第8話「朝から同時絶頂」

 せっぱづまった俊介の声のせいで静の感情にも火が点いた。

「うん……いれて……」

 静は窮屈な体勢だがなんとか振り返り、俊介と向き合う形に座りなおした。
 そしてくちびるを重ねる。
 最初は触れ合う程度のキスだったが、舌が入ってきたからそれに応えるように絡めた。
 俊介の手はずっと胸を揉んでいる。
 静もずっと俊介自身に触れていた。
 舌の絡め方も触れ方もさっきよりいやらしくなる。

「入れるよ……」

 俊介はそういうと、肉柱を静の秘裂にあてがった。
 湯の中だがぐちょぐちょに濡れているのですんなりと合体。

「うぁぁ……んん……ふぁ~……やぁぁん……」
「きつい……静? すごい興奮してるね?」

 俊介の言葉どおり、静はいつもにも増して興奮していた。
 バスタブでこんなことをしている自身にもだが、興奮のるつぼに陥った自身にそそられている俊介にも。

「だってぇ……こんなことしてるんだもん……」
「風呂でするのは初めてだものね……」

 動くたびに揺れる水面とその音、俊介の荒い息がエロティックに感じられてますますいやらしい気分になる。
 二人とも本能のままに腰を動かしていた。
 何度も律動させてくる俊介に、膣内が敏感に反応してしまう。

「今日の静、すっごくエッチ……」
「……ダメ?」
「いや、逆にすてきだよ。すごくいい」

 俊介の腰の動きが激しくなっていく。

「もっとエッチになって。めちゃくちゃかわいいから」

 キスの雨が注がれる。
 絡み合う舌が互いの身体をいっそう熱くする。
 静はもう限界に近づいていた。
 これ以上つづくと先に達してしまう。
 だけど俊介の動きは止まりそうにない。
 悦楽が静を絶頂へと導いていく。

「ダメ……イっちゃう……そんなにされたらぁ……」

 俊介が意地悪そうな笑みを浮かべる。

「じゃあやめる?」

 腰の動きがピタリと止まり、代わって指が乳房や秘所を触りだして、静の反応を楽しんでいる。

「んぁっ……そんなぁ……」
「嫌ならこのままやめるけど?」

 静の首に軽くキスしたり、乳首を吸ったりはするけど、静が本当に望むことはしてくれない。
 不満が顔に出ていたのか、俊介が静の頬に手を当ててささやいた。

「まだ満足できてないんだろう? おねだりしてみて?」

 静はもう我慢の限界だった。

「お願い……イかせて……」

 静のその一言を待っていたのだろう、俊介はふたたび腰を激しく動かした。

「いいよ、僕もイきそう。いっしょにイこうよ」

 と最奥を攻めつづける。

 ズンズンズン、グリグリグリ……

 ポルチオを激しく擦られた静は桃源郷に導かれ、次第に頭が真っ白になっていく。

「やぁ~~~ん……んあ~~~っ……イ……イくぅぅぅぅぅ……!!」

「静……僕ももう……うううっ……!!」

 最奥をずっと攻めつづけられた静と、攻めつづけていた俊介。
 二人は時を同じ快楽を感じていた。

 そして二人はほぼ同時に達してしまった。

「はあ……はあ……」

 静のあえぎ声と俊介の吐息が、狭い浴室の中でいやらしく響く。
 静の中に湯ではない熱い何かが注がれているのを下腹部で感じて、深い幸福感に酔いしれた。

 俊介が突然静を抱きよせた。
 静の耳が真っ赤になっている。
 女性が中イキするとその余韻が耳にまで現れるのか、と俊介は驚きを隠し切れなかった。

「なにを見つめてるの?」
「静の耳が真っ赤なんだよ。激しくイッたからかも」
「あは、恥ずかしい……」

 互いに見つめ合っていたら、静は急に恥ずかしくなったようで、からかうように、

「のぼせた?」

 とつぶやいた。
 それに対し俊介は一言、

「うるさい」

 と返した。
 きっと静と同じように照れくさかったのだろう。

「そろそろ上がろうか、マジでのぼせてしまう」
「うん」
「ああ、腹が減った~」
「おなか空いたね。パンでいい?」
「うん、いいよ、熱いコーヒーが飲みたい」

 静が着替え終わってミネラルウォーターを飲んでいたら、俊介が耳元でささやいた。

「また、風呂でしような」
「もう、エッチなんだから~」

◇◇◇

 チーン。
 トースターの音が浴室の甘い情事がまるで妄想であったかのようにかき消す。
 香ばしいかおりのする食パンを取り出して皿にのせる。
 静が冷蔵庫から取り出したマーガリンを塗って二人でほおばる。
 コーヒーが入ったマグカップをテーブルに置いても、いっこうに会話が始まらない。
 照れが二人を寡黙にしてしまったようだ。

 長い沈黙を破るように静がポツリとささやく。

「朝からナニするとスッキリするね」
「うん、ちょっとけだるさは残るけど、気分は最高だよ」
「すごく幸せな気分」
「僕もだよ」

 突然、カーテンの隙間から白く眩しい木漏れ日が射してきて俊介の顔を照らした。
 まぶしさが俊介を現実の世界へと戻す。

「ねえ、ホームセンターまでどのぐらい?」
「歩いたら15分ぐらいかな」
「近いんだね。静が行くときは自転車使ってるの?」
「うん、スーパーもホームセンターも自転車で」
「じゃあ、朝デートはホームセンターまで散歩だね」
「うん、俊介と行けるので楽しみ~」



前頁/次頁






























表紙

自作小説トップ

トップページ







inserted by FC2 system