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第8話「濡れそぼる蜜壺」
『あぁん、俊介さん……あ、あ、ダメ……ダメです……』
めぐみの切ない声が契機となって、気持ちが高ぶったのか俊介は亀裂をこそぐように舐めまわす。
『あぁ……そんなぁ……俊介さん、そこはぁ……いけません……あぁっ……』
まもなく俊介の指がうごめきを見せた。
舌と指、繊細な個所を二方向から攻め立てる。
いくらビデオカメラの性能がよいといってもそれ以上詳細は分からない。
二人の動作から考えて、舌がクリトリスを舐めあげ、指を膣に挿し込んでいるのではないかと推測される。
めぐみはたちまち火が点いたように身体を反り返らせ、シーツを掻きむしり、あえぎ声を発した。
『ああっ……だめ、だめ……俊介さん、あぁ、だめ……ああっ……あう……あぁぁぁ……』
俊介は愛撫の手を止めると、両脚を左右に割り開き、自身の腰を前面に押し出した。
『あっ……!』
身体の中心部に熱い肉柱が打ち込まれた瞬間、発火したような錯覚に襲われた。
愛する人とひとつになれる歓び。
それは長い間、めぐみが待ち焦がれていた感動の一瞬であった。
俊介が動くたびにめぐみの呼吸が激しくなっていく。
押し寄せてくる甘く疼くような感覚にめぐみは悶えた。
やがて俊介は自身の脚を胡坐に組み、めぐみを招き入れるとキスを交わした。
そして下からグイグイと突き上げると、めぐみも俊介の両肩に腕を回し小舟のように揺れる。
グッチュグッチュと淫猥な音がスピーカーを通して室内に響き渡る。
画面からは分からないが、めぐみの秘所はかなり濡れそぼっているのだろう。
もしかしたら滴り落ちた液体がシーツまでも湿らしているのでは、という想像を余儀なくされる。
幾許もなく、俊介が仰向けになり、めぐみが上に乗った。
そして激しい上下動。
『あっ、あっ、あっ、あっ……俊介さん、ああ、私は……あぁっ……』
泰三が苦笑しながら磯野につぶやいた。
「妬けるね、めぐみの悶える様に。私がめぐみに同じようなことをしてやっても、あれだけ悶えたことなどないよ」
「いいえ、だいじょうぶです。後ほどあの画面よりも、めぐみを悶えさせてご覧に入れますから」
「ほほう、そんなことができるのかね? それは楽しみだね。ふふふ」
(私はいったい何をされるの……?)
二人の会話を聞いていためぐみは、底知れない不安に襲われた。
めぐみが見上げると、画面はさらに激しい濡れ場を映し出していた。
俊介の腹の上で悶えていためぐみはいつのまにか体位を変えていた。
めぐみが仰向けになりその上に俊介が覆いかぶさる。
しかし正常位とは異なり、めぐみは膝を胸の辺りまでエビのように折り曲げ俊介を受け入れていた。
結合の中でも深く男を受け入れることのできる体位の一つ、屈曲位である。
俊介はめぐみの両脚を抱きかかえ、素早く律動させた。
めぐみのあえぎ声も次第に激しくなり、つややかな声を部屋中に轟かせた。
「それにしてもいい声で泣く女だな、めぐみは。ふっふっふ」
「はい、おおせのとおりです」
めぐみはめくるめく官能の炎に身を焦がしつつ、ついには頂きに昇りつめ、桃源郷をさまよううちに終章を迎えようとしていた。
俊介の動きに呼応するように腰を密着させ応えた。
俊介も限界が近づいたようで、動きがかなり慌ただしくなっている。
『ああっ……俊介さん……すごいです……ああ、どうしよう……イッちゃいそう……ああっ……ああああああ~~~~……』
『めぐみっ……! た、堪らない! おおお~~~! くううっ……!』
めぐみが頂きを極めた頃、時を同じくして俊介も到達してしまった。
めぐみに覆い被さった俊介は、めぐみをぎゅっと抱きしめたまま微動だにしなかった。
深い余韻に浸っているのだろう。
めぐみも瞳を閉じて俊介の背中に手を添えたまま解こうとしなかった。
次の瞬間、モニター画面が消され、一瞬真っ暗になったが、まもなく部屋の照明が灯された。
「めぐみよ、よくも私を欺いてくれたな」
泰三はめぐみを睨みつけて、渋みのある低い声で語りかけた。
「欺いただなんて……。旦那様、決してそのようなつもりじゃなかったんです!」
「ほほう、ではどのようなつもりだったのだ?」
「俊介さんが好きなんです! で、ですから……」
「好きなら何をしても良いと言うのか? めぐみ、俊介は私のたったひとりの息子だぞ? そして、おまえは私の掛け替えのない愛玩だ。おまえは自分のそんな立場を全く分かっていないようだな?」
「はい、分かりません! 私は一人の人間です。血も涙もある人間です。だから人を好きになることだってあるんです!」