第14話「俊介の結婚相手」

 以前からめぐみを密かに狙っていた磯野であったが、泰三のお気に入りということもあって一切手を出すことはなかった。
 ところがめぐみの俊介への並々ならぬ想いを知ったことで、その嫉妬から泰三への密告を思いつく。
 そしてよもや、めぐみの折檻に立ち会ったことで、そのおこぼれに与ることになるとは。
 瓢箪から駒とはこのことをいうのだろう。磯野はニヤリとほくそ笑んだ。
 二人の男の欲望に挟まれて、めぐみは苦痛と快感が混在した奇妙な空間をさまよった。

「あぁ……ああぁ……いやぁ……お願い……」
「ふうふうふう、旦那様、めぐみはうしろも結構順応性があるようです。さあ、一気に攻めてやりましょう。ひっひっひ~」
「ふふふ、声色がかなり変わって来たな。女は音色で分かる。にがあまき声とでもいうのか。苦しみの中に歓びの入り混じった声をしておる。ふふふ。ではラストスパートと行こうか」
「はい、では私もピッチを速めます」

 二匹の野獣はその言葉を合図に激しく律動を開始した。

「いやぁ~~~! ゆるしてぇ~~~許してください~~~!」

 グッチョグッチョグッチョ!
 パンパンパンパン!

「ひいぃ~~~~~! ふわぁ~~~~~!」

「うぐ、うわわ! めぐみ、おお、めぐみ! 私はもう我慢の限界だ!」
「おおお~! 私もです! うしろもかなり締まります~~~っ!」
「いやあ~~~っ! ああ、あああ、おかしくなっちゃう~~~! いやぁぁぁ~~~!」

◇◇◇

 陰惨な凌辱劇を後に涙も乾かないまま部屋を出ていくめぐみの背後から、泰三は辛辣な言葉を投げかけた。

「おまえに私の財産を渡すつもりはないからな。だから俊介を誑かして(たぶらかして)結婚しようなんてゆめゆめ考えるな。よいな」

 めぐみは泰三の言葉に毅然とした態度で答えた。

「旦那様、私は旦那様の財産を例えわずかでも欲しいと思ったことがありません。ただ純粋に俊介さんのことが好きなだけです。結婚なんて考えたことがありません……」
「そうか。そこまで言うのであれば、おまえの言葉に偽りはないのだろう。だが……」
「はい……」
「俊介とこのまま続けば、おそらく俊介から結婚したいと言ってくるはず」
「……」
「俊介の結婚相手は当家に相応しい相手でなければならない。今、四井銀行頭取の息女との縁談の話を進めておる」
「!……」
「だから俊介の気持ちがおまえに向くと何かと困るのだ。分かったかね?」
「……」
「おまえには財産分与はしてやれないが、生涯生活には困らないよう配慮してやるつもりだ。もちろんこれからも私のモノであることが条件だがな」
「分かりました……」
「よく理解してくれた。ではこれからも私に可愛がってもらえるように尽くすのだ。いいな」
「はい、承知いたしました……」

◇◇◇

 その後、俊介が北海道出張から帰ってくるまでの三日間、めぐみは昼夜を問わず泰三たちに性的折檻を受けた。
 折檻方法は磯野のアイデアで実行され、その変態度は日増しに増すばかりであった。

 まもなく俊介が出張から帰宅したが、それを待ちかねたように老練なメイドの吉岡宇乃が俊介の部屋に向かっていた。

「宇乃さん、よく教えてくれたね。礼を言うよ」
「いえいえ、とんでもございません。私は俊介様がご幼少の頃より乳母としてお仕えして来た者です。こんなことを言うとお亡くなりになられた奥様に叱られますが、私は俊介様の母親代わりだと思っております。ですから、俊介さんのことを他人事とは思えなくて……」
「その気持ち、すごく嬉しいよ、宇乃さん」
「俊介様にはお幸せになっていただきたいのです。俊介様が愛される女性は、私自身も大事にしたいのです。ところが先日、いけないことなのですが、うっかり旦那様のお部屋を覗いてしまいまして……、もう怖ろしくて、ガタガタ震えてしまいました……。めぐみさんがすごく気の毒で……」
「うん、事情はよく分かった。ありがとう」

 メイドの吉岡宇乃からの報告を聞き終えた俊介は、書類の整理中であったがタブレット端末の電源を切ると、厳しい表情で立ち上がった。

「俊介様、いかがなさるおつもりですか?」
「親父に話をしてくる」
「旦那様はとても執着心の強いお方です。例え俊介様が説得をされても、簡単にめぐみさんを手放すとは思えません。ましてや俊介様には四井銀行のご息女との縁談の話もございます」
「僕は一人の人間だ。親父の思い通りにはならないよ。政略結婚なんて絶対嫌だ」

 俊介は吐き捨てるように言った。

「ご心労お察しします。泰三様とのお話合いがうまく行くことをお祈りしております」
「宇乃さん、ありがとう。じゃあ行って来るよ」

◇◇◇

「ダメだ! めぐみとの結婚は絶対に認めんぞ!」
「僕はもう子供じゃないのです! いつまでもお父さんの言いなりにはなりませんよ!」
「この分からず屋が! おまえは当家の大事な跡取なんだぞ。分かっているのか? 跡取であれば当然跡取として相応しい嫁を迎えなければならないのだ」
「それが四井物産の娘さんと言うことですか?」
「不服か?」
「不服も何も、僕はその人の顔も知らないじゃないですか! そんな無茶な!」



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