第6話「予知夢」

 さらに深く挿入したいという欲望から、惠の臀部を抱きかかえると、怒張したものをグイグイと奥に押し込みました。

「先生! いけません! 嫌です!! やめてくださいっ!!」
「はぁはぁはぁ、惠、私は君のことを以前から好きだったんだ! だから、だから、いいじゃないか!」
「以前からって!? そんな、そんな! 私は先生のことを知りません!」
「はぁはぁはぁ~、私は君が演奏する、はぁはぁはぁ、ショパンを何度も何度も聴いているんだよ」
「えっ? 何ですって!?」
「だからいいじゃないか!」

 あとで冷静になって考えてみると、実に得手勝手な理由を述べていました。
 それでもこの際だからと、いきり立った肉柱をぐいぐい押し込んだり、ぐるぐる回転させたりと、色々な攻め方で愉しむことにしました。

「ぃやん、先生! 困ります! あぁん……どうしよう……!」
「どうもしなくていいんだよ。私に任せておけばいいんだよ」

 
 私は30余年生きてきて、かつてこれほどの強烈な感覚を味わったことがあったでしょうか。
 惠のあえぎ声をBGMに、急速に膨れ上がる快感を感じました。
 もう限界です。

 熱い飛沫が惠の中に注ぎ込まれました。

「あ、おぉ、あぁ~~~っ!」
「せ、先生! ダメです! 中に出しちゃダメです~~~!」

◇◇◇

「先輩、起きてくださいよ、寝ちゃダメですよ」
「むにゃむにゃむにゃ……んっ?」

 私は大きな拍手で目を覚ましました。
 横には後輩の林田道夫がいるではないですか。

「すばらしいピアノ演奏だったのに眠ってたらもったいないですよ」
「えっ?眠ってたのか……?」

 そこは例の都内ホテルのラウンジで、ちょうど惠のピアノ演奏が終わったところでした。

(そうか。私は後輩の林田道夫と久しぶりに飲みに来たんだっけ。あの憧れの惠を無性に彼に見せたくなって。別に私の恋人でもないのに彼の評価を仰ぎたくて。私は可笑しな男だ……)

 林田は私の期待していた言葉を発しました。

「あのピアニスト、すごくきれいな方ですね。惚れちゃいそうです。もしかしたら先輩も彼女が見たくてここに通っておられるのではありませんか?」
「ま、まさか」

 私は一応否定しましたが、内心彼の彼女に対する高い評価に充分満足でした。
 それにしてもあの生々しい光景が夢だったとは残念でなりません。

◇◇◇

 その翌朝、私は出勤すると早速カルテの整理を行ないました。
 すると驚いたことに、昨夜急患が3件あり、そのうちの1件に『仲大路 惠』の名前が記されたデータがありました。

(なんだって!? 昨夜、惠が急患でここに来てたのか!? でも惠はホテルでピアノ演奏をしてたじゃないか? いや、ちょっと待てよ……)

 私はそのカルテの記載された時刻を調べました。
 すると来院が午前1時30分と記されていました。

(と言うことは、惠はあのピアノ演奏が終わった後、体調が悪くなってここにやって来たのだ。でも昨夜、自分は非番だったから、別の放射線技師が対応したことになる。そんな……)

 私は昨夜当直だった放射線技師に激しく嫉妬しました。

(昨夜当直の放射線技師と惠との間で起きたことが、数時間前に夢となって現れたのか……?そんなことって……)

 私は昨夜当直した放射線技師が撮影した惠の写真を調べました。
 すると腹部の画像を数枚撮影しただけであることが判明しました。子宮検査用プローブを使用した形跡はまったくありませんでした。
 つまり昨夜は通常のレントゲン撮影しかしなかったのです。
 昨夜当直した放射線技師はかなり堅物であり、女性に悪戯をするとは考えられません。
 ではあの夢は何だったのでしょうか。
 もしかすると、これから先に起きること、つまり予知夢なのかも知れません。
 惠が病院を再来する可能性がないとは言えませんが、できることなら健康を維持し再来してほしくないと言うのが本音です。
 その反面、来る日も来る日も惠の再来を待つ不誠実な自分がいました。

 それから数か月後、ある当直の夜、ついに彼女はやって来たのでした。






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