惠 CONVERSATION

Shyrock作

ショートショート・オムニバス小説







第3話「セックス終わって10分後」の巻

「ねえ惠、今夏、旅行にいかない?」
「わ~い、行きたいな~、どこ行こうかな♪」
「どれだけ休みが取れるかがポイントだね」
「そうだね。旅行に行っていっぱいしたいな~。赤ちゃんも欲しいし」
「わっ!急に何だよ、やぶからぼうに」
「だってさ、いくら籍入れたと言っても住んでる家は同棲の時のまんまだし、本当の夫婦になりたいと言うか、変化が欲しいと言うか。うまく言えないんだけど」
「でもヤルべきことは結構ヤッててるし、このままヤリ続けりゃそのうちできるんじゃない?自然体でいいと思うんだけど」
「やだ、早く欲しい」
「早く欲しいと言われても、クルマをローンで買うのと訳が違うからな」
「つまらんたとえ」
「つまんなくて悪かったな。で、このタイミングで欲しいって何か理由あるのか?言ってみ~」
「真人、いま何月?」
「11月だ」
「だよね。でね、いまがんばったら、赤ちゃん生まれてくる月が9月になるはずなの」
「それがどうした?」
「もう、鈍いなあ~。真人が9月生まれ、私が9月生まれ。生まれてくる子が9月だったらスリーカードじゃん」
「なんじゃ、そりゃ」
「だって、縁起いいじゃん」
「同じ月だからどうだっつ~の。まあ、いいや、百歩譲ってスリーカード目指すとして、惠はそのためにオレに何をしろと言うの?」
「もっといっぱいしよ」
「はぁ?今なんつった?」
「もっといっぱいエッチしよ」
「惠」
「なに?」
「おとといは何回した?」
「4回」
「昨日は?」
「昨日は少なめで2回」
「今日は?」
「今日は休みだったので5回!」
「で、その回数をまだ増やせと言うのか?」
「うん!」
「おまえ早死したいのか!」
「私は全然大丈夫だよ。真人に求められたら何回だってできる」
「おまえが大丈夫でも俺が死ぬ。いや、確実に死ねる。第一沢山やれば妊娠の確率が上がるってもんじゃないんだぞ」
「そうなの?」
「数をこなせばその分1回の精液の量が減るじゃん」
「ふぅん……」
「大量に一発ぶちかます方が妊娠しやすいんだぞ」
「じゃあ、精力剤飲めばいいじゃん」
「精力剤を飲んだってオレの精製工場が追いつかない」
「私が工員さんを励ましてあげる」
「ほかの男に色目を使うな」
「私は大量の一発より、少なめでも数多くしたいな~」
「それはおまえ自身がいっぱい気持ちよくなりたいからだろ?」
「あちゃ、ばれた。この前、東西スポーツに、毎日5回エッチしたらほぼ確実に妊娠するって書いてたよ」
「読むものが間違ってる……てか、おまえなんで男性向けのスポーツ紙を読んでるの?」
「だって美容室で女性雑誌はほかの人に読まれてたんだもの」
「そういう深いわけがあったのか……ふうむ」
「私たち新婚だよ、新婚。私が色々してあげるから、真人ももっと頑張ろうよ。ね?」
「無理なものは無理。明日も早いんだからさっさと寝るぞ、ほら。おやすみ」
「むむむっ、真人……。もしかして、私に黙って浮気してない?」
「はぁ……?どういう理由でその結論に至るんだ?」
「だってだって、真人ったら最近新入社員の子とやたら仲がいいってこの前遊びに来た岡田さんが言ってたし。もしかしてほかの子たちとエッチして満足しちゃって、それで私の身体に興味なくなっちゃったのかなとか思ったんだもん……」
「いいかげんにしろ!毎日おまえと数回やってる男が、ほかの女の子といたす時間や体力がどこに残ってるんだ!もっと俺を信じろ!」
「じゃあ、ちゃんと行動で示してよ!そうじゃなきゃ信じてあげない」
「行動って、もしかして」
「その『もしかして』だよ。まずはきちんと甘いキスから始めて。当然愛撫は丁寧に手抜きは一切なし、体位は1回につき3種類以上ってことで。ほら、ん~っ」
「ぐぐぐっ……このエロ娘。あとになって『もう許してもうダメ』なんて泣き言言うなよ。覚悟しろ!」
「わ~い、やった~!ご褒美に明日から毎日、体力がつく料理作るから、赤ちゃんできるまでがんばろうね~。マ・サ・ト・さん!」
「……ちくしょう。どうしてこんなことになっちまったのかなあ。この世に神も仏もないのか、まったく」
「うふ、その理由を知ってるよ、真人がこうなった理由を」
「……ん?」
「それはね、私が毎晩、星に祈りを捧げてるからだよ。『真人のことが大好きです。だから真人もずっと私のことを好きでありますように』って」






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