長編官能小説/加奈子 悪夢の証書




Shyrock作







第1話


 仏壇の前で手を合わせ黙祷する一人の女性がいた。
 色白で息を呑むほどの美貌を携えていたが、表情はどこかしら暗く憂いを滲ませていた。

(あなた、どうして私を1人残して死んでしまったの?しくしく……)

 女は六車(むぐるま)加奈子と言う。
 二カ月前、夫信一は白血病が元で37歳で早逝し、加奈子はまだ32歳と言う若さで未亡人となってしまった。
 愛する夫との間にせめて一人だけでも子供を授かっていたらと、今更ながらに悔やんでみたが今となっては後の祭りであった。

 信一は小さいながらも宝飾関係の会社を営んでいたが、ここ3年ほどは不況の煽りを受け営業不振に陥っていた。
 葬儀以降、加奈子のもとへ会社役員が相談に訪れたこともあり、リーダーを失った企業の戸惑いを露呈していた。

 そんな中、四十九日の法要も無事に終えた加奈子は亡き夫に祈っていた。

(あなたの作った会社、どうすればいいの?重役が相談にくるけど私にはどう返事すればよいか分からない。ねえ、教えて…信一さん……)

 いくら問いかけても、答えなど返ってくるはずがない。
 仏間には線香が立ち込め、凛とした静寂が空間を支配した。


その時、玄関でチャイムの鳴る音がした。

「あら、誰かしら・・・?」

加奈子は廊下に出て、監視カメラを覗いた。
生前、信一が加奈子の安全を考慮して、取り付けてくれたホームセキュリティの1つであった。
玄関先にはスーツ姿の2人の男性が映し出された。
見知らぬ顔である。
1人は50前後の恰幅のよい男で、もう1人は背が高くほっそりとした若い男性であった。

「ごめんください。」
「はい、どちら様でしょうか?」
「はい、私はアクハラ商事代表取締役の阿久原と言いますねん。ちょっと奥さんにお話があってまかりこしました。」
「アクハラ商事?」

社名に憶えはなかった。
主人ではなくて、自分に会いたいと言っている。
それに阿久原という男はかなりの関西弁だが、加奈子には関西人で馴染みの人間はいなかった。
加奈子は怪訝に思い首を傾げた。

「あのぅ、失礼ですが、どのようなご用向きで?」
「そや、それを先に言わんとすんまへん。実は、ご主人の六車さんが生前、当社と金銭の取引がありましてぇ。そのことで奥さんにお話せなあかんことがあっておじゃました次第です。」

信一の契約相手先と聞き、加奈子はやむを得ずドアを開けることにした。

(でも、取引のことであれば、会社の方へ行ってくれたらいいのに。まあ、仕方ないか、一応、聞くだけ聞いてみよう。)

「この度はご愁傷さまです。ご主人さまはまだお若いのに惜しいことしはりましたなぁ。お力落としのないように。」
「どうもありがとうございます・・・。どうぞお入りください。」

阿久原は玄関に入るとすぐに弔辞を述べたので、加奈子も丁重に挨拶を返し、応接間へと案内した。



第2話


阿久原は穏やかな表情を浮かべ、生前の信一を賞賛する言葉を並べ立てた後、にわかに厳しい顔に変わっていった。

「ほな、早速ですけど、本題に入らせてもらいます。」
「はい・・・」

阿久原はそう告げると、鞄のチャックを開けて大きな封筒から何やら書類を取り出した。

「奥さん、この書類、ちょっと目を通してくれはりますか。」

テーブルに置かれた書類のタイトルには『金銭消費貸借契約書』と太い文字で書かれていた。


金銭消費貸借契約書


 貸主 アクハラ商事株式会社 (以下、「甲」という。)と借主 六車信一 (以下、「乙」という。)は、次の通り金銭消費貸借契約を締結した。

  第1条  甲は乙に対し、本日、金20,000,000円を貸付け、乙はこれを受領した。

第2条  乙は、甲に対し、前条の借入金20,000,000円を平成19年2月から平成20年9月まで毎月末日限り金1,000,000円宛分割して、甲方に持参して支払う。

第3条  利息は年15パーセントとし、毎月末日限り当月分を甲方に持参して支払う。

第4条  期限後又は期限の利益を失ったときは、以後完済に至るまで、乙は甲に対し、残元金に対する年18パーセントの割合による遅延損害金を支払う。

第5条  乙について、次の事由の一つでも生じた場合には、甲からの通知催告がなくても乙は当然に期限の利益を失い、直ちに元利金を支払う。 ① 第2条の分割金又は第3条の利息を1回でも期限に支払わないとき。 ② 乙が甲に通知なくして住所を変更したとき。

第6条  乙が本契約に違反したときは、甲の要求のあった日から30日間、乙は乙の配偶者を甲に預託するものとする。

第7条  本契約に定めのない事項が生じたとき、又はこの契約条件の各条項の解釈につき疑義が生じたときは、甲乙誠意をもって協議の上解決するものとする。

 以上、本契約成立の証として、本書を二通作成し、甲乙は署名押印のうえ、それぞれ1通を保管する。

平成19年1月31日


貸主(甲) 住所 大阪府大阪市※※区※※ ※ー※ー※

氏名 アクハラ商事株式会社

代表取締役 阿久原健之助


借主(乙) 住所 東京都※※区※※町※ー※ー※

氏名 六車信一




「まさか・・・・・・」

加奈子の顔が見る見る間に青ざめていった。

(うそ・・・信一さんが生前、2,000万円もの大金を借金していたなんて・・・。あの人は博打もしないし、女性関係だって特になかったはずだわ・・・どうして・・・?)

さらに加奈子は契約書を読んでいくうちに、信じられないような条文を見つけた。

「うそ!これ、どういうこと!?」



第3話


加奈子は見る見るうちに青ざめていった。
それもそのはず、契約書の第6条に、夫が契約に違反すれば加奈子を相手方に30日間任せると言う無理非道な記載があった。
しかし、それはあくまで夫が契約に違反していたら、の話ではあったが。

加奈子は声を詰まらせながら阿久原に尋ねた。

「こ、この契約書、本当に夫がサインしたのですか?」
「これは異なことをおしゃる。まるで、私らが勝手に契約書をねつ造したみたいに聞こえますがな。」
「いいえ、決してそんな意味で言ったのでは・・・」
「そないに聞こえましたけどなあ。契約書にはちゃんとご主人が自分で実印を押してはったし、おまけに印鑑証明ももろてますんやで。」

阿久原はそう言って加奈子をじろりと見た。

「私もあんまりきついこと言いたないんですけどねえ。ご主人を亡くしはってまだ間ぁないし、ご主人の借金のこと聞いて、奥さんも気が動転したはるやろしなあ。
 せやけどこっちも商売ですし、ちゃんと伝えとかんとあきまへんからなあ。ごほん。で、借金の件ですけど、ご主人は今年の4月以降1円も返済してくれたはれへんのやけど、奥さん、これ、どないしはるつもりですねん?」
「えっ!返済が滞っているのですか!?」
「はい。私らも困ってますねん。4月から今日までで6ヵ月経ってるから、元金だけでも合計で600万円の滞納になるますんや。それに利息と延滞利息も合わせて払ろてもらわなあきまへんのや。」
「い、いつまでにお返しすればいいのでしょうか・・・」
「いつまでと言われても、もう期限過ぎてるますよってになあ。」
「何とか返します!出来るだけ早く返します!」
「金を返すだけではあきまへんのや。」

阿久原は淫靡な笑みを浮かべた。

「ではどうしろと言うのですか?」

加奈子は泣き出しそうな表情になっていた。

「簡単なことですわ。契約書に書いてあることを履行するだけのことで。」

阿久原は嫌味な笑みを浮かべながらそう告げると、突然、加奈子の乳房を洋服の上からわしづかみにした。

「きゃっ!!」

加奈子は思わずうしろにのけぞった。
ところが、次の瞬間、何者かが加奈子を抱きかかえ、羽交い絞めにした。

「な、何をするんですか!!やめてください!!」

うしろから加奈子を羽交い絞めにしたのは、阿久原に同行してきた男性園木だった。
すごい力で加奈子を締め上げた。

「い、痛い!やめてください!乱暴はやめて!!」
「奥さん、おとなしくしてたら手荒なことはしないから、社長の言うとおりにした方が利口ですよ。僕も別に奥さんに危害を加えるつもりは毛頭ありません。ふふふ」

園木が加奈子を押さえつけながら、耳元でささやいた。
まだ若いがどすの効いた声で背後からささやかれて、加奈子は震え上がった。

次の瞬間、園木は加奈子の前方に廻りこみ、手際よく茶色いロープで加奈子の手首を縛ってしまった。
ロープはおそらく予め準備していたのだろう。

「な、何をするの!?」
「ふふふ、少しの間、窮屈だろうけど大人しくしててもらいます。」
「そ、そんなぁ・・・」

園木はそう言いながら加奈子の手首をしっかりと結んでしまった。
加奈子は手首を揺すり外そうと試みたが、ローウは頑丈に縛られててびくともしない。

阿久原が満足そうな顔でにやにや笑っている。

「園木。奥様を天井から吊るしてあげなさい。」



第4話


「え?なぜ!?なぜ吊るされなければいけないのですか!?お金は必ず返します!だから乱暴なことはやめてください!」
「奥さん、心配せんでも乱暴なんかせえへん。ご主人から委任されたので、ちょっとの間だけ、奥さんを借りるだけですがな。ぐひひひひ」
「そんな無茶な・・・」
「無茶とちゃいまっせ。契約書どおり実行してるだけやがな。ごちゃごちゃ言うてても始まらへん。園木、奥さんをはよ吊るしてあげなさい!」
「やめてください!」

早速、園木は室内から適当な箱を探してきて、それを踏み台にした。
天井のフックにロープを引っ掛けてしっかりと結んだ。
フックはシャンデリア等重いものを吊るしても十分に耐えれるほど丈夫にこしらえてあった。
園木が準備作業をしている間、阿久原は室内をキョロキョロと眺めている。

「ほほう~、さすがに金持ちは家の造作もちゃいまんなぁ。かなりええ材料つこてるみたいやし、部品ひとつにしても頑丈に作ったぁるわ。奥さんの部品もさぞかし上等なもんなんやろなぁ。どれどれ?」

阿久原はブラウスの襟元を摘まみ広げ中を覗き込んだ。

「ひぃ~!覗かないでください!」

加奈子は拘束されている手首を振りまわし抵抗を示した。
その時に加奈子の手が阿久原の頬を直撃してしまった。

「いたっ!ちょっと覗いただけやがなあ。さしずめ、これから嫌や言うてもたっぷりと見せてもらうけどな。ぐふふふ。おい、園木、どうや、段取りはできたか?」
「はい、この通り天井からロープを吊り下げましたので、あとは、奥さんの手首を結ぶだけで完了です。」
「よっしゃ、ほなら早速、奥さんを縛ったげてくれるか。この奥さん放っておくと私を叩きよるさかいなあ。あ~いたぁ、まだほっぺた痛いわ。」

まもなく天井から垂れ下がったロープが加奈子の手首と連結し、文字通り加奈子は『吊るし』の状態にされてしまった。
ただし映画等の拷問シーンで見かけるような、足が床や地面から完全に離れてしまうような『宙吊り』ではなく、爪先を床に着けることが出来た。
それでも両手を真上に伸ばす姿勢は、加奈子にとってかなりつらいものがあった。

「どうや、奥さん。しんどいか?」
「・・・・・・」

加奈子は返事をしなかった。

「それにしても、奥さんて色白やなあ。それに肌もきれいそうやし。」

阿久原は嫌らしい目つきで加奈子をしげしげと眺めた。

「服着たまま吊り下げられたら窮屈でしんどいやろ?おい、園木、奥さんの服、脱がせてあげないさい。」
「はい。」
「や、やめてください!」

園木はブラウスのボタンを外しにかかった。

「いや、やめてっ・・・お願いです、やめてください・・・」

加奈子は半泣きになって園木に哀訴した。

「それは無理な注文ですね。」

園木は冷徹に突き放した。
ボタンを外すのに園木が意外と手間取っているのを見て、阿久原は催促をした。

「う~む、辛気臭いなあ。1つ1つボタン外さんでもええんや。服を裂いても構わんから、はよ脱がしてあげなさい。奥さんもはよ脱がされたくてウズウズしたはるやろし。」
「そ、そんなことありません!や、やめてぇ~~~!」

(ビリビリビリ~!)

園木は加奈子の着ているブラウスの胸元から、力ずくで引き裂いてしまった。
見るも無残にブラウスは引き裂かれ、ボタンが飛び散り床に転がった。

「ひどいわ・・・」



第5話


(コロコロコロ・・・)

ボタンは2つ千切れ落ち、そのうちの1つが畳の上を車輪のように転がっていった。
裂けて布切れと化したブラウスはあっさりと取り去られ、続いてプリーツスカートも園木の手で剥ぎ取られてしまった。

男たちの注目する中、加奈子の黒のキャミソール姿が目に飛び込んできた。
一点の染みもない透き通った白い肌が男たちを刺激した。

(ゴクリ・・・)

阿久原は生唾を飲み込んだ。

「ほう~、何とまあ、きれいな白い肌したはりますなあ。思わず吸いつきとうなってきたわ。」
「確かにきれいな肌ですね。それに何ていうか、20代の女の子にはないような色気がありますねえ。」

ふたりの男は加奈子のキャミソール姿を眺めながら、好き勝手な評価をし始めた。

「そのとおりや。この奥さん、上品な顔したはるけど、滴るような大人の色気がムンムンしてるわ。おい、園木、さっそく可愛がってあげよかぁ。」
「はい、分かりました。」

園木は社長の指示を待っていたかのように、すぐに行動を開始した。
加奈子の真後ろに回り込み、首筋に顔を近づけた。

「うはぁ、奥さん、すごくいい匂いがする。クラクラしてくるよ。生前旦那さんにはさぞかし可愛がってもらってたんだろうなあ。」
「そんなことありません!」
「ははは、そうムキにならなくても。」

園木は加奈子の首筋に唇を這わせた。

(チュ、チュチュチュ・・・)

「あっ・・・いやっ・・・」

加奈子は逃れようとした。
しかし園木は逃がさない。
園木は舌を使い始めた。

(ペチョ・・・ペチョペチョ・・・)

「やめて・・・」

(チュッ・・・チュッ・・・)

加奈子のセミロングの髪をかきあげ、後れ毛の辺りにも舌を這わせた。

「や・・・やめてっ・・・」
「こんなことしてもらってたんだろう?え~?」
「いやぁ・・・」

キャミソールから覗く白い背中にも唇は及んだ。
加奈子は避けようとするが、両手を吊り上げているため思うように動けない。

(ペチョペチョペチョペチョ・・・)

「ひぃ・・・い・・・いやぁ・・・」

「園木、裏側ばっかり責めてんと、表も責めてあげなあかんで。奥さん、そない言うたはるがなぁ。」
「そんなこと言ってません!」
「がはははははは~~~」

「それじゃお言葉に甘えて。」
「いやぁ~~~!」

園木の後方から腕を廻して乳房を掴んだ。
量感のある乳房は手のひらに収まりきらない。

「結構でかいっすねえ、奥さん。むふふふ」
「やめてください!お願いっ!」
「俺がやめたくても、手の方が止まってくれないもので。悪いねえ~。ああ、とてもいい感触だなあ。キャミの上からでもこれだけいい感触だったら、脱がせたらどれほどいいやら。ふふふ、こりゃあ楽しみだ~」

園木は優しく撫でてみたり、時々、絞るように強く揉んだりと、メリハリのある愛撫で加奈子の肉体を責め立てた。



第6話


「園木、そんなにええあんばいか(いい具合か)?どれどれ。」

園木の後方からの愛撫に加えて、阿久原も正面から加奈子に触れてきた。

「いやぁ~~~~~~~~!!」

二方向から触れられた加奈子は、そのおぞましさから気も狂わんばかりに叫んだ。

亡き夫信一と結婚して以来、常に貞淑を守ってきた。
自慢の珠の肌には、夫以外の男に指一本触れられたこともなかった。
それが夫の死後まだそんなに日も経たないうちに、見知らぬ男たちが突然踏み込んできて踏みにじろうとしている。
それも理不尽な理由で・・・。

阿久原は淫靡な笑みを浮かべながら、脂ぎった手で加奈子の乳房を乱暴に掴んだ。

「いたいっ!や、やめてくださいっ!」

加奈子はキッと睨んだが、阿久原は平然としている。

乳房への愛撫を阿久原に譲った形になった園木は、加奈子の腰や尻へと愛撫の範囲を広げた。

「ひぇ~~~~~!やめて!お願いですから!」

悲痛な叫び声が室内に轟き渡る。

「社長、大きな声を出されると近所に漏れるんじゃないですか?」
「いや、だいじょうぶやろ。敷地も広いしこれだけ大きな邸宅やったら声も届かへんで。口にタオルを噛ましてもええけど、せっかくの奥さんの色っぽい声が聞こえんようになるからなあ。がははははは~」

阿久原は園木の不安を一笑に付した。

「園木、それはそうと、奥さんにキャミソールぼちぼち脱いでもらおか?」
「ふふふ、そうですね。ん?でも奥さん吊るされてるから肩紐を下ろせないなあ。仕方ないか、肩紐を切っちゃおう。」

園木は鋏を取り出し肩紐に宛がった。

「やめて・・・」

(プチン・・・)

肩紐が分断されたキャミソールは下着としての用途を失い、きぬずれの音とともに畳の上へと落ちた。
阿久原たちの目前に現れたのは、黒いブラジャーと黒いパンティだけを残した加奈子のあられもない姿であった。
肌は透き通るように白く、さらに一点の染みもない。
モデルのように細過ぎることはなく、かといって、無駄な脂肪は微塵も見られない。
まさに絵に描いたような美貌とむっと来るような大人の女の色香がそこにはあった。
阿久原は思わずため息をつき絶賛した。

「ほぇ~~~・・・どえらいええ身体したはりまんな~。私も長いこと男やっとるけど、こんなええ身体の女見たん初めてやわ~。あかん、よだれが出てきた。」
「ほんとにすごい色っぽい身体してますねえ。それに比べて俺の彼女はまるで子供ですよ。」
「こんなええ女と毎晩やってたら腰抜けてしまうかも知れへんわ~。がはははは~~~。もしかして、旦那はんは奥さんとやり過ぎて早よ死にはったんちゃいまっか?」
「そんなことありません!そんな失礼なこと言わないでください!」
「そうでっか~。そら、えらいすんまへん。せやけど、私が奥さんの亭主やったらたぶん毎晩やりまっせ~。」
「すごい!さすが社長は絶倫ですね!」
「この歳になってもそっちだけは元気いっぱいやで~。がははははは~~~」

身体中をナメクジが這い回るようなおぞましい感触に加え、阿久原たちの卑猥な会話は、加奈子をさらなる羞恥の底へと落としていった。



第7話


阿久原は園木と下衆な話題に花を咲かせながら、いつしか、指はブラジャーの中へ忍び込んでいた。

「いやっ・・・やめて・・・」
「ほう~、乳首、もう、かと(硬く)なっとるやないか。奥さん、やめてやめてと言うたはるけど、案外満更でもないんちゃいまんのんか~?」
「そんなことありません!」
「怒った顔がまたええがなあ。がははははは~、ゾクゾクしてくるわ。」 「・・・・・・」

ブラジャーはホックこそまだ外されてはいないが、下の方からずらされてしまって、すでに乳房は露出してしまっていた。
たわわに実った乳房とローズ色の硬くなった乳首が男たちの目を楽しませた。
阿久原は満悦顔で乳首を摘まみ、唇を寄せていた。
そのおぞましい感触から、加奈子は思わず悲鳴をあげた。

「ひぃ~!やめてください!」

仰け反ろうとするが、天井から吊るされていては、思うように避けることも適わなかった。
背後からは、園木の指がパンティの上を這い回っていた。
ついには微妙な部分にまで及び、加奈子は腰を揺すって振り払おうとした。

「奥さん、ここ、めちゃ凹んでいるじゃないの。どうしてなの?」
「いやっ・・・触らないで・・・。そんなこと・・・知りません・・・あぁ・・・あぁぁ・・・」

園木はクロッチの中心部をまさぐりながら、わざと尋ねてみせた。

(ぐにゅぐにゅぐにゅ~)

「いやぁ!や、やめて!あぁ、やめて!」

(ぐにゅぐにゅぐにゅ~)

窪んだ箇所に指を宛がいこね回す園木に、加奈子は腰を振って逃れようとした。

「逃げちゃだめだよ。奥さん~」
「ひぃ~~~!いやぁぁぁぁぁぁ~~~!」

(ぐにゅぐにゅぐにゅ~、ぐにゅぐにゅぐにゅ~)

「あれ?じんわりと湿ってきたぞ!奥さん、もう濡れてるじゃん!?」
「そんなことありません!ひぃぃぃぃ~~~!!」

(ぐにゅぐにゅぐにゅ~、ぐにゅぐにゅぐにゅ~)

「あぁっ・・・いやっ・・・やめてぇ・・・」

(ぐにゅぐにゅぐにゅ~、ぐにゅぐにゅぐにゅ~)

「うわ~!社長、マジですごく湿ってきましたよ!」
「お前のテクニックに、奥さん、もうメロメロになったはるんちゃうか?何やったらパンツ脱がして調べてみたらどうや?」
「待ってました!では早速!」

園木は嬉嬉としながらパンティに手を掛けた。
加奈子は腰を揺すって激しく抵抗を示している。

「ひぃ~~~~~~!それだけは!それだけは堪忍して!」
「ぐっふっふ~」

脱衣に抗うためとはいえ、くねくねとくねる腰つきが、よけいに男たちの情欲をそそる。
パンティは臀部を越えるとあとは簡単に下降をたどった。
膝の辺りまでずり下がったパンティから指は離れ、すぐに繁みへと向かった。

長身の園木は、身体を折り曲げて加奈子の下半身を覗き込んだ。
繁みは濃くもなく薄くもなく、陰毛のボリュームとしてはやや少な目と言えた。
繁みを指でかき分け、亀裂に触れた。

「やっぱり。」

園木は阿久原の方を振り返ってニタニタと笑った。

「社長、やっぱりもうびっしょりですよ!この奥さん、相当なスケベーだ~!」
「いやっ・・・そんなこと・・・」

加奈子は羞恥で顔を赤らめ背けてしまった。



第8話


園木は溝に指を填め込んで軽く前後に往来させた。
加奈子の尻がぷるっと震える。

「いやっ!」

「ふふふ、社長、このとおりです。」

園木は濡れて光った中指を見せた。

「へえ~、もう指がテカテカになっとるやないか。ちょっと触られただけでもう感じまくりかいな。ほんまにスケベーな奥さんやなあ。」
「感じてなんかいません!」
「そうかな?感じてないのにどうして濡れるの?奥さん。」
「・・・・・・」

意地悪な質問が浴びせられ、加奈子は返事につまった。
夫が他界して以降、まだ若い身空で“性”からは久しく遠ざかってしまっていたが、かといって自身、性への渇望はそれほどなかった。
まれに夫を想い出し、枕を濡らしながら、ひとり自分を慰める夜はあったが、それは愛する夫ゆえの行為であると思っていた。
そんな純粋な思いが、突如現れた二人の男たちに無残にも踏みにじられてしまった。

「社長、ここは社長ご自身の指で確かめていただかないと・・・」

園木はニタニタしながら阿久原を囃し立てた。

「えっへっへ~、そないに言うんやったら私も・・・」

園木のほっそりとした指とは対照的な、節だらけの太い指を加奈子に突き立てた。

「きゃあ~~~~~~~!!」

指は肉襞を割って、狭間に沈んでいく。

「締め付け結構きついなあ。指一本でもやっとこさやわ。」
「人妻とは思えないきつさですか。」
「アホいえ。子供産んだらちょっとだけ緩うなるけど、ふつうは人妻でも未婚でも、きつさは変わらんわい!」

阿久原はそう言うと、急に早いピッチで指を動かし始めた。

「いやぁぁぁぁぁぁぁ~~~!!やめてぇぇぇぇぇぇぇ~~~!!」

加奈子は腰をよじって逃れようとしたが、自由を束縛された身では限界があった。

「奥さん、ここの数の子みたいにコリコリしたとこ、たんと擦ったらどないになるやろなあ~?」

(グチュグチュグチュグチュ!)

「ひぇぇぇぇぇぇぇ~~~~~~~~~!!」

阿久原は一見鈍重に見えるが、指の動きは実に滑らかだ。
高速度で指ピストンを繰り返した。

(グチュグチュグチュグチュ!グチュグチュグチュグチュ!)

「いやぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~!!」

園木は加奈子の内股に手を宛がい、足の拡げ役に徹している。

「奥さん、どや?長いことエッチしてへんから、気持ちよすぎて気ぃ狂いそうなんちゃうか~!?がはははははは~~~!」

(グチュグチュグチュグチュ!グチュグチュグチュグチュ!)

「あぁ!いやっ!許してぇ~おねがい~・・・いやっ!だめっ!」

(グチュグチュグチュグチュ!グチュグチュグチュグチュ!)

「ひぃぃぃぃぃぃぃ~~~~~~~~~~~~~!!」

(グチュグチュグチュグチュ!グチュグチュグチュグチュ!)

「あぁぁぁ~だめぇぇぇ~あぁん!いやぁん!あぁっっっっっ!!」

(プシュッ!!ピュゥ~~~~~~~~~!!)50

指が挿し込まれた亀裂から、噴水のように水が飛び散った。

「おおっ!潮噴きよったで~!」
「きゃぁ~~~~~~~~!!」
「すごっ!潮吹きだっ!!」

(ピュゥ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!)

阿久原は指を離し潮が吹く光景を満足そうに眺めていた。



第9話


水は放物線を描き飛散し、まもなくその勢いは衰えていった。

「へえ~、なんとまあ、えらいようけ潮吹きましたなあ、奥さん。畳がびしょびしょに濡れてしもたがなあ。おい、園木、雑巾や、雑巾!」

突然雑巾といわれても、他人の家の勝手など分かるはずがない。
園木はキョロキョロと辺りを探したが見当たらない。
布巾や雑巾は台所に行けばだいたいあるはずだ。
即座にそれが思いつかなかった園木は、どこからか新聞紙を見つけてきて、飛散した場所に敷いた。

「奥さん、えらい派手に潮吹きはったなあ。がははははは~~~!以前から旦那はんに擦ってもろてしょっちゅう吹いてはったんか?」
「そんなことありません!」
「そんなむきにならんでもええのに。がはははははは~~~」

加奈子は自分が潮を吹く体質であることは以前から知っていた。
ただし、結婚してからと言うもの、夫の指によって潮を吹かされたことは一度もなく、かつて女子大生だった頃、当時付き合っていた彼氏に自分が潮吹きであることを身をもって教えられた経験がある。
それから10年が経ち、あろうことか突然押し掛けてきた見知らぬ男性に、肉体の秘密を発見されてしまうことになるとは・・・。
加奈子はとても口惜しかった。亡き夫にも見せたことのない痴態を、薄汚れた男たちの前で晒してしまったことが。


「さあて、ほな余興もこの辺で終わりにしまひょか?」

阿久原はそういって、持参したボストンバッグの中をごそごそと探し始めた。
そして何やら奇妙なものをバッグから取り出した。

「奥さん、どれが一番好みでっか?」

阿久原は両手に乗せた数本のバイブレーターを加奈子に見せ、ニヤニヤと笑った。
まるで男根そっくりの黒光りした大型バイブレーター。
幹に当たる部分には沢山の突起がついている。
先端が円盤のようになったマッサージ器のようなバイブレーター。
加奈子にとって未知の物体である。
シャープペンシルのような形をしたピンク色のバイブレーター。
これも加奈子はどのように使うかを知らない。
さらに最も小さなピンク色のたまご型のもの。
ピンクローターと言われている代物であり、加奈子は一度だけ使った経験があった。
いずれも女性を責めるための卑猥な性具ばかりである。
加奈子は思わず絶句してしまった。

阿久原が加奈子の表情を覗き込むようにしてうかがっている。
まるで獲物を追い詰めた野獣のように目をギラギラと光らせて。

「どれもこれも好みのモノばかりで困るてか?」
「そんなことありません・・・全部嫌です・・・」
「嘘ついたらあきまへんで。全部好みやちゅうて顔に書いた~るがな。がははははは~。」

横から園木が提案した。

「社長。奥さんは潮を吹いた後だし、入れて欲しくて、入れて欲しくてたまらないんじゃないですかね?ここは一気に大型バイブで責めませんか?」
「いやいや、大型バイブは後や。それより、天井から吊るされて、疲れたはるやろからマッサージしたげるのが一番の心遣いや。ぐふふふふ。」
「あ、そうですね!さすが社長!美人には優しいや!」

阿久原はマッサージ型のバイブレーターを手に取った。
スイッチが入り先端の円盤部分がブルブルと振動し始めた。
バイブレーターが加奈子の股間に近づいた。

「いやっ・・・や、やめてっ・・・!」

(ヴィィィィィィィィ~~~~~~~ン!)



第10話


最初に触れた箇所は太股の内側であった。
女性にとって太股の内側は、首筋と同様に性感帯の多く密集した箇所である。
軽く触れられただけでもすぐに感じてしまうツボと言えよう。
円盤型のバイブレーターは間断なく加奈子に振動を伝えた。

(ヴィィィィィィィィ~~~~~~~ン!)

「あぁ・・・・・・」

加奈子はむっちりとした足をもじもじとさせている。

「どや、気持ちええやろ?」
「そ・・・そんなこと・・・ありません・・・」
「ほんまかいな。がはははは~」
「あぁぁぁ~・・・」

(ヴィィィィィィィィ~~~~~~~ン!)

円盤は一所にとどまらず、ゆっくりと旋回しながら位置を変えていく。
次第に上へ上へと移動し、加奈子の最も敏感なゾーンへと近づいていった。

「いやっ・・・・・・」

(ヴィィィィィィィィ~~~~~~~ン!)

振動が足の付根に達した時、加奈子はくぐもった声を漏らした。

円盤がわずかに移動すると、加奈子は突然拒絶の言葉を発した。

「あぁぁっ・・・だめっ・・・だめっ・・・いやぁ!そこはだめぇ・・・!」

円盤が到達した箇所はクリトリスであった。
女性にとって最も鋭敏な箇所を、下着も着けず責められたから堪らない。
加奈子はうめき声をあげ身体をびくつかせた。

「やめて!お願いです!そこはいやっ!」
「まあ、そんな遠慮せんでもええがな。」

(ヴィィィィィィィィ~~~~~~~ン!)

天井から吊るされた不自由な姿であっても、あまりの刺激の強さに、思わず膝を閉じ合わせ円盤を拒もうとしてしまう。
腰を引いて円盤を避けようとする加奈子を、園木が後から取り押さえた。

「ひぃぃぃぃぃぃ~~~~~~!!いやぁぁぁぁぁ~~~~~~!!」

阿久原は園木に指示をした。
それは加奈子にとってさらなる屈辱であった。

「奥さん、さっきから足を閉じよう閉じようとしたはるから、いっそ、閉じれんように片足を吊るしてあげなさい。」
「はい、社長。」

園木はにんまりと笑いながら、すぐにロープを用意した。

「何するの!?もうやめてっ!」
「奥さん、せっかくバイブでええ気持ちにしたげよと思てるのに、脚を閉じてじゃましはるから、じゃまでけんようにしたげますわ。がはははははは~~~」
「冗談はやめてください!」
「その怒った顔がまたええなあ。」

園木が作業している間、阿久原はバイブ責めを中断し、加奈子の顎を指で摘まんだりしながらもてあそんだ。

「なんで私にこんな酷いことを・・・」

加奈子はしくしくと泣き出した。

「恨むんやったら、借金をした旦那はんを恨むんやなあ。」
「ひどい・・・」
「そんなこと言うたかて、そういう条件を承知のうえで旦那はん、ハンコを押しはったんやさかい、しゃあないんちゃいまっかあ?」
「・・・・・・」

まもなく天井の梁からロープが垂れ下がり、その先端が加奈子の左足大腿部に結わえられた。

「やめて・・・」

悲壮感漂う加奈子の訴えも黙殺され、左足はぐぐっと吊り上げられていった。

「いや・・・恥ずかしぃ・・・」



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