第13話「発火点」
カバンの中ではマナーモードに設定しているもえもえの携帯が小刻みに震えていたが、車内にいる二人の耳には届くはずもなかった。
一平は運転席と助手席の間にあるセンターコンソールすら邪魔に感じながら、身を乗り出しもえもえを抱きしめ唇を奪っていた。
てのひらはいつしか乳房から下降し、スカートの中をまさぐろうとしていた。
「ああっ……いやっ……」
もえもえは一平の手を制して抵抗を試みた。
この動作もまた計算ずくの演技だったのか、それとも身を守る自己防衛本能だったのか、それはもえもえの心に聞くしかないだろう。
太股を閉じ合わせて一平を拒もうとするもえもえ。
だがその力は決して強いものではなく、一平の腕力をもってすれば容易に開くことができた。
一平は内股を撫でまわしながら、次第に奥地へと移行していく。
車内のクーラーがかなり冷えているにもかかわらず、もえもえの額にはわずかに汗がにじんでいる。
一平のてのひらは太腿を伝いさらに進入する。
ショーツのクロッチ部分に指が触れた。
「あっ、そこはだめです……」
もえもえは腰をよじらせ一平の手から逃れる仕草をしめす。
だがクロッチまで到達した手は、まるで獲物を捕えた獣のように容易には手放そうとはしない。
腰をよじらせても手は執拗に追跡しクロッチをまさぐる。
布越しではあるが柔らかい秘肉の感触が一平の心をしびれさせる。
クロッチの中心部にある窪みを指で押してみる。
ギュッギュッ……
「あぁ……いけないです……」
「もえもえ、おまえが欲しいんだ。いつもおまえのことばかり考えて……」
一平の言葉は「考えて……」で止まった。
感情が抑制できなくなってしまって、あとの言葉が続かなかったのだ。
クニュクニュクニュ……
クロッチの窪んだ部分を指がなぞる。
そうかと思えば、窪みの両脇で盛り上がった肉土手の形状を確かめるかのようにさする。
「あぁ……」
布越しではあるが最もデリケートな個所に触れる。
もえもえはもう拒まなかった。
安堵した一平は水を得た魚のように勢いづき、窪みだけではなく近くの突起物までまさぐりはじめた。
ビクンと強い反応を示すもえもえ。
「あっ……そこは……」
強い反応に気を良くした一平はさらに愛撫を加える。
突起物は早くも硬さを見せ始めている。
「ああっ、だめです……そこはいやぁ……」
クロッチは熱を帯び、ねっとりとした湿り気を見せ始めている。
一平の息が荒くなっている。
我慢の限界がきたようで、ついにクロッチの隙間から指が滑り込ませた。
「いやです!だめですっ!」
わずかに小陰唇に触れた中指は一気に秘裂へと食い込んでいく。
この瞬間、もえもえの身体に炎が点火した。
それは小さな炎。
炎は小さいが恐ろしく熱い。
もしかしたらこの瞬間がもえもえにとって発火点だったのだろうか。
いや、あの花火大会の夜、一平に出会った時、もえもえの心に火は点っていたのかもしれない。
心にも肉体にも点ってしまった炎。
やがてもえもえの運命を変えるほどの大きな炎へと変わって行くのだが、この時の二人は知る由もなかった。
ヌッチャヌッチャヌッチャ……
指を動かすたびに秘裂からは熱い蜜が溢れでる。
一平の指はすでにべっとりと蜜にまみれていた。
「あああっ……あっ、あっ、あっ……そんなぁ……」
「あぁ、もえもえ、オレ、もう堪らなくなってきた」
「ああっ、あああ……あぁ、あああ……」
「うううっ……もえもえ……なあ、いいだろう?」
「だ、だめ……だめです……」
一平のスラックスは痛くなるほど激しい隆起を見せている。
だが、もえもえは容易に首を縦に振らない。
女性は初めての男性に対して容易に「いいわ」などとは言わない生物なのである。
一平も29歳まで独身を通してきた男だ。
それなりに女性にも慣れている。
初交渉時の女性心理と言うものも、それなりに心得ている。
「ねえ、もえもえ、いいだろう?」
窮屈な車内ではあるが、たっぷりと愛撫はほどこした。
だけどまだ足りないのかと、気合を入れて挑む。
女性慣れしているので、初めて触れる女性であっても『Gスポット』の位置ぐらいは探し当てることができる。
一平は秘孔内の少しコリコリした個所を中指で激しく擦りはじめた。
ヌチョ、ヌチョヌチョヌチョ……
「ひゃぁ~! あぁ、ダメ……そこはダメですっ! いやっ……そこはダメなのぅ~!」
「ここ、気持ちいいんだろう? ね? 感じるんだろう?」
もえもえは首を縦にふった。
一平が口元に微笑を浮かべる。
それは勝利を宣言する微笑なのかもしれない。
彼氏がいる女性と分かってはいても、強引に攻め口説き落とし、手中に収めることの歓び。
厳密にいうとまだ収め切ってはいないが、なかば勝利を手中に収めたも同然といえるだろう。
勝利を確信した一平の頬がゆるむ。