第6話「酔い醒めカップル」

「うぃ~、ちょっと待てよ、やっぱり夢かも知れねえな」

 突然の幸運が降りかかった男は夢かどうかを判断するために頬を抓ってみた。

「いてえっ!やっぱり夢じゃねえ!」

 男は小躍りして目前の肉裂をペロペロと舐め始めた。

◇◇◇

「いやぁ~~~!!やめて~~~!!」

 尋問時耐えに耐えたイヴであったが、予告もなく秘所を舐められては堪らない。
 艶めかしさを含んだ声が夜のしじまを引き裂いた。
 これには立哨中の執行官も落ち着いていられない。

「おい、どうしたんだ!?」
「もしかしたら外で何か起きたのかも知れない。ちょっと確認してくる!」

 執行官の一人が慌ただしく部屋を出て行った。

◇◇◇

「うめえな~、じんわりと蜜が溢れてくるじゃねえか。うぃ~、こりゃ酔い醒めの水より美味いぞ」

 男は両手でしっかりと双臀を抱え肉裂をこそぐように舐めた。
 男の髭がイヴの微妙な個所に触れるため、イヴはくすぐったくて腰をよじろうとするが、しっかりと腰部が壁に填め込まれていて避けることができない。

 窓越しに監視を続けている執行官の二人がじっと成り行きを見守っている。

「あの酔っ払い、本腰を入れて割れ目を舐めだしたぞ」
「壁の向こう側なので様子は分からないが、あれだけ激しく舐められたら女はよがっているんじゃないか?」
「見ているだけでこっちまで興奮してきたぞ」
「うん、確かに目の毒だよ。だけど俺たちは仕事中だから毅然としてなきゃな」

 そこにイヴのそばで立哨していた執行官がやってきた。

「なるほど、酔っ払いが現れて舐め倒してるって訳か」
「女の様子はどうだ?」
「うん、拷問でも音を上げなかったのに、突如『やめて~~~』とか騒ぎ出したもだから、驚いたのなんのって」
「へえ、痛みは我慢できても、快感は我慢できないってことか」
「そのようだ」

 後方で執行官に監視されているとも知らず、男はひたすら舌技に励んでいる。

「うぃっ、な、なんと!いつのまにかおいらのモノがギンギンになっちまってるぞ!」

 男はおもむろにズボンを脱ぎだした。

「ちょうど頃合いの高さにマンコがあるし、入れて欲しそうに尻を突き出しているし、女に縁がねえおいらに神様がプレゼントしてくれたんだな。これは入れるしかねえな~!」

 御託を並べながらズボンを脱いでいる男に、執行官たちは呆れて苦笑いを浮かべた。

「神様のプレゼントだってさ。何とめでたい男だ」
「まあ、いいじゃないか。血生臭い刑を執行するより平和だし」

 ズボンを下ろしにょっきりと立派なものを取り出した時、回廊の向こうから一組の若いカップルがやってきた。

「キャッ!あのおじさん、オチンチン出してる!」
「うわっ!まじで壁尻の女とやるつもりなのかな!?」
「見て~、すごく大きくしちゃってる!ステファノ、もしかしたらあなたより大きいんじゃない?」
「そんなことないよ。俺の方が断然でかいよ」
「じゃああのおじさんと並んで見せてよ」
「おまえバカか、そんな恥ずかしいことできるわけないじゃないか」
「バカって何よ!」

 カップルが突然喧嘩を始めた。
 男根を膨らませ今まさに壁尻に挑もうとしている男の至近距離で、カップルが口論を始めたのだから堪ったものではない。
 雑音が聞こえてくる環境だと注意散漫となり、男はいつの間にか集中できなくなってしまっていた。
 集中を切らしてしまった男の末路は儚くもただただ委縮が待つのみ。
 おまけにしらけたせいか、ついでに酔いまで醒めてしまったようだ。
 男はがっくりと肩を落とし、壁尻の前から無言で立ち去ってしまった。

「あれ?おじさん、いたす前に帰っちゃったよ……」
「俺たちがやいのやいのと騒いだからじゃない?」
「男性ってそんなにデリケートなものなの?」
「案外デリケートだよ」
「そうなの?悪いことしちゃったね」
「じゃあ、代わりに俺が壁尻に挑戦しようかな?」
「なんでそうなるの?ステファノ!それって本気!?」
「じょ、冗談に決まってるじゃないか」
「私という素敵な彼女が居ながら。許せない!」
「ごめんごめん。冗談だって言ってるじゃないか」

 カップルの会話に聞き耳を立てていた執行官は笑いを堪えている。

「酔っ払いのおやじ、惜しかったな。今頃家に帰って悔しがってるだろうな」
「受刑女、酔っ払いに犯されず命拾いしたな。だけどまだ二日以上あるから、このまま何も起こらないということは無いよ」
「そうだな、必ず何か起こる」
「それを目の前で見られる俺たちは幸せ者だな」
「今回の刑は奇抜だし俺たちも楽しめるからな」
「じゃあ、ぼちぼち俺は持ち場に戻るよ」

 執行官の一人が部屋へ戻って行った。
 回廊の執行官が再び二人となって、その直後のこと。

「おっ、しゃべっているうちに次の通行人がおいでなすったぞ」
「まだ若い男だな。二十歳ぐらいかな」
「興味深げに立ち止まって壁尻を見つめているぞ」
「何か起こりそうな予感がするぞ」
「もしかしたらあの男が壁尻に挑むかな?」
「お!ズボンの前を押さえているぞ」
「かなり興奮しているようだな」
「いよいよか?」

 二人の執行官は若い男の行動をじっと見守った。



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