ、あそこに水飲み場があるよ。水を飲んで行こうでピョン♫」
リョマ「そうですね。突入前に一口飲んでいきましょうか」

 シャムたちは小休止して喉を潤すことにした。
 水飲み場に行くと、マリアは足元に何か光っている物が落ちていることに気付いた。

マリア「あれ? これは何でしょうか……? ロケットでしょうか?」

 拾い上げてみると花柄を模した銀のロケットだった。

ブルネッタ「あっ、これは団長がいつも着けているロケットだわ! どうしてここに落ちているのかしら……?」

 シャムたちの心に不安がよぎった。



第35章「武術家メグメグ」 第4話

メグメグ「えっ……ここはどこ……?」

 目が覚めたメグメグは自身が今どこにいるのか分からなかった。
 最初に目に飛び込んできたのは、天井近くまでそびえ立つ巨大なステンドグラスだった。

メグメグ「もしかしたらここは教会……!? うっ……頭が痛い……」

 立ち上がろうとしたが両手を後手に縛られたうえ足を長椅子に繋がれていては座るのがやっとだ。

メグメグ「王子様はどこ!?」

 周囲を見回した。
 マルツィオの姿はない。
 夕刻、マルツィオ救出のため街に来たことは覚えているが途中からは覚えていない。

 教会の壁など目に付くところで崩れている箇所があるのはたぶん魔物の仕業だろう。
 ステンドグラスを通して入る夕陽がメグメグを照らす。
 建物内部の調度品は少なく木の長椅子は中央のレッドカーペットを挟み三列づつ並べられている。
 人々の守護であるべき教会が魔物に占領されてしまうとは何という不条理であろうか。
 魔物たちは教会を破壊することで人々を帰伏させようとしているのかもしれない。

 その時、メグメグの耳に男のうめき声のようなものが聞こえてきた。
 だがメグメグの位置からは声の主が見えない。

メグメグ「誰かいるのですか?」

 すぐに返事があった。

司祭「ううう……私は司祭のサムエーレです……」

 かなり苦しそうである。

メグメグ「だいじょうぶですか!? 私は自警団のメグメグです、縛られて動けないのでここからお話します」
司祭「おおっ……メグメグ様ですか……実は突然魔物が王子様を連れてここにやってきたので、魔物と戦いましたが敵うはずもありません。力及ばずこの有様です……私はもう長くはないと思います……」
メグメグ「司祭様、しっかりしてください!」
司祭「メグメグ様……どうか王子様を助けて……ください……あなた様もどうかご無事で……」
メグメグ「司祭様っ!」

 返事がない。おそらく息絶えたのだろう。

メグメグ「司祭様~~~っ!」

 その時、どこからともなく地響きのような不気味な声が聞こえてきた。

謎の声「メグメグよ、よく来たな。そなたの勇気を称えてやろう」
メグメグ「だれ!?」
謎の声「知ったところで仕方がないだろう。おまえはまもなく死ぬのだからな。それはさておき王子に会いたいか?」
メグメグ「王子様はどこ!? ラピスラズリを持参したので約束どおり王子様を解放して!」
謎の声「よいだろう。ただし1つだけ条件がある。詳しいことはデルピュネから聞け。おまえが運よく生きていたらまた会うことになるだろう。さらばじゃ……」
メグメグ「待って!」

 声が消えると同時に、祭壇から複数の人影が現れ、メグメグの方に近づいてきた。
 蛇兵がマルツィオ王子の前後を固め、最後尾には奇妙な歩き方をする女がいる。
 二足歩行の蛇兵と異なり女は蛇行して進んでいるのだ。
 おそらくラミアと同種の下半身が蛇の魔物なのだろう。
 彼女は名前をデルピュネと言った。
 なかなかの美女である。

マルツィオ「メグメグっ! おまえまでが捕らえられるとは……!?」
メグメグ「王子様! このような無様な姿をお見せして申し訳ございません。不覚にも捕らえられてしまいました……」

 デルピュネが2人の会話を遮った。

デルピュネ「団長さん、よく眠れたようね。私のスリープ魔法はよく効くでしょう?」
メグメグ「あなたはテルピュネ! 私を眠らせたのはあなたね? 卑怯な!」
デルピュネ「戦いに卑怯も正々堂々もないわ。それより今からゲームをしない?」
メグメグ「ふざけないで。ラピスラズリ1,000カラットを持って来たのだから約束どおり早く王子様を解放して!」
デルピュネ「ラピスラズリはあなたが眠っている間にいただいたわ、ありがとう。でもラピスラズリを渡せば帰れると思ってたの? 甘いわ」
メグメグ「そんな……約束が違うわ!」
デルピュネ「約束なんかしたかしら? じゃあ1回だけチャンスをあげるわ」
メグメグ「どんな?」
デルピュネ「今からゲームをするわね。ゲームは1回戦と2回戦があって2回とも成功したら2人とも帰してあげるわ」
メグメグ「その言葉に偽りはない?」
デルピュネ「悪魔に誓って偽りはないわ」
メグメグ(神なら笑うよ)

 デルピュネが砂時計を見せた。

デルピュネ「これは砂時計。砂は5分で下に落ちる。すべての砂が下に落ちるまでに、口だけで王子様を射精させること。5分以内に射精させることができたら1回戦通過よ。ただし縛られたままやってもらうから手は使えないからね。うふ、できるかな?」

 破廉恥な要求をぶつけられメグメグは愕然とした。
 続いて2回目の説明が行われた。

デルピュネ「2回目の制限時間は10分。2人にセックスしてもらうわ。王子様の縄は解いてあげるけどあなたは縄のままよ。体位は好きにして。王子様が無事に射精したら2回戦終了。ただし、1回目と2回目の間に脱衣タイムがあるだけよ」

メグメグ「そ、そんなっ……王子様とそんなことをできるわけがないわ! そんなことをするぐらいなら一思いに私を殺して! そして王子様を解放して!」
マルツィオ「そんな辱めを受けるならいっそ私を殺すがよい! ただしメグメグは助けてやってくれ!」
デルピュネ「ほほほほほ、お涙ちょうだいの美談だね。ゲームを拒むなら仕方がないわね。望みどおり2人とも死んでもらうわ。蛇兵、死刑の準備をして!」
メグメグ「待って! 分かったわ、やるわ……。王子様、これから行なうこと、どうかお許しください……」

 マルツィオに許しを乞うメグメグの目には涙が溢れていた。

マルツィオ「泣かないで、メグメグ……」

 すでに覚悟を決意した様子のマルツィオであった。



第35章「武術家メグメグ」 第5話

 デルピュネの命令一下、蛇兵はマルツィオのブレーと下穿きをあわただしく脱がしにかかる。
 下半身を覆うものがまたたく間に失われた。
 マルツィオは頬を紅潮させメグメグから顔を背けている。
 椅子に着座させられたマルツィオの前にメグメグが背中を押され転がるように膝をつく。

 蛇兵が砂時計を置くと同時に1回戦が開始した。
 5分以内に口だけでマルツィオを射精させなければならない。
 日々戦いに明け暮れるメグメグにとって恋をするいとまもなく当然性に関しても疎い。
 勝手がよく分からないまま懸命に口を駆使するメグメグ。
 マルツィオを助けたいというメグメグの想いが彼に伝わってくる。
 亀頭が柔らかな唇の隙間に添えられると、そのまま咥え込み口内に招き入れた。
 萎えていた肉柱がメグメグの口の中であっと言う間に膨張する。 
 舌を絡みつかせ、精一杯、口内で奉仕をする。

メグメグ「んぶっ、ちゅっ、れろっ、んふっ……チュッ、んっ……レロッ……」
マルツィオ「あああっ……そ、そんなっ……メグメグっ……ううっ!」

 メグメグはマルツィオの気配をうかがう余裕などなく黙々と口淫に勤しんでいる。
 マルツィオは日頃自警団団長として活躍するメグメグの異なる一面を見て、この上ない快感の痺れが肉柱に伝わってくるのを感じる。

メグメグ「うぷっ、んぐっ、んむっ、うぉっ……んんっ……!」

 メグメグは歯を立てないようにしながら、ひたすらマルツィオの肉柱を吸いつづける。
 砂時計がまだ半分にも到達していないのに、早くもマルツィオがぶるっと身体を震わせた。

マルツィオ「ううっ……!」

 マルツィオの微妙な変化を察して、メグメグは太い肉柱を手のひらでしごきながら亀頭を激しく吸い込む。
 敏感な肉柱はそれだけで悦びに震え、マルツィオは身をよじらせる。

マルツィオ「あぁっ、メグメグっ……」

 口淫の快楽に悶えるマルツィオの切ない表情に誘われ下半身が熱くなるメグメグ。

(ドブッ! ドグッ! ドビュッ!! ビュルッ!!)

 先端からドロリとねばつく大量の白濁液が放出され、メグメグの喉奥へと流れ込む。

メグメグ「んっ、んふぅっ……レロッっ、レルッ、じゅぽっ……んぷっ、んぅっ……」
マルツィオ「うっ、メグメグっ……!」

 マルツィオの精液を喉に流し込まれ、蒸せ返るような雄の匂いと吐き出しそうになる苦しさに耐えながらも、メグメグは精液をゴクリ、ゴクリ、と喉を動かしながら嚥下していく。

マルツィオ「はぁっ……はぁっ……」

 射精を終えたマルツィオは腰が砕けそうな快感に震えながら、メグメグの口から肉柱を引き抜く。
 そのイチモツは、いまだ鎮まることなく上を向いている。

デルピュネ「団長さん、口できれいにしてあげてね」

 口淫を終えたばかりのメグメグに引きつづき肉柱の掃除を命じるデルピュネ。

デルピュネ「やるじゃなの、1回戦合格ね」

 デルピュネは砂時計を見つめながら微笑む。

デルピュネ「砂時計がまだ半分程度だわ。王子様はよほど団長さんのお口がお好みなのね、おほほほほ。それじゃ、すぐに2回戦の準備をして。蛇兵、団長さんの服を脱がせてあげて」

メグメグ「ちょっと待って。2回戦の前に水を飲ませてくれない……?
デルピュネ「いいでしょう。蛇兵、2人に水を持ってきてあげて」

⚔⚔⚔

 その頃、シャムたちはブルネッタとジェーロの案内で教会の前にたどり着いていた。
 教会の外壁には所々に生々しい戦いの爪痕が残っている。

ジェーロ「こちらが教会です」
ブルネッタ「団長、王子様、どうかご無事で……」

 ブルネッタは神に祈った。

シャム「入口は表だけか?」
ジェーロ「いいえ、裏側に勝手口があります」
シャム「では正面と裏側、2部隊に分かれるぞ」

 裏側へは、教会の内部に詳しい神官ジェーロに案内を任せるのが得策だろう。ちなみにジェーロは剣だけでなくヒール魔法も使えるのが頼もしい。

シャム「別動隊はジェーロさん、リョマ、キュー、エリカの4人で裏の勝手口に回ってくれ。残りの者は本隊だ。先ず別働隊が裏から突入しかく乱する。すぐ直後に隙を見て本隊が正面から突入する。作戦は以上だ。いいな?」

 シャムが作戦をひと通り説明し終わると一斉に拳を握って親指を上にあげた。声を出せない状況での『了解』のサインである。

<本隊> シャム、イヴ、アリサ、ウチャギーナ、マリア、チルチル、ブルネッタ
<別動隊> ジェーロ、リョマ、キュー、エリカ

 先行して別働隊が裏側に向かった。
 少し遅れて本隊が正面入り口の鍵を壊すと足を忍ばせ玄関に入る。
 窓がステンドグラスになっているので、見つからないよう身を潜める。

 内部の状況が知りたい。
 アリサがステンドグラスの端からそっと覗いてみた。

アリサ「うわぁ……大変なことになってる。縛られた男女がエッチする寸前だよおおおお」
イヴ「どういうこと? アリサちゃん、ちょっと替わって!」

 アリサは場所をイヴに譲った。

イヴ「ボスっぽい蛇女と大勢の蛇兵がいる。その中央に若い男女がいてセックスしろと脅されてるみたい! ブルネッタさん、あの2人はもしかしたら……!」
ブルネッタ「イヴさん、私に見せてください!」

 ブルネッタは覗きこむとみるみるうちに青ざめ唇を震わせた。

ブルネッタ「向かい合っているのはマルツィオ王子とメグメグ団長に間違いありません! 早く救出しなければ!」
シャム「分かった! 裏側の別動隊が突入したら、直後においらたちも突入するぞ! みんな、準備はいいか?」

 仲間たちは再び親指を上にあげた。



第35章「武術家メグメグ」 第6話

アリサ「シャム、ちょっと待ってええええ」
シャム「なんだ?」
アリサ「キューちゃんたちが攻撃しやすいように、アリサがおとりになって敵を引きつけるよおおおお」
シャム「おとりって……それは無謀だろ? ちょっと待て、アリサ!」

 アリサはシャムの阻止をよそに、敵がひしめく礼拝堂に飛び込んでいった。
 ただしアリサと礼拝堂の中央にいる敵との間に一定の距離はある。
 参拝者を装って声高らかに問いかけるアリサ。

アリサ「あれ? 今日は礼拝やってないのですか? お祈りできませんかああああ!?」

 アリサの姿を見たデルピュネたちは、てっきり信徒の訪問だと思い込んだようだ。

デルピュネ「事情があって今日はお休みさせていただいております、またお越しください」
アリサ「それではお祈りだけでもさせてくれませんか?」
蛇兵「つべこべ言ってないで早く帰るんだ!」

 1人の蛇兵がアリサに近づき乱暴な口調で威嚇する。
 デプピュネたちの注意がアリサに注がれている。

⚔⚔⚔

 一方勝手口で待機中の別動隊は、見張りの蛇兵2人を捕らえて口にさるぐつわを噛ませた。

ジェーロ「ここでしばらく大人しくしてろ」
リョマ「おっ、アリサさんが敵を引きつけてくれていますね。この機会に突入すると敵は混乱間違いなしです。そろそろ行きませんか?」
ジェーロ「ここまでの道案内は私の役目でしたが、この先の指揮はリョマさんにお任せします」
リョマ「承知しました。ではキューさん、予定どおりゴーレムを召喚してもらえますか?」
ジェーロ「なんと! ゴーレムを召喚できるのですか? すばらしい!」

 キューがチャンドラーの剣を真上に掲げ呪文を唱える。

キュー「正しき道を進む人々を救いたまえ。出でよゴーレム!」

 チャンドラーの剣が強い光を放ち強い炎の魔力が流れた。
 まもなく光の中からゴーレムが現れた。

キュー「進め! ゴーレム!」

 裏の扉からゴーレムが現れ、リョマたちの先陣を切る。

ジェーロ「王子様、団長! お迎えにまいりました!」

 マルツィオとメグメグは性交を強いられ行いかけた直後であった。
 そのためマルツィオの膝の上にメグメグが跨る格好で結合している。

マルツィオ「おおっ、ジェーロか!?」
メグメグ「ジェーロ!」

リョマ「デルピュネ! おとなしく2人を解放しろ!」
デルピュネ「おまえは竜騎士のリョマではないか? なぜ自警団にいる!?」
リョマ「ピエトラ・ブルがおまえたち魔物に滅ぼされるのを黙って眺めているわけにはいかないんだよ」
デルピュネ「リザードマン、蛇兵たちよ! こいつらをやっつけておしまい!」
リョマ「おとなしく解放しないならおまえたちを倒すだけ!」
キュー「ゴーレム! あの蛇女をやっつけて!」
ジェーロ「王子様! 団長!」

 別働隊と魔物たちが正面から激突した。
 この時点では人数に勝る魔物が圧倒的に優勢に見えたが……

アリサ「魔物さんたち~! そっちばかり気を取られてこっちを忘れていないかなああああ!?」
デルピュネ「猫耳……?」

 アリサの声を合図に、シャムたちが一斉に進撃を開始した。
 数の上で優勢のデルピュネたちだが、前後から挟み撃ちに遭い浮足立つ。
 さらに、後方からウチャギーナとエリカが魔法で支援し、ブルネッタも負けじと矢で攻撃を繰り返すと形勢が完全に逆転してしまった。
 傷を負った仲間たちをイヴがヒールで治療する。

 攻撃力に優れたリザードマンはゴーレムに戦いを挑むが岩石のような胸板に跳ね返される。
 デルピュネは得意のスリープ魔法を唱えるが、どういうわけかまったく効果がない。

マリア「デルピュネさん、残念でしたね。あなたがスリープ魔法の名人だと聞いていたので、つい最近『アンチスリープ・オール』魔法を習得したので使ってみました。こちらの魔法が少し遅れていたら先に眠らされていたでしょうね」
デルピュネ「むむっ、おまえは聖女マリアだね。小癪な真似をするわね。ならばこれはいかが!?」

 マリアには魔法よりも肉弾戦が効果的と見たのか、デルピュネは尻尾を振り回した。
 カウンターパンチを喰らったマリアが吹き飛ぶ。

マリア「きゃぁ~~~~~!」

 エリカが駆け寄り、マリアにヒール魔法をかけるが、マリアのダメージが大きく1回のヒール魔法では立ち上がれない。
 つづけさまにヒールを唱えるエリカ。マリアの体力が回復し始めた。

リョマ「私が相手をしよう!」
デルピュネ「望むところだわ!」

 デルピュネは口を大きく開くと、リョマに向かって炎を噴いた。

リョマ「何の!」

 リョマは飛び跳ね炎をかわした。

リョマ「ふう、まともに喰らってたら、こんがりと焼かれるところだったな。今度は私の番だ! とりゃあ~!」



第35章「武術家メグメグ」 第7話

 リョマの剣をU型の槍でがっちりと受け止めると、果敢に尻尾で反撃に出るデルピュネ。
 危うく尻尾を躱したリョマだが態勢は崩れてしまっている。

リョマ「ほう、叉護杖(さごじょう)か、珍しい槍を使うではないか」

 叉護杖は別名『刺又(さすまた)』とも呼ばれている。武具としての殺傷力は低いが、相手の動きを防ぐには効果的な槍といえる。

 リョマたちの後方ではウチャギーナが敵に取り囲まれている。

ウチャギーナ「もう、私は接近戦が好きじゃないんだから~」

 ぶつくさ言いながらも杖を駆使して蛇兵をなぎ倒し囲いから脱出を図る。
 しつこく襲い来る蛇兵の頭を背後から、チルチルがバトンでぶん殴った。
 声をあげて気絶する蛇兵。

チルチル「ウチャギーナちゃん、だいじょうぶでピョン?」
ウチャギーナ「ありがとう、チルチルちゃん、これだけ敵が近いと魔法がかけられないよ」

 チルチルに接近してきた蛇兵を今度はウチャギーナが杖を奮う。

 破廉恥な砂時計ゲームを強要されていたメグメグとマルツィオは、シャムたちの急襲により、性交中の状態で放置されていた。
 戦闘に陥った際、敵兵はメグメグたちの逃亡を阻止するため2人の足を椅子の足にロープで固定してしまったのだった。
 そのため2人は立ち上がることすらできなくなっていた。
 幸い両手は使えたので、時折、敵が襲ってきた際はパンチで躱すことができた。

メグメグ「王子様、お願いがあるのですが……」
マルツィオ「なんだ?」
メグメグ「畏れ多いのですが、私の中に入ったままのアレを抜いてくれませんか? 敵にパンチを繰り出すたびに擦れて、何とも堪らない気持ちになるので、戦いにくいのです」
マルツィオ「抜いてやりたいのは山々だが、腰を上げられないので無理だ」
メグメグ「ではせめて小さくなりませんか?」
マルツィオ「それも無理だ。小さくしたくてもおまえの穴の締めつけが心地よくて全然萎まないのだ」
メグメグ「あっ! 王子様の後ろから敵が! えい、パンチ!」

 対面座位で抱き合ったままの2人だが、これが見かけによらず強いのだ。
 とはいっても不自由な体勢での勝利がいつまでも続く保証はない。
 そんな2人の元にようやくブルネッタが敵の包囲網を搔い潜ってようやく駆けつけた。

ブルネッタ「王子様、団長、ご無事で何よりです! すぐにロープを解きますのでお待ちください!」」
マルツィオ「おう、ブルネッタか、よく来てくれた!」
メグメグ「ありがとう! ブルネッタ!」
ブルネッタ「まあ、嫌ですわ……下は何も穿いていないじゃないですか?」

 ロープを解きながらブルネッタは顔を赤らめた。

メグメグ「あっ! ブルネッタ! 後ろに敵がっ!」

 突如ブルネッタの背後に剣を掲げた蛇兵が現れた。

蛇兵「死ね~~~!」

 ブルネッタの背中に剣を振り下ろす蛇兵。
 もはやこれまでと思われたが、電光一閃蛇兵の剣が弾き飛んだ。

蛇兵「誰だ!?」
シャム「後ろから襲うなんて卑怯な真似はよくないな~」
蛇兵「ひいっ!」
シャム「おい、蛇野郎、剣を拾えよ、武器を持ってないやつを切るのは性に合わないんだ」

 蛇兵が剣を拾うやいなやシャムの剣が煌めいた。

蛇兵「ぎゃぁ~~~!」

ブルネッタ「シャム様、助かりました! ありがとうございました!」
メグメグ「ブルネッタ、こちらの方はどなた?」
ブルネッタ「勇者のシャム様です。旅先から自警団の応援に駆けつけて来てくださいました」
メグメグ「あなたがお噂の勇者様ですか? シャム様、ご支援に感謝します」
シャム「噂のことはよく知らないけど、よろしくな」
マルツィオ「もしや! 魔物退治のためにロマンチーノ城を旅立った王子ってあなたのことですか!?」
シャム「し~、声が大きい。王子と呼ぶのはやめてくれ。シャムでいい」
マルツィオ「ごめんなさい。シャムさんと呼ばせてもらいます。ピエトラ・ブルの応援に来てくださってありがとうございます」
シャム「副団長から聞いたけど、父王はお気の毒だったな。でも負けるなよ。ピエトラ・ブルの平和は王子のがんばりにかかっているんだからな」
マルツィオ「お気遣い感謝します……うううっ……」

 マルツィオは父王の死を思い出したのか思わず涙ぐんでしまった。

シャム「それはそうと」
マルツィオ「はい、何でしょうか……?」
シャム「王子と団長、2人ともパンツを穿いてないけど……もしかしたら体勢から察してアレとコレを合体中なのか?」

 マルツィオはポッと頬を赤らめた。

メグメグ「確かにアレとコレを合体中ですが、これには深い事情がありまして……決して不純な動機ではなく……」
シャム「気にしなくていい。この忙しい時に好き好んで合体するやつなんて滅多にいない。デルピュネのはかりごとでこうなったぐらいは想像が付く。それはいいとして、よく戦闘中にずっと勃起が続けられるな~」
マルツィオ「いやあ、メグメグの締りがあまりにも良くて、勃起が止まらないのです……」
メグメグ「王子様! 変なことを言うのはやめてください!」
シャム「メグメグが名器である証かも知れないな~。後で試してみようかな?」
メグメグ「シャム様までそんな嫌らしいことを言って……」

 その時、マルツィオがシャムの背後に敵が迫ったことを告げた。
 シャムは振り向きざま、蛇兵を一突きした。絶叫を残し倒れる蛇兵。

シャム「とにかく早く解こう! ブルネッタ、おいらが見張っているから2人の足のロープを切ってやってくれ!」

 ブルネッタは2人の足のロープを短剣で瞬く間に切り落とした。
 シャムが上の位置にいるメグメグを担ぎ上げる。
 メグメグの股間から白濁色の液体がたらりと滴り落ちた。



第35章「武術家メグメグ」 第8話

シャム「おお、マルツィオ、メグメグの中に放出したな!」
マルツィオ「私としたことが……メグメグすまない」
メグメグ「王子様の責任ではありません」
マルツィオ「もしおまえに子ができたら私が責任をとるから安心しろ」
メグメグ「王子様、そのお気持ちだけで十分です。それより今は城に立て籠っている魔物たちをせん滅することに全力を注ぎましょう」
マルツィオ「そうだな」

 そこにイヴが駆けつけてきて捕らわれていた2人にヒールを唱える。

メグメグ「ありがとう! 元気が出ました!」
マルツィオ「これはありがたい! あなたは?」
イヴ「シャムの仲間のイヴです。どうぞお見知りおきを。魔法部隊が接近戦に持ち込まれて苦戦しているので応援してあげて!」
メグメグ「行きましょう!」
マルツィオ「剣がないかな? うん、これでいいや!」
ブルネッタ「私もおともします!」

 マルツィオは倒れている蛇兵の剣を奪い取りメグメグとともに駆けていった。

 敵の弱点を突いて戦いを有利に進めるのが、いつの時代も戦いの常石である。
 知略に長けたデルピュネは、シャムやリョマとの激突を避け、先にエリカ、マリア、ウチャギーノたち魔法部隊に接近戦を仕掛けていた。
 魔法部隊は一定の距離を開けることで、持てる力を発揮するが接近戦に持ち込まれるとかなり苦戦する傾向がある。

 蛇兵に取り囲まれ苦戦を強いられているエリカとウチャギーナは負傷し逃げ場を失っていた。

エリカ「はぁはぁはぁ……ウチャギーナさん……もはやこれまでかもしれませんね。私はあなたにヒールを唱えるので、敵は至近距離ですが攻撃魔法を唱えてください……」
ウチャギーナ「エリカさん、しっかりして。こんなところで死んでどうするの……私たちの目標はもっと先にあるのよ……」
エリカ「そうですね。ウチャギーナさんのいうとおりです。ウンディネス、ウンディネス、ポテンザ・アクア~~~! 」
ウチャギーナ「アイオリアの神よ~、風の神よ~、我に大気の力を与え給え~! 風魔法ハリケーノス~~~!!」

 いつしか負傷していたウチャギーナの傷が癒されていた。
 教会内に小さな竜巻が起こり蛇兵たちが巻き込まれていく。
 竜巻から免れた蛇兵がエリカたちに襲いかかる。

 その時だった。
 強烈な蹴りが蛇兵の顔面を襲った。

蛇兵「うがっ!!」

 蹴りを放ったのはメグメグであった。

メグメグ「さあ、誰でもかかっておいで!」

 2人の蛇兵が同時に剣を振りかざしメグメグに切り込んだ。
 廻し蹴りが蛇兵2人の顔面に炸裂する。
 蛇兵が顔を歪ませ転倒する。

エリカ「まあ、何という強さでしょうか」
ウチャギーナ「こんなすごい人がピエトラ・ブルにいるんだ」

 エリカたちはメグメグの強さに舌を巻き、羨望の眼差しで見つめている。

メグメグ「この国を救いに来てくれてありがとう! 私はメグメグよ! よろしくね!」

 メグメグから少し離れた所では、依然リョマとデルピュネが凌ぎを削っている。
 リョマが果敢に仕掛けるが、ほとんどの攻撃をがっちりと受け止めるデルピュネ。
 時折尻尾によるカウンターが返ってきてリョマを苦しめる。
 それでもリョマは粘り強くデルピュネを追い詰め、徐々に体力を消耗させている……はずなのだが。

リョマ(はて? デルピュネに弱ってくる気配が一向に見られない。時折敵にダメージを与えているのに、どうして……? このままだとこちらがじりじりと体力が奪われていく……)

 リョマは焦りを感じていた。
 その時、ブルネッタが中2階を指し示した。
 彼女が指し示した先には、黒いフードをかぶり衣装すべて黒装束の男がいた。
 闇神官である。あくまで人間だが、地上界の神官とは違い、悪魔に心を売り悪魔崇拝を宗としている。

ブルネッタ「原因はあの男です! 闇神官です! あの男がデルピュネに『体力の補充』をしていたのです!」
リョマ「なんと!」

『体力の補充』とは、地上界でいうところの体力の回復のことである。

 ブルネッタは早速クロスボウに矢をセットして狙いを定める。
 クロスボウで一矢を放った。
 ブルネッタのクロスボウから放たれた矢は、男の胸元に吸いこまれるようにして命中した。

ブルネッタ「よし!}
リョマ「お見事っ!」

 次の瞬間、闇の神官は苦鳴とともに欄干に倒れ伏しそのまま1階に落下した。

 召喚時間が過ぎゴーレムが異世界へと戻っていった。
 事情を知らないリザードマンはキョロキョロと辺りを見回している。

キュー「驚いた? ゴーレムは異世界にいる仲間なの。今帰ったわ。代わりに私がお相手するわ! 行くよ!」

 リザードマンはどうにかキューの剣を躱したものの勢いに圧され剣を落としてしまう。
 2人の蛇兵がリザードマンの援軍に駆けつけるが、呆気なく一撃で玉砕。

キュー「リザードマン、さあ、立て! 剣をとれ!」

 リザードマンは隙を窺いながら剣に腕を伸ばしている。
 ようやく剣を拾うと立ち上がりざま激しく突きかかった。



第35章「武術家メグメグ」 第9話

 あらかじめリザードマンの攻撃を予測していたキューはあっさりと体を躱す。

キュー「残念だったね、あなたの攻撃は計算のうちなの。じゃあ今度は私の番だからね」
リザードマン「そんなもの喰らってたまるか!」
キュー「私の剣が躱せるかしら?」

 横に跳んで攻撃から逃れようとするリザードンマンであったが、キューの剣はその隙を逃さなかった。

キュー「波動剣『ショックウェーブ』!」

 剣が波を打っているように見えるため、リザードマンの視覚からは剣先が幾重にも見える。
 剣先が見えないと躱すこともままならない。
 波動が止まった瞬間、キューの剣先はリザードマンの胸を貫いていた。

リザードマン「うげっ……!」

 リザードマンはあえなくワルキューレ・キューの前に敗れ去った。
 シャムたちは『ミラクルソード』をゲットした! シャムが『ミラクルソード』を装備した! 強さが10アップした! シャムは『レッドブレーカーソード』をリョマに譲った! 強さが5アップした!
 シャムたちは『トカゲの尻尾』をゲットした! 使用法が分からないので取り合えず魔法の鞄に詰め込んだ!

 副将のリザードマンが敗れたことで、形勢はシャムたち優位に傾いたかに思われたが、数で勝るデルピュネ軍がまだまだ優勢といえた。

 宿敵デルピュネに対し竜騎士リョマは何度も挑んだが、決着がつかず膠着状態に陥っていた。
 戦いが長引けば互いに疲弊するもの。ところが不思議なことに、デルピュネは戦闘を繰り返せば繰り返すほど体力が低下するどころか次第に力が増していた。

リョマ「はて? 奇妙ですね……これだけ戦闘がつづくと通常なら敵は疲弊し次第に力が弱まっていくはずなのに、逆に力が増してきています……」
ブルネッタ「さきほど闇神官を倒したので、HPの補充はできないはずなのに、どうして……?」
リョマ「いや、HP回復ではなく、むしろヤツの体力の基本数値が上昇しているようなのです」
イヴ「リョマさん、デルピュネは尻尾で相手にダメージを与えるたびに、身体が巨大化していってるように思うの。さっきより背が高く筋肉が盛り上がってきたような……」
アリサ「そんなことあり得ないよおおおお!」
リョマ「いや、ないとは言い切れません。かつてそんな魔物がいると聞いたことがあります」
ブルネッタ「どうして倒せばいいのやら……」

 尻尾を使って相手にダメージを与えることで、そのエネルギーを自身の体力に変換できるという。
 にわかには信じがたいが、現実にデルピュネが巨大化しているので、事実なのだろう。
 蛇兵を駆逐しながらシャムがやってきた。

シャム「おいら、子供の頃、乳母から聞いたことがあるぞ。蛇は激辛強力ハバネロが嫌いだって」
イヴ「でもハバネロなんて持ってないよ」
ブルネッタ「ハバネロは虫よけに効くので少しだけならいつも持ち歩いていますよ。これだけしかないけど」
シャム「いや、それで十分だ。これをこうして……」

 突然シャムがハバネロを剣先に塗りはじめた。
 ハバネロは猛烈に辛いが、意外にも柑橘系のフルーティな香りが漂う。
 その間、リョマがデルピュネに対し着かず離れず適度な間合いで睨み合っている。
 ハバネロ攻撃の準備が整うまでの時間稼ぎと思われる。

シャム「さて、準備ができたぞ。おい、デルピュネ! この匂いを嗅いでみろ!」

 背が伸びて大きくなったデルピュネの鼻近くに剣先を近づけるシャム。

デルピュネ「うわっ! やめて! 近づけないで!」
蛇兵「これは強烈だ! われら蛇兵もこの匂いは苦手なんです!」

 デルピュネは顔をしかめのたうち回っている。
 匂い作戦は見事に成功した。デルピュネをはじめ蛇族はハバネロが大嫌いなのだ。

シャム「ほれほれほれ~、しっかりと匂いを吸いこめ~!」
デルピュネ「やめろというのに!」
イヴ「なるほどね~、ドラキュラがニンニクを嫌うのと同じ理屈ね。シャムも馬鹿力だけじゃなく、たまには頭を使うじゃないの」
シャム「ふん、本来おいらは力攻めより、頭脳作戦が得意なのさ」
エリカ「作戦が成功したのでシャムさんの言葉には逆らえませんね」
シャム「もっとおいらを知将として扱えよ」

デルピュネ「ごちゃごちゃ言ってないで早くハバネロをのけて! 頭が割れそうよ!」
シャム「ハバネロがそんなに好きなら、ほれほれほれ~!」
デルピュネ「むむむっ! 覚えてなさい! みんな、退却するよ!」
蛇兵「教会を見捨てるのですか!?」
デルピュネ「また後で取り返せばいいのよ! さあ行くよ! 逃げ遅れて捕まっても助けないからね!」
蛇兵「早く逃げよう!」

 デルピュネが退却を叫ぶと、堰を切ったように撤退が相次ぎ、地響きのような音とともに蛇兵たちが教会を去って行った。
 シャムたちは後を追うことはしななかった。
 今回の目的は、マルツィオ王子とメグメグ団長の救出にあったのだから。

 シャムたちは教会で保管している細身の剣『マッドエッジ』を見つけた!
 シャムたちは教会で保管している神官上下服『クリフト神官服』を見つけた!

イヴ「それぞれの剣と服はピエトラ教会で見つかったのだから、地元のジェーロ神官が着用すべきかと思います」

 とイヴは受け取りを辞退したが、一方のジェーロ神官は、

ジェーロ「いえいえ、世界に蔓延る魔物を駆逐するため苦難の旅をしているイヴ様こそが受け取るべき人物かと思います」と述べ、受け取りを固辞したのだった。

 イヴが『マッドエッジ』を装備した!
 イヴが『クリフト神官服』を装備した!



第35章「武術家メグメグ」 第10話

 チルチルが窓辺を眺めていると、群れをなして飛んでいる渡り鳥が目に飛び込んできた。

チルチル「もう渡り鳥の季節なんだピョン♫ ん……?」

 渡り鳥の群れとは少し離れて一羽の伝書鳩が窓辺に舞い降りてきた。

チルチル「おいでピョン♫」

 チルチルはそっと手を出し腕を枕木代わりにして留まらせた。
 そっと頭を撫でてやる。
 見ると足環が巻かれている。

チルチル「手紙でピョン♫」

💌💌💌

俺たちは、今、ポリュラスだ
シャムたちがいる場所を教えてくれ
状況は会って聞くから

     シャルル・ユマ・エンポリオ
💌💌💌

チルチル「わ~い、シャルルたちが隣の街まで戻って来てるでピョン♫ 早くみんなに知らせなくては!」

(クック~)

チルチル「ありがとう、鳩さん、おなかすいたでしょう? 餌をあげるでピョン♫」

 チルチルは腕に留まっていた伝書鳩にやさしくささやいた。

⚔⚔⚔

 シャルルたちの手紙に思わずシャムの表情が緩む。
 バリキンソン一味をロマンチーノ城まで連行する任務を終え、ようやく帰還するのだから喜びもひとしおだ。

シャム「やっと帰って来るな! いつ着くかな?」
イヴ「たぶん明日ぐらいじゃないかしら?」
シャム「イヴ、返事の手紙を送ってくれるか?」
イヴ「ポリュラスを経つ時間を聞いておくね」
シャム「うん、それと、ピエトラ城の魔物退治をするから早く戻るように、伝えておいてくれ」
イヴ「相変わらず人使いが粗いのね。お休みはあげないの?」
シャム「いや、シャルルにはそれぐらいがいいんだ。任務がある方が燃える男だから」
イヴ「ユマ姫に嫌われも知らないわよ?」
シャム「そんなことで嫌われないさ」
イヴ「その自信はどこからくるのかしら……」

⚔⚔⚔

 イヴとチルチルが伝書鳩に足環を巻き付ける。

イヴ「餌はあげた?」
チルチル「うん、水と餌を沢山あげたでピョン♫」
イヴ「それじゃ鳩さん、この手紙をポリュラスにいるシャルルたちに届けてね」

(クック~)

 伝書鳩は元気な姿で、イヴの手から飛び立った。

⚔⚔⚔

 魔物から解放され一息入れたメグメグとマルツィオはシャムたちと語らっていた。

メグメグ「シャムさんと皆さん、この度は私たちを救出くださって感謝します」
シャム「大したことはしてないよ。それより自警団って強いんだな~。戦いぶりを見てびっくりしたよ」
メグメグ「ありがとうございます。ただ自警団といっても大部分が村人たちであり彼らの本職は農業や酪農業です。訓練は行っていますがにわかに強い戦士を育てるにはかなり無理があります。
 この国を襲った魔物たちは現在ピエトラ城を占拠しています。彼らを追い出さない限り真の平和は訪れません。それでシャムさんたちにお願いがあります」
シャム「ふむ、どんな?」
メグメグ「大変厚かましいお願いですが、ピエトラ城を占拠している魔物退治にぜひ協力していただけないでしょうか?」
シャム「おいらたちは魔物の最後の一匹までひねり潰すためにこの村に来た。ともに戦おう!」
メグメグ「まあ、何と心強い言葉でしょう! シャムさん、あなたが応援してくれたら百人力です~!」
シャム「いやいや、それほどでもないけどな~」

 他人から賞賛されると、足を組みふんぞり返る尊大な態度はいつもの癖である。 

メグメグ「さらに、キューさんや、リョマさんや、イヴさんや、アリサさんや、その他の皆さんの力も合わせると千人力超えですよね~!」

(ドテンッ!)

 突然バランスを崩したシャムは後方に転倒した。

メグメグ「だいじょうぶですか?」
シャム「いててて……だいじょうぶだ……」
アリサ「シャムはいつもの癖なので気にしないでねええええ」
メグメグ「変わった癖があるのですね……」

⚔⚔⚔

 その夜、シャムたちも含む全員が集まり緊急会議が開かれた。

アウジリオ「私は村長のアウジリオと申します。シャム様と仲間の皆様、この程王子様と団長を救ってくださりありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。本来ならばシャム様と仲間の皆様の歓迎会を行ないたいところですが、現在、魔物たちがいつ村に攻めて来てもおかしくない状況であるため急遽緊急会議を行なうことになりました。会議の進行役はメグメグ団長にお願いしたいと思います」

 会議は出席者の紹介に始まり、魔物殲滅に向けて熱い議論が交わされた。
 議題のポイントは2つに絞られた。

①『魔物殲滅に向けて~敵陣を攻撃するか、防御に徹するか』
②『攻撃する場合、その作戦について』 

<両陣営の兵力について>
💂💂💂
<自警団側>
ピエトラ村自警団……村長アウジリオ、団長メグメグ、副団長ルッソ、狩人ブルネッタ、等80名
ピエトラ城……王子マルツィオ、神官ジェーロ、等10名
街人……アリーチェ等10名
シャム軍……シャム、イヴ、アリサ、キュー、エリカ、マリア、チルチル、ウチャギーナ、リョマ 等9名
シャム軍(参加予定)……シャルル、ユマ、エンポリオ 等3名
合計 112名
💂💂💂
<魔物側>
(推定)蛇魔神ナーガ、蛇女デルピュネ、リザードマン(人数不詳)、蛇兵(人数不詳)、グール(人数不詳)、ゾンビ(人数不詳)、スケルトン(人数不詳)
合計 おおむね300名と推定

 魔物殲滅に向けて、積極派と慎重派が激しくぶつかり合った。
 積極派は、シャム隊が加わり戦力アップしたことで一気に敵陣を攻撃するという考え。
 慎重派は、当面は防御に徹し力を蓄えたうえ、将来勝機が訪れたら攻撃に転じるという考え。

 慎重派の村長アウジリオが積極派のメグメグに向かって意見を述べた。

アウジリオ「団長、魔物の兵力が明らかでない状況で、魔物が潜む城に突入するという団長の考えは無謀ではないのかな?」
メグメグ「村長のご意見はごもっともですが、手をこまねいていては必ず魔物は村を襲撃してきます。襲撃を受けるたびに村は荒れ果て村人も減りやがて滅びてしまうでしょう。それを防ぐ手立てはただひとつ、こちらから先手を打って敵を攻撃し魔物を殲滅することしかありません」
村長「せめて敵の兵力だけでも調べることはできないのかな?」
メグメグ「無理です。送り込んだスパイを無駄死にさせるだけです。魔物の中に人間が忍び込めば目立ち過ぎるため生きては戻れないでしょう。団員を無駄死にさせるわけにはいきません」
ブルネッタ「お父さん、私も団長の意見に賛成よ。私たちには勇者シャムさんと仲間の皆さんが味方してくれてるのよ。このチャンスを逃したら将来ピエトラ・ブルの平和は望めないと思うの。『千載一遇の機会』は今なのよ!」



第35章「武術家メグメグ」 第11話

『戦うにはまず敵の兵力を知るべし』というアウジリオの発言は至極当然のことであった。
 それに対しメグメグとブルネッタの言葉は意気込みは買えても少々説得力に欠けていた。
 なぜならば敵の兵力を知らず闇雲に戦えば敗北を喫するかも知れない。
 敗北はピエトラ・ブル公国の滅亡を意味するのだから。

 そんな行き詰まった状況の中で、突としてシャムが驚くべきことを述べた。

シャム「敵の兵力はもう調べが着いている」
メグメグ「シャムさん、調べが着いているとはどういうことですか? いつ、誰が調べたのですか?」
アウジリオ「城への潜入は容易ではないと思うが、勇者殿はどんな方法で調べたのですか?」
シャム「詳しいことは、うちのアリサが今から話すから耳の穴ほじくってよ~く聞いてくれ」

 アリサが一歩進み出て朗々と語り始めた。

アリサ「私はネコミミのアリサといいます。実は私の従姉アリスがピエトラ城の中にいるのですうううう」

 アリサが放った一言でにわかに会議場がどよめき始めた。
 もしかしたらアリサは魔物の回し者ではないか、と彼女をいぶかしむ声まで飛び出した。

メグメグ「みんな静かに! アリサさんの話をちゃんと聞きなさい!」

 メグメグの一喝で会議場は静寂を取り戻した。

アリサ「従姉のアリスはネコマータ族ですが、ネコミミ族の私とは従姉なんです。彼女とは幼い頃からよくいっしょに遊びました。ネコマータ族はダタナ大陸のとある村で暮らしていますが、1年前、村が魔物たちに迫害され滅亡の危機に瀕しました。ネコマータ族は魔物と交渉し村で一番美しい少女アリスを人身御供として差し出すことで合意しました。その後アリスは不本意ながら魔物たちに従ってきました。しかしチャンスがあれば魔物たちに一泡吹かせてやろうと常に好機をうかがっていました。
 私たちが教会で魔物を追い払った日、アリスは私に面会を求めてきました。私たちが城を攻撃すれば、アリスは内部で呼応して敵をかく乱するつもりです。そうそう、それから皆さんに耳寄りなお話があります! アリスが私たちに手土産として魔物の兵力を教えてくれました! それがこの備忘録です。ちなみにネコマータはアリスのことで、キャットバットはアリスの仲間ですうううう!」

💂💂💂
蛇魔神ナーガ(1人)、蛇女デルピュネ(1人)、リザードマン(3人)、蛇兵(300人)、グール(10体)、ゾンビ(30体)、スケルトン(30体)、ネコマータ(1人)、キャットバット(10匹)
合計 386人

メグメグ「これはピエトラ城の魔物を打ち破る絶好の機会です! この機会を逃したら二度と好機は訪れないでしょう! 一気に魔物を潰しましょう!」
アウジリオ「敵の兵力が分かったので作戦を練ることができそうだな。私はもう躊躇しないぞ。一気に攻撃しよう!」
ルッソ「ふうむ、しかしこちらは112人で、敵は386人……城攻めする方が兵力に劣るわけで条件としてはかなり厳しいですね」
メグメグ「いやいや、兵力だけ比較すると、確かに魔物側の方が人数が多いけど、魔物の大部分が雑魚だからどうにかなるわ」
ルッソ「敵の大部分が雑魚かもしれませんが、こっちだって訓練したと言っても村人のほとんどが素人ですからね」

 慎重な副団長ルッソはいまいち城攻めに及び腰だ。

 そのとき、王子マルツィオの口から予期しない言葉が発せられた。

マルツィオ「亡父王と私だけしか知らない秘密を話します」

 会議場にいるすべての者たちが、次に彼が何を話すのか、固唾を呑んで見守っている。

マルツィオ「実は、城から外に通じる隠し通路があるのです」

 全員呆然としている。
 マルツィオは話をつづける。

メグメグ「城のどこから、外部のどこに……?」
マルツィオ「城の神殿の祭壇下から、ピエトラ村南の林の中です」
メグメグ「林のどこ?」
マルツィオ「一番大きなカポックの木の根元です」
メグメグ「なんと……! まさかカポックに城に通じる出入口があったとは?」
シャム「カポックってどんな木?」
メグメグ「常緑樹で、高いもので12メートルぐらいまで生長します。1本の茎から手のひらのように見える葉を10枚ほどつけるのが特徴です」
シャム「よし! 決まった! 戦闘経験のない村人は参加の必要なし!」
ルッソ「そんな無茶な!」
アウジリオ「それはあまりにも無謀ではないか!?」
シャム「自警団4人、ピエトラ城兵士10人、シャム軍12人、城にいるアリス他10人、合計37人で勝てる!」

 シャムのあまりにも奇想天外な提案に、その場にいる全員が唖然とした。
 開いた口が塞がらないとはまさしくこのことだ。



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武術家メグメグ


王子マルツィオ


狩人ブルネッタ











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