もえもえ 発火点

Shyrock作



第12話「キスは本能の着火剤」

「どうしてなの。もえもえだってオレのこと別に嫌いじゃないのだろう?」
「嫌いじゃないです。いいえ、好きです……」
「じゃあ、いいじゃないか」
「あっ……」

 一平は強引にもえもえを抱き寄せ唇を奪ってしまった。

 チュッ……

 もえもえはもう拒まなかった。
 一平の唇の柔らかさ、そして温かさ……それは罪意識の中で味わう背徳の甘美さ。
 もえもえは目を閉じて一平の強い吸引に微かな反応を示した。
 その反応に、一平はもえもえの自分に対する並々ならぬ熱い想いを唇に感じとった。

 長い長いキスが終わった。
 一体どのぐらいしてたのだろうか。
 一平は申し訳なさそうにポツリとささやいた。

「ごめんね……もえもえに彼氏がいるって知ってたのにこんなことしてしまって……」
「……」
「さあ、遅くなったけど晩飯行くか?」
「うん! おなか空いた~」
「オレ、美味い店知ってるんだ。そこに行こう」
「うん」

◇◇◇

 国道沿いのレストランを出た頃、すでに午後10時をまわっていた。
 一平はもえもえにつぶやいた。

「今日は付合ってくれてありがとう」
「私のほうこそありがとうございます。ご馳走になってしまって。とても楽しかったです」
「もえもえ……」
「はい……?」

 一平は路肩に車を止めると、もえもえの肩にそっと左手をまわして唇を求めた。
 先程とは違って、もえもえは一平の要求に素直に応じた。

 チュッ……

「もえもえ……」
「……!」

 洋服の上からではあったが一平の右手はゆたかな胸に触れた。
 黒いカーディガンの下には薄いチョコレート色のタンクトップを着ていた。
 ガーディガンが肌蹴て、てのひらは直接タンクトップをつかんだ。
 やわらかな感触がてのひらに伝わってくる。

「もえもえ……」
「あっ……」

 一平の唇が荒々しくもえもえを求める。
 一気にディープキスへ。
 戸惑いながらもそれに応えるピンクの唇。
 わずかに残されていた理性は、いつしかガラスのように砕け散っていく。
 そして女としてのつややかな本能の蕾が芽を吹きはじめていた。
 
 初めのうち一平はやさしく胸を撫でていたが、次第に行動が大胆になっていた。
 指先に力がこもり胸を揉み始めたのだ。

「あぁ……だめぇ……福田さん……いけないですぅ……」
「いいじゃないか……それと呼び方は一平でいい……理由なんかいらない……もえもえが好きなんだ……」
「一平さん……」

 指がタンクトップのストラップに掛かった。

 パラリ……

「だめぇ……」

 もえもえのハスキーで甘い拒絶の声が、逆に一平を刺激していく。
 もえもえは知っていた。
 時には、女がもらす拒絶の声が男をいっそう熱く燃え上がらせるものであることを。
 それは一平を誘惑するために意図的にもらした言葉とは言えないが、もえもえの生まれ持った小悪魔的な一面がささやかせた言葉といっても過言ではないだろう。

 タンクトップのストラップが落ちて、水色のブラジャーが覗けた。
 細身な身体に不釣合いな量感のある乳房が一平の目を釘付けにしてしまった。
 一平は猛然とブラジャーの上から乳房を鷲掴みにして揉みしだいた。

「ああっ……一平さん、いけないです……そんなことしちゃダメですっ……!」
「もえもえ! オレはもう我慢できないんだ! おまえが好きで好きでたらないんだ!」

 一平は強引にブラジャーの前土台から指を差しこみこじあけようとした。かなり無茶な脱がし方といえる。
 だがピッタリと胸にフィットしたEカップは簡単に男の侵入を許さない。
 もえもえは拒んだ。
 いや、厳密にいうと拒んでいるように見せた。
 心の奥底では『この男性なら脱がされてもよい』と思っていても、のちに相手との関係において自分が優位に立つために、「抵抗したけど、結局力づくで脱がされちゃった」という状況を作っておこうという気持ちが微妙に働いたのかもしれない。
 したたかな女はそのしたたかさを表面に出さないため、のぼせ上がっている男にはそれが見えないことがある。
 したたかさとは決して悪い意味ではなく、女性が賢く生き抜くための『力強さ』と捉えることができるだろう。

「ああっ……いやっ……」

 チュパチュパチュパ……

 一平は豊満な乳房と乳首を舌と唇で愛撫する。
 もえもえは拒絶の言葉とはうらはらに、ときおり切なげな声を発した。
 乳首はまるで第二のクリトリスといえるほど鋭敏であり、かすかな愛撫にも異常なほどの反応を示した。
 男は単純な生き物だから、自分の愛撫を高く評価し「こんなに感じてくれるなんて」とほくそ笑む一面を持ち合わせている。
 一平も決してその例外ではなかった。

◇◇◇

 ちょうどその頃俊介は、もえもえの家族旅行に出かけるという言葉を信じ、彼女に電話をかけていた。
 コールはしているが電話に出ない。

(運転中なのかな? それともクルマに家族が同乗しているから電話を取りづらいのかも知れないなあ。家に帰ったらきっと電話をくれるだろう)

 俊介はそう考えていた。




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