第4話

 一体どうしたんだろう。
 何かを避けているように見えなくもないが……。

 校門へ戻ってみると、向こうの方から数人の男女が近づいてきた。
 先頭を歩いているのは、当時の遊び仲間で、同窓会の幹事でもある岡部だ。

「小早川!久しぶりやなぁ、元気にしとうか?遠いのによう来てくれたなぁ~!」
「おお、岡部くん!久しぶりだね~。みんな元気か!?」

 目の前にいるのは懐かしい顔ぶれだった。
 片桐さんだって、みんなの顔を見ればきっと……

「そうそう。さっきまで片桐さんもいたんだけど、用事があるらしく帰っちゃったんだぁ」

僕がそう言った途端、それまでニコニコしていた岡部の顔が、突然怪訝な表情に変わった。

「おいお前、今、片桐て言うたな……?まさか片桐静香のことちゃうやろな?」
「そうだけど、何か?」
「そんなはずは……彼女は……」
「どうしたんだよ一体。はっきり言えよ」

 不吉な予感に駆られて尋ねる僕に、岡部は真剣な眼差しでこう告げた。

「彼女の家、あの震災で全壊してしもて……一家全員下敷きになって死んだんや……」
「「じゃあ、僕が、先程まで話をしていた彼女は一体……」
「信じられへんけど……片桐静香やろな……」
「そんなバカな……」
「お前は当時気いついてなかったみたいやけど、彼女はお前のこと、えろう好きやったそうや……。他の女の子がそういうとったんを憶えとうわ」

 その時、風もないのに緑々と繁ったケヤキが、晴れ渡った青空の下、ヒラヒラと一葉舞い落ちた。





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