第2話

 イヴはまるで貴族が住むような立派な館で歓迎を受けていた。
 驚くべきことにロキにはおびただしい数の配下がいた。
 配下とは言っても醜怪な容貌の怪物や骸骨戦士ばかりであった。
 そんな中、イヴのそばに一人の女がやって来た。
 一見美女に見えたが笑うと歯が尖がっており、およそ天界や地上に住む女たちとは掛け離れていた。
 背中には黒い羽根が生えており、名前をリリスと言うらしい。
 リリスは見慣れないイヴに何やら興味があるようだ。

「あなたは人間という生き物なんだってね?ロキから聞いたよ。それにしてもきれいだね。私も魔界では美人と言われているけど、あなたには負けるよ。ところであなた、ロキの妻になるんだって?彼に愛されたのは幸運だよ。いずれロキはこの魔界を支配する。あなたは魔界の王のお后ということになるのよ。私だって彼の奥さんになりたかったけどさ、おほほほほ~」
「ロキを愛しているの?」
「うん、一頃は彼の恋人だったの。でも捨てられちゃった……」
「そうなんだ」
「ねえねえ、イヴさん、いいこと教えてあげようか。あまり大きな声では言えないけど、ロキのエッチのテクニックはすごいのよ。だって彼は六本の腕を持っているでしょ?だから指の数は三十本。三十本の指すべてを駆使して攻めてくるのよ。他の魔人や怪物たちには絶対に真似できないよ。それに指先がすごく器用なんだも~ん~、うっふ~ん♪」
「そ、そうなんだ……」

 リリスの生々しい話にイヴは思わず顔を赤らめた。
 すでにアダムに存分愛され開発された肉体ではあったが、同じ女性のリリスからこうまで聞かされると、わずかながら興味が湧いても不思議ではなかった。
 リリスはなおも熱弁をふるう。

「六本の腕をどう使うかはその時によって違うんだけど、私が一番好きなのはね、二本の腕で胸を揉み、一本は口の中へ、一本はクリトリスを撫で撫で、一本はヴァギナを掻き回す、そして最後の一本は身体全体を愛撫してくれる……あっ、でもこれはあくまで私の好みだけどね。もうこれだけされるだけで腰が抜けそうになっちゃうの。もちろんその後のエッチは最高だけどね。ロキのアレは先端だけじゃなくて中間も膨らんでいるのよ、まるで瓢箪みたいに。つまり一回の挿入で二回楽しめるってわけ~♪得した気分よ~。エヘヘ、すごいこと話しちゃったあ。でも今夜あたりイヴさんも味わえるかも知れないよ~ん。うふふ……何だか嫉けちゃいそう~」

 リリスからこうも明け透けに話されてしまうと、イヴとしては赤面するいとまもなく、ただ唖然とするばかりであった。
 リリスの隠し事のない開けっ広げな性格にはとても好感が持てた。
 魔界とはいっても住人全てが悪人という訳ではなさそうだ。
 魔界にも善人がいるのだ。天界や地上にも悪人がいるのと同じように。

◇◇◇

 イヴはロキに薦められて入浴をしていた。
 ただ一人でのんびりとという訳にはいかず、付き人の闇の妖精たちが世話をしてくれている。
 他人に身体を洗ってもらったことなど一度も無いのに。いや、正確に言うとアダムに洗ってもらったことは何度かあったけど。
 闇の妖精は天空の妖精と比べても外見はほとんど変わらないが、何故か羽根だけが真っ黒だった。
 彼女たちは丁寧にイヴの身体を洗う。丁寧に洗ってくれるのはありがたいが、秘所の中まで洗おうとするのには戸惑ってしまう。

 風呂から上がったイヴが鏡に向かって髪を梳いていると、室内にロキが入って来た。
 イヴの肩に手を置いて静かに語った。

「イヴ、準備はできたか?今夜はそなたに全身が湧き立つような快感を教えてやるぞ。ふっふっふ」
「お願いです!私をアダムの元に帰らせてください!」
「何をいまさら。もう奴のことは諦めろ。そなたは私の妻になるのだ。ハッハッハ~!」
「それだけは許してください!」
「そんな世迷い言は聞く耳を持たぬわ。化粧はもう良い、そなたは十分に美しい。さあ、寝所に行くぞ」

 そう告げるとロキはイヴをお姫様抱っこで寝所へと連れて行った。
 途中イヴも手足をばたつかせ必死に抵抗を試みたが、ロキの前では無力に等しかった。
 ロキは豪華なベッドの上にゆっくりとイヴを下ろした。
 仰向けになったイヴの四肢を四本の手でしっかりと押さえる。
 イヴは大の字にされてしまった。
 残る二本の手は愛撫用だ。

「ふふふ、手が六本あると言うのは便利なものだ。戦いの時は剣が三本、盾が三枚使えるからな。またこのように美女と交わる時も、人間の男の三倍愛撫をしてやれるからな。故にそなたの彼氏は絶対に私に勝てぬわ。がっはっはっはっは~」

 一度も会ったことがない人間のアダムに対し、過剰とも思えるほどの対抗心を燃やすロキ。
 裏を返せばそれほどまでにイヴへの思い入れが強かったと言えるだろう。

 ロキはイヴの身体中を隈なく愛撫した。
 人間の男の指よりもつるつるしている。それもそのはず、ロキの指に指紋が全くなかった。
 イヴの首筋や胸、腹部、腰や尻、それに最も敏感な部分にまで指は伸びる。
 二本の手は器用な動きで敏感な部分をまさぐる。
 一本はイヴのうっすらとした若草をかき分け、色素の薄い渓谷を左右に押し開く。
 渓谷の上部には小さな実がきらりと濡れ輝いている。
 ロキは小さな実を指先で摘まみやさしく撫でてみた。



前頁/次頁















 COVER

自作小説トップ

トップページ


inserted by FC2 system