第9話
「猫って春先に変な声出すでしょぉ?あれってさかりがついた証拠だって聞いた事あるよぉ~。アハ、おかしいねぇ~、レオも出すものねぇ~、アハハハ」 「にゃ~」 (ぷぷっ、レオのヤツそんな声出してるんだ~) 「でもさかりって恋とはまた違うのかしらぁ~。よくわかんないんだけどぉ~」 「にゃあ」 (恋というより、あれは発情期だって聞いたことがあるけどなあ。静には発情期は無いのか?ふうむ、人間の女には無かったか・・・) 「あぁ~、静ぅ、眠くなって来たぁ・・・ぼちぼち寝ようかなぁ・・・」 「にゃぁ~」 (もう寝るのか?もう少しおしゃべりすればいいのに。色々と聞き出せたのに。でも考えてみれば俺は聞き役にはならないよな~。だって、俺はネコなんだもん) 「むにゃむにゃ・・・ふぅ~ん・・・むにゃぁ・・・・・・」 「にゃあ?」 (あら?もう寝たの?何とまあ、寝つきの良い子だなぁ~、静って) 「にゃあ・・・」 (参ったなあ。静が寝てしまうと俺全然暇じゃん。相手にして欲しいよ~。ん? いけねえ!俺、一番肝心なこと忘れてたぞ!せっかく苦労してレオと入れ替わったのにこんなチャンスを逃したら一大事だ!静が寝るときは上がTシャツだってことは分かった。じゃあ、下は?デヘヘ、考えるだけでゾクゾクして来たぞ~。さあてと、じゃあ、下のほうへ移動しようかなあ、ルンルン~。俺はネコなんだからどこに移動しようが怪しまれることはないだろうし。うっしっし~、チャンス到来♪) ふくよかで温かい胸元から離れるのは少し惜しい気もしたが、強い欲望が俺を下方へと駆り立てた。 (スヤスヤ・・・) 静はかすかな寝息を立てて眠っている。 俺はむくっと四足を立て、真っ暗で窮屈な布団の中をゆっくりと移動した。 もちろんその間、静から離れることはなく、静の身体を壁代わりに伝い歩きしながら下方へと進んだ。 (にゃ?) 腹の辺りで足を止めた。 Tシャツの裾がめくれ上がって、へそが完全に露出してしまっている。 へそに触れようと思って、指を、いや元へ、肉球の手を伸ばしてはみたものの、静を起こしては拙いと思い、伸ばした肉球を引っ込めてしまった。 それでもわずかに触れたすべすべした素肌の感触は何と素晴らしいことか。 俺は胸を高鳴らせながら、強い好奇心をへそのさらに下方へと向けた。
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