『綾 長安人中伝(ちょうあん じんちゅうでん)』
(4頁)

Shyrock作

人中とは「武将の中の武将」を意味します
本編は三国志の二次作品となっております


球ちゃんが当小説用に描いてくれたイラストです




第31話

「はい。紐には薬をたっぷりと塗りこめてありますので、紐が粘膜に付着しますと、数分間のうちに効果が現れてきます。身体が熱く火照りムズムズし始め、情熱がほとばしり、心ときめき、吐息も荒くなってきます。目にははっきりと渇望が現れ、男根を激しく求め始めます。淫乱な女になること間違いございません」 「ほほう~。なるほど。それは面白いではないか。おい、皆の者、聞いたか。この純な綾が男を欲しがる淫乱女に変わるそうだ。しっかりと見届けてやるんだぞ。ぐわっはっはっはっはっ~~~!」
「はい、将軍!耳の穴をほじくってしっかりとお聞きしました!」
「わっはっはっはっは~~~!」
「がっはっはっはっは~~~!」

 辺りは爆笑が渦巻いたが、その渦中には陰部に染みてくる薬効に脂汗を滲ませ苦悶の表情に歪む綾がいた。

「あああっ・・・い、いやぁ・・・紐を緩めて・・・お願い・・・ああっ、か、身体が熱い・・・ああっ・・・」

 綾の前方で紐を操る女官がにやりと笑って、紐をグイと引き絞った。

「ああっ!」

 くっきりと割れた桃色の肉の狭間にグイグイと紐が食込んでいく。
 後方の女官も前方と呼吸を合わせ、紐をグイグイと引き絞る。

 綾の吐息は激しさを増し、滲んだ脂汗はたらりたらりと床に滴り落ちた。

「どうだ?気持ち良くなってきたのだろう?」
「気持ちよくなんかありません!はぁはぁはぁ・・・ああっ・・・」
「ふふふ、嘘をつけ。男が欲しくて欲しくて堪らないのだろう?」
「欲しくなんかありません!」

 綾は困惑に満ちた表情から、一瞬目を吊り上げ怒りの表情に変化させたが、それもつかの間のことであった。

「ぐふふ、擦って欲しいのだろう?」
「いやぁ・・・はぁはぁはぁ・・・そんなこと・・・ありません・・・あ、熱い・・・はぁはぁはぁ・・・」

 張宝はうつむいている綾の顎をつかみ、グイと押し上げて、底意地の悪い質問を続けた。

「それとも太いマラを挿し込んで欲しいのかな?」
「いやっ・・・そんないやらしいこと・・・言わないで・・・ください・・・ああっ・・・熱い・・・ああっ・・・」

 張宝は口元を淫靡にほころばせながら、前方の女官を退け、自ら紐の前後をグイグイ引き上げた。

「くはぁ~~~あ、いやぁ~~~~~~~~あ!!」


第32話

「どうだ?薬が効いてきたのだろう?どうなんだ?」

 快楽の淵に立たされながら、快楽の底に身を沈められないのは、もどかしくもあり、また一種の苦痛かも知れない。
 綾は滴り落ちる汗を拭いもできない状態で、眉間に皺を寄せて、小さくうなずいた。
 張宝はニタリと笑いながら、綾の耳元で囁いた。

「ふふふ、そうか、効いて来たか。太いマラを挿し込んで欲しいのだろう?ええ、どうなんだ?」
「はぁはぁはぁ、そ、そんな事・・・ありません・・・」

 綾は肉体を激しく襲う淫靡な欲望を堪えて、精一杯の抵抗を示した。
 いかに辱めを受けようと、身を引き裂かれようと、敵の軍門には決して下るものか。
 そんな強い意思だけが今の綾を支えていた。
 恋人の呂布が殺害されたと言う事が、もしも事実だとしたら、なおさら許せるはずがない。
 拘束された不自由な身であっても、最後の血の一滴までも抵抗しようと強く心に誓った。

 「太マラは残念だが兄者が帰ってくるまではお預けだな。だが代わりにこれを咥えさせてやろう。イヒヒヒヒ」

 張宝は女官の差し出した木箱から、黒光りした巨大な張型を取り出して、綾に見せつけた。
 大きいだけではない、女性を最も喜ばせることのできる『うわぞり』にしつらえてあり、しかも先端のエラ部分が異常なほど張っている。

 ところが、張宝は巨大な張型を綾にあてがうことはしなかった。 何を思ったか、綾の3尺ほど前方に丸太棒を垂直に立て、張型を垂直に固定してしまった。
【紅蜘蛛】の効果がさらに威力を発揮し始めたようで、綾は息を荒げ、押し寄せてくる淫らな欲望に身を震わせていた。

 そんな中、張宝は2人の兵士に合図を送った。
 兵士はうなずいて握っていた長槍を綾の白桃のような臀部に向けた。
 尖った2本の先端は悶え苦しむ綾の臀部に触れた。

(チクリ・・・)

「いたいっ!」

 プリプリとした桃尻から、かすかだったが、赤いものが滲んだ。



第33話

 綾の前では、女官がまめまめしく動いている。
 例の媚薬【紅蜘蛛】を綾の直ぐそばから、前方にニョッキリとそそり立つ張型の真下まで、丹念に塗り込めているのだ。
 しかも紐に塗り終えた後、驚いたことに張型にまで【紅蜘蛛】を塗り始めた。

 溢れ出そうなほどの悶えを懸命に堪える綾は、そんな光景を呆然と眺めていたが、それも束の間、またもや後方から槍での催促が始まった。

「さあ、歩け!前に進むんだ!」

 後から槍で突かれると、綾はやむなく股間に食込む紐を辿って、よろよろと爪先立ちで歩いた。
 紐が割れ目に食込み、さらに媚薬が塗布される。

「あぁ~、どうしよう~、あああ、もう狂い死にしそう~・・・お・・・お願い・・・もう、もう許してぇ~・・・」

 狂おしいほどの情欲にこけそうになりながらも、後方の槍にせかされて一歩一歩と進んだ。
 苦悶の表情を浮かべる綾を見つめる周囲の兵士達は、喜色の笑みを浮かべ、手は股間を撫でていた。
 多くの兵士の股間はもう隆々と盛り上がっている。
 中には自慢のイチブツを剥き出しにして、シコシコと擦り始める者もいたが、それを誰も咎めようとはしなかった。
 それもそのはず、一糸まとわぬ裸身で細い紐を支えに情欲の舞踏を演じる綾に、全員の視線が注がれていたのだ。

 玉の汗を滴らせ、喘ぎながらも、綾は隆々とそそり立つ張型の直ぐそばまで近づいていた。
 なおも槍が催促する。
 綾は前方のおぞましいまでの張型を見つめ、顔をひそめた。
 いくら欲望に悶えても、大衆の前で、特大の張型を咥え込むわけにはいかない。
 綾は「それだけは許して欲しい」と張宝に懇願した。
 当然のように張宝は首を横に振った。
 さらに槍が催促する。
 綾はがんばった。
 例え鋭い槍に肉体を貫かれようと、張型を咥え込むのだけは拒もうとした。

 槍が綾の臀部に先程よりも食込んだ。

「いたいっ・・・!」

 綾は思わず顔を歪めた。
 張宝が口を開いた。

「この女、死ぬ気だな。仕方ない。おい!両方から抱え上げて、張型の上に乗せろ!」

 綾は両側から兵士に軽々と担ぎ上げられた。
 泣き喚き拒絶をする綾を待ち受けるものは、天井を向きそびえる大型の張型であった。



第34話

 綾は脚をばたつかせて拒もうとしたが、張型はすでに直下に迫っていた。
 綾を抱える兵士の1人がニヤニヤ笑いながら呟いた。

「さあさあ、特大のマラはもう真下だよ。ほれ、もっと脚を開いて皆さんに見てもらわないと」
「いやあ~~~!!」

 男達は固唾を飲んで綾陵辱の光景を見守っていたが、いよいよ挿入の場面ともなると、いつしか、一歩一歩と綾のそばまでにじりよっていた。

「おい!前のヤツ、見えねえじゃないか。もっと離れろ!」
「うるせえ!」

 中には、舌なめずりをしたり、だらしなくよだれを垂らして者さえいる。

 張型は薬剤を塗り込められててらてらと光っている。
 そしてついに悪夢の瞬間が訪れた。
 大股開きということもあって、ぴったりと合わさった陰唇は少し開き、内部の桃色がちらりと覗いていた。
 しかし、特大の張型を咥え込むにはあまりにも狭過ぎる。
 痛々しくさえ思われた。

「きゃあ~~~~~~~!!いやあ~~~~~~~~~!!」

 両側の兵士が綾の背中と腰を押さえつけ、むりやり、張型を咥え込まそうと試みるがなかなか入らない。
 そこへ、女官が進み出て、綾の陰唇の左右を摘みグイと広げた。

(ズズズ・・・ズニュ・・・)

「ぎゃあ~~~~~~~~!!いやあ~~~~~~~~!!」

 張型の先端が少し隠れた。

「少し入ったようだな。よし、もっと咥え込むのだ!」

 兵士も意地になっている。
 さらに綾を下方へ押さえつけた。

(ズン、ズズズ・・・ズン・・・グニュ・・・)

「いやあ~~~~~~~~!!やめてぇ~~~~~~~!!」

「おお!先端が完全に埋没したぞ!よし、幹まで咥えるんだ!」

 先端より細いと言っても、幹もかなりの太さだ。
 ふつう女性がこのような特大のマラを持つ男性に出会って、もしも交わったとしたら、おそらく気絶するだろう。
 信じられない太さの張型を咥えさせられた綾は泣き叫んだ。
 快楽と苦痛が入り混じった奇妙な感覚が綾を襲った。

 さすがにこの太さのものを挿入されると、容易にピストンはできない。
 それでも両側の兵士と他に2人加わって、4人で綾の腰を上下動させた。

(グリュン・・・グチュ・・・ヌチャ・・・グチュン・・・)

「くはぁぁぁぁぁ~~~~~~~~!!ひぇぇぇぇぇ~~~~~~~~!!」

(ズリュン・・・グリュン・・・ヌチョ・・・グチョン・・・)

「「いやぁぁぁぁぁ~~~~~~~!!やめてぇぇぇぇぇ~~~~~~!!」



第35話

(グッチョン、グッチョン、グッチョン)

 強引に張型を挿し込まれて、ひたすら拒絶の姿勢を貫いてきた綾であったが、【紅蜘蛛】の効めには抗うことはできず、ついには艶やかな嬌声を漏らし始めていた。

「あああ~~~あああ~~~、お、お、お願い~~~・・・許してぇ~~~・・・も、もう・・・はぁはぁはぁ・・・気がぁ・・・気が狂いそう~~~、ふぁあぁ~~~~~」

 兵士2人が綾を抱え張型への突き刺し役を演じ、その横で女官と別の兵士1人が綾の乳房を揉む等愛撫の役目を担った。
 綾の秘孔に食込む張型はすでにおびただしい蜜液でびしょびしょに濡れていた。
 流れ出たしずく張型を伝い、床へと流れ落ちた。

「さあ、玉印の在り処をいうのじゃ~!」
「し、し、知りません~・・・ほ、本当に知りません~・・・はぁ~~~ふぁあ~~~ひぇえ~~~はふぅ~~~」

(ズンズンズンズン!ズンズンズンズン!)

「このままだとお前は本当に狂ってしまうぞ!?いいのか!?早く吐くのじゃ!」
「知らないものは・・・知らないものは言えません~・・・」
「しぶといやつじゃ、張型にもっと薬を塗るのじゃ!」
「はい!」


 呂布とともに黄巾の城に向かった一団は、今、狭い渓谷を通過しようとしていた。
 その時、谷の両方からガラガラと大きな音を立てて、大量の岩石が転がり落ちてきた。

「うわ~!岩だ!岩が落ちてきたぞ~!!」
「くそ!!は、謀られたか!?」

(ガラガラガラガラ~~~~~!!)

「ぎゃあ~~~!!」
「た、助けてくれ~~~!!」
「ぐわぁ~~~!!」
「うわ~~~!!」

 まさに阿鼻叫喚。
 呂布たちの通りかかった深い谷は、一瞬にして地獄絵図と変わってしまった。
 兵士達は絶叫とともに次々に岩石の下敷きになっていった。

「むむっ!!黄巾の仕業か~~~!!許さん~~~!!全速力で突っ走るのだ~~~!!」

 呂布は岩石がなだれ落ちてきたのを見て、ありったけの声で号令を発した。
 呂布は馬に激しく鞭を打ち谷間を全速力で駆け出した。
 それに続けとばかり10数名の武将も呂布を後を追ってどうにか難を逃れた。
 馬には乗っていたが逃げ遅れた者、そして歩兵達は哀れにも逃れるすべもなく谷間の露と消えていった。

 呂布と10数名の武将を乗せた馬はひたすら走った。
 後方では岩石が地面を叩きつける轟音が激しく鳴り響いた。



第36話

「走れ~~~!!走れ~~~!!黄巾の城目指して突っ走るだ~~~!!」

 呂布が赤兎馬に鞭をくれると、瞬く間に後方の馬を10馬身以上離してしまった。
 天下に鳴り響く名馬赤兎馬に敵う馬は到底いなかった。
 どんどんと後方の武将達が遅れを取っていく。
 先頭を走る呂布が雷のごとく号令を発するが、全く着いて来れない。

「お前達、早く着いて来ぬか~~~!!」
「将軍!!我らも一生懸命駆けてはいますが、所詮、赤兎馬を操る将軍には敵いません!ですが、必ず着いていきますのでご安心ください~!!」
「よし分かった~!とにかく私に着いて来い!!いいな~~~!!」
「承知~~~っ!」
「必ずや~~~っ!」
「我らが無事敵城に辿り着き、敵を木っ端微塵に砕き、綾を救出する事こそが、亡くなった者達への鎮魂歌じゃ~~~!!」
「ごもっとも~~~!」
「仰せのとおり~~~!」
「我々も将軍に負けず暴れますぞ~~~!」
「おお!その意気込みじゃ~~~!!」

 10数騎は休む間もなく駆け続け、敵城を目前に控えるに至った。

 ちょうどその時、城から最も近い林を巡回していた黄巾の警備兵5名に遭遇した。

「ん?お前達は・・・?もしや・・・!もしかしたら呂布軍ではないのか!?」
「ふふふ、そうだ。そのもしもだが?」
「や、やっぱり!むむむ!こやつらを切ってしまえ~!」

 5人の中の隊長らしき男が号令を発した。
 馬上の武将同士の対決の様相を呈したが、馬群から呂布が躍り出て来た。

「こんな雑魚は私1人で十分というものだ~~~!」
「な、なんだと!?もしかしてお前があの有名な呂布か!?」
「そうだとも!ええい、面倒だ!5人まとめて掛かって来い~~!」
「なんだと!?オレ様のやいばを受けてみろ!とりゃあ~~~!!」

 黄巾警備兵の剣は空を切った。
 だが呂布の剣と一度として合わせることなく、呻き声とともに馬上から崩れ落ちた。
 次から次と掛かり来る敵を、呂布は配下の手を借りることなく、一刀で切り捨ててしまった。
 一瞬にして、屍と化した警備兵、実に呆気ない幕切れであった。

「さて、邪魔者は片づけた。城に向かうぞ」

 呂布はきっと眉を上げた。

「将軍、しかしこのまま突き進んでも、この少人数で城門を打ち破る事は敵いますまい」
「ではどうすればいいのじゃ」
「私に策がございます」

 参謀の陳宮が馬上の呂布に近づき、そっと耳打ちをした。

「そこで、将軍が敵兵を一刀で倒し・・・・・・・・・・という方法が上策かと・・・」
「ふむ・・・ふむふむ・・・なるほど。よし、その手で行こう」



第37話

 城の玄関は当然ながら守りが最も硬固である。
 正面の他にも出入り口が数ヶ所あり、そこから進入する事も考えたが、敵もその点は十分に警戒しているだろうし厳重な警備体制を敷いている事が予測された。
 各出入り口に門兵が立っているため、仮に門兵を倒したとしても騒ぎが城内に聞こえ敵の援軍が駆けつけ入り乱れての乱戦となることも考えられた。
 そうなれば囚われの身となっている綾の身が非常に危険な状態となるだろう。
 そこで採った作戦は、敵兵に成りすまし堂々と正門から入ることであった。
 呂布達は先ほど倒した巡回兵の衣服を剥いで身にまとった。
 14名分の衣服が無い分は、泥を塗りたぐってごまかすことにした。

 呂布は特別に大柄なので、かなり窮屈そうである。

「将軍、よくお似合いですな」
「嘘をつけ。手足がはみ出ているではないか」
「はぁ・・・確かにそう言えばそのようで。ご無礼お許しを」
「まあ、良いわ。よしこれで正面から堂々と入れるぞ。皆の者、絶対にびくつくな。黄巾の戦旗を高々となびかせ、やつらになったつもりで何食わぬ顔で通リ過ぎるのだ。分かったか」
「はは~!承知しました!」
「はい、将軍!よく分かりました!」
「御意!」

 落石地獄から難を逃れた精鋭達14名は、呂布を先頭に城門に向かった。

 城門の左右にはふたりの門兵が立っている。
 呂布の乗る馬は少し後退し、入れ替わって陳宮が門兵の前に出た。
 大柄な呂布だとあまりにも目立ち過ぎるのと、もしかすれば顔を知られてる危険性もあるため、安全を期して陳宮が隊長の役割を演じた。

「巡回ごくろうさまでした!」
「お前たちも門の警護ご苦労である。では門を開けてくれ」
「はい、少々お待ちください」

(ギギ~~~)

 門兵が門を開ける間、もう1人の門兵が陳宮に話しかけてきた。

「特に怪しき者はおりませんでしたか」
「安心しろ。キツネ一匹見掛けなかったぞ」
「そうですか。それなら安心ですなあ」
「お待たせしました。では、どうぞお通りください」
「うん、ごくろう」

 陳宮を筆頭に呂布達は敵門を難なく潜り抜けた。

「おい、巡回兵ってあれほど大勢いたか?」
「いつもは確か5人ぐらいだったと思うんだが、最近は呂布を警戒して警備を強化しているのかも知れないな」
「ああ、そうかもな」
「おい、次の休憩は何時からだ」
「え~と・・・」

 門兵は大して疑う様子もなく、そのまま警護に就いた。



第38話

 張宝や主だった武将達は綾が囚われている部屋に集結していた。
 もちろん城内には多くの兵士が任務に就き、中には剣や槍の稽古に励む光景なども見られた。
 しかし、黄巾の服を身に着け、さらには黄巾の旗をなびかせて堂々と進む呂布達を、よもや敵兵と思う者は1人としていなかった。
 張宝がいるのは城郭のどの辺りか、そして綾が捕らえられてる場所はどこなのか・・・。
 本来は敵城ゆえに見当もつかないところだが、幸いなことに、侵入した14人の中に、以前、黄巾に囚われたことがあり脱走した武将が1人いた。
 彼は拷問を受け片目を失いはしたが、脱出逃走し成功し今に至っている。

「この先の道案内は私にお任せください。例え囚われの身であっても、私には一度通った道や通路をつぶさに記憶し、地図を作ることもできる能力があります。 牢獄以外に張宝のいる部屋にも通されて取調べを受けましたし、拷問部屋の場所も憶えております。」
「ほほう、これは頼もしいやつじゃ。では先導してくれ。ところでそちの予測では綾はどこにおると思うのじゃ」
「はい、牢獄、拷問部屋、張角、張宝の部屋・・・このいずれかだと思います」
「ええい!それでは予測にはならぬ!全部回らなければならないではないか!それぞれ回っているうちに綾が殺されるかも知らないのだぞ!」
「ははぁ、申し訳ありません。大変言い難いのですがズバリ申し上げますと」
「うん、構わぬ。言え」
「拷問部屋かと思います」
「何!?綾が拷問を受けておるというのか!」
「呂布将軍、気を鎮めてお聞きください」
「うん」
「張角、張宝ともに好色では大変有名な男達でございます。しかもかなり変質者と聞き及びます。つまり、通常の手段ではなく、性的ないたぶりを・・・」
「ええい!もう良いわ。その先は言うな!よし、分かった。では皆の者、今から拷問部屋に向かう。あくまで堂々と進むのだ。黄巾の兵になり切るのだ。ただし見つかった場合は、最後、切って切って切りまくれ。良いか。ただし・・・」
「ただし?」
「綾の身の安全は最優先しろ。良いな」
「ははぁ、承知しました」
「分かりました」

 14人の精鋭たちは馬から降り、城内の中心部へと進んでいった。
 廊下ですれ違う兵も何食わぬ顔で会釈をしてくるだけであった。

 長い廊下を進み、正面の右側に張角と張宝の部屋が並んである。
 左に曲がってさらに下りの階段を降りると牢獄と拷問部屋へと繋がっている。
 呂布達は廊下の突き当りまで行くと、ちらりと右に目をやったが、迷うことなく通路を左へと曲がった。

 綾の姿を見るまでは、できるだけ敵との衝突は避けたい。
 呂布達の想念は幸いにも叶えられて、途中、敵兵と遭遇することはなかった。
 そしてついに、地下へ下る階段の第一歩を踏んだ。



第39話

 地下に降りると鉄格子に遮られた牢獄から囚人の影が見えた。
 呂布たちは万が一、綾がいることも考えて、牢獄の各部屋を隈なく覗いた。
 寝そべっている者もいれば、呂布看守と間違えて話しかけてくる者もいた。

「か・・・看守、飯はまだか・・・腹が減った・・・」

 格子の向こうから力の無いかすれた声が聞こえてきた。
 配下の1人が何か答えようとしたが、陳宮はそれを制した。

「余計な会話はやめておけ」
「あ、はい」

 呂布たちは牢獄を通り過ぎて、通路をさらに奥へ進むと、左右に扉が見えてきた。
 左側は倉庫と書かれている。
 右を見ると【尋問室】と書かれていた。

(ここです)

 先導役の兵士が呂布に目で合図を送った。
 呂布は静かにうなずいた。
 やっと綾の捕らえられていると思われる目的地に辿り着いた。
 だが本当に綾はここにいるのだろうか。
 もしかしたら、他の場所に閉じ込められているのかも知れない。
 それは一種の賭けであった。

 呂布は眉を吊り上げ、今にも先頭で飛び込もうとしている。
 陳宮は血気に逸る呂布を小声で諭した。

「この扉を蹴破り中に突入した場合、敵の人数にも寄りますが、おそらく激しい戦闘となりましょう。そうなると、囚われの身である綾様の身がいよいよ危なくなると思います」 「では、どうすればいいのじゃ」
「囮(おとり)が必要です」
「囮?どういうことだ?」
「詳しく説明をしている暇がありませんので、手短に申します。誰か1人が尋問室と牢獄との間で、わざと小火(ぼや)を起こし、大声で叫ぶのです。そうすれば、尋問室にいるであろう兵士達も慌てて飛び出し、小火の方に向かうでしょう。すると尋問室に残るのは当然、首領格の者と僅かな兵士だけということになると思われます。ただ、そのためには、我々のうち1人が犠牲にならなければなりませんが・・・」

 陳宮は苦しそうな表情で語り終えた。
 呂布も同様に顔を曇らせた。

「良い策だが1人でも犠牲は出したくない。その策はやめておこう」
「少々お待ちください。そのお役目、私にやらせてください」

 突如1人の若い武将が名乗り出た。
 呂布はいった。

「死ぬぞ」
「構いません。呂布将軍のお役に立てるのなら、一命投げ打ってでもお役目果たしてみせます」
「何という・・・」

 呂布は配下の自分へのあまりにも純粋な忠誠心に心を打たれ、目頭を熱くした。

「よし、わかった。その役目、お前に頼もう」
「ありがとうございます」
「しかし、お前を無駄死にはさせないぞ。尋問室突入組みは私を含めて10人で攻める。残りの3人は火の元に走った敵兵の背後に回りこみ彼を援護するのだ。よいか」
「はい、わかりました」

 囮を立てて、敵兵を分散させ、首領格の警護を薄くする。
 そこを一気に攻め落とすという策であった。
 こちらも本隊と別働隊に分散する分、危険性も高まるが、今置かれている状況では、最善策といえるだろう。

 作戦はすぐに実行に移された。
 囮となる若い兵士は松明を持って、呂布たちから離れていった。



第40話


 藁に火が点けられバチバチと音を立てて燃え始めた。
 囮の兵士は空かさず、大声を張り上げて火災が発生したことを告げた。
 これも作戦のうちだ。

「火事だ~!火事だ~!」

 大声を聞いて騒ぎ出したのは、看守よりも囚人達だった。

「大変だ!火事だぞ!」
「うわ~!火事だ~!おい!看守~!早く水を持って来てくれ~!」
「助けてくれ~~~!」

 騒ぎを聞いて慌てて駆けつけてきたのは2人の看守だった。
 囮の兵士が火点け人であることなど露にも疑っていない様子だ。

「おお!ほんとだ!火事だ!早く消さなくては!」

 囮の兵士は火元をこん棒で叩き、あたかも消火作業をしている素振りを見せている。
 看守達は狼狽しながらも、まもなく水桶を持って飛んできた。

 廊下での騒ぎは拷問室にいる張宝達の耳にも入った。

「張宝様!大変です~~~!!牢獄の方で火事が発生したようです!」
「なに?火事だと!?おい、お前たち!ここで鼻の下を伸ばしていないで早く消して来い!」
「はい!分かりました!」

 張宝と参謀格の僅かな武将を残して、多くの兵士達が廊下へと出て行った。

「おおっ!あそこで燃えているぞ!」
「看守達だけでは無理だ!おい!俺達も早く行こう!」
「くそ~せっかくいいところだったのになあ」
「ははは、火を消した後でまた楽しもうぜ。今は消火が先だ」

 綾をいたぶる愉悦にどっぽりと浸っていた兵士達であったが、まるで目が覚めたかのように真顔で失火現場へと急行した。

「おい!もっと水がないと消えないぞ!もっと水を汲んで来るんだ!」
「は、はい!」

 現場に駆けつけた兵士は、看守に水汲みを命じ、自分達は板で叩くなどして鎮火作業を行なった。

 廊下の曲がった所でそっと息を潜め、彼らの様子を窺う人影があった。
 参謀の陳宮が小声で言った。

「今、敵は消火作業に夢中になっている。背後を槍で一気に突くのだ。敵は10人ほどいるが、やつらには油断がある。 敵の3人を倒した後、槍をすぐさま引き抜いて、剣を抜こうとした次の3人の兵士を突く。そしてやつらがこちらを向いた瞬間を狙って、敵に成りすました仲間が切る。それから、水汲みに行った2人の看守も戻ってくるだろうから、油断するな。良いか。では行くぞ」

(そろりそろり・・・)

 陳宮達は掛け声をあえて上げず、黄巾兵の背後を一気に襲った。

「ぎゃ~~~~!!」
「ぐわぁ~~~~!!」
「げげぇ!!」
「うわ~!敵だ!」
「なんだと!?もしかしてこの失火は罠だったのか!?」

「今頃気づいても遅いわ!これを喰らえ!!」
「ぐわ~~~っ!!」

 黄巾兵は慌てふためきながらも、剣を抜いて応戦しようとした。
 その瞬間、彼らの後から別の刃がきらめいた。

「ぎゃあああ~~~!!」
「何だと!?貴様、敵だったのか!?くそ~~~っ!!」

 少数の兵力で多数に打ち勝つ。
 その最も効果的な手段は挟み撃ちである。
 敵に背中を壁につけさせず、中央に導くことも、兵法の基本といえるのである。
 まんまと罠に填まった黄巾兵は一矢報いる事もなく、陳宮達の前に倒れていった。
 まもなく水桶を下げ戻ってきた看守達も、さほど抗う暇も無く槍の犠牲となってしまった。



第41話

 陳宮率いる別働隊が戦いの火蓋を切るのとほぼ同時に、呂布達は、拷問室の扉を蹴破り中に突入した。
 部屋の中央には恥辱の限りを尽くされ、ついには失禁し、床に這い蹲り意識朦朧とする綾の哀れな姿があった。

 突然現われた呂布達を見て、血相を変えたのは張宝であった。
 いくら豪傑であっても大量の落石から逃れられるはずがない、呂布は死んだ、と高を括っていたから驚くのも無理はなかった。

「げげっ!お前は呂布ではないか!?なぜ生きている!?」 「愚か者め!お前達のはかりごと如きで死ぬ呂布様ではないわ!」

『呂布』という名前を耳にして、床に伏していた綾は顔を上げた。
 そして微かな笑みを漏らした。

「あ、綾っ!!」
「りょ・・・呂布・・・助けに来てくれたのね・・・」

 張宝は狼狽している。

「し、しかし、落石をいかにかわしたというのだ!?」
「俺様の愛馬が千里を1日で駆ける赤兎馬であることを忘れたか!岩が落ちる寸前に脱出したわ!」
「く、くそぉ~」
「しかし貴様のお陰で多くの可愛い配下を失ったわ!許さん~~~!!」

 呂布は眉を吊り上げまるで赤鬼のような形相で、敵中に飛び込んだ。
 普通であれば、敵の藻屑と消える無謀な戦いぶりと言えるのだが、そこは流石に呂布。
 2メートルを超える巨体で、しかも素早いと来ているから張宝達はその気迫に圧倒されてしまった。
 綾の元へひた走り、青龍刀を光らせた。
 綾のそばにいた武将は眉間を真っ二つに割られ、絶叫とともに絶命した。

 呂布の配下達も呂布に続けとばかりに一気に飛び掛った。

「黄巾め~!覚悟~~~っ!!」
「何を~!返り討ちにしてくれるわ~!」

 人数はほぼ同数。
 ふつうなら互角の戦闘と考えても良いのだが、気迫が違う。
 それに呂布の100人力は半端ではない。
 一太刀で敵方は即死する。
 バッタバッタと屍の山を築くのは黄巾賊であった。

「おのれ~~~!!この張宝様が簡単に倒せると思っているのか!これでも喰らえ!」

 張宝は竹篭から灰色の粉を一掴みし、呂布達目掛けてばら撒いた。
 灰が辺り一面に飛び散り、呂布たちの目に入った。

「うわ~~~っ!目潰しとは汚いぞ!!」

 呂布や配下の兵士達は目を押さえうずくまった。
 そして張宝が呂布目掛けて剣を振り翳したその瞬間思わぬ事が起こった。



第42話

「うぐっ・・・!うううっ・・・」

 突然、張宝が顔を歪ませうめき声を上げた。

「ううっ・・・お、おのれぇ・・・後ろから刺すとは卑怯な・・・一体何者ぉ・・・?も、もしや・・・」

 背後には張宝の背中に剣を突き立てた綾の姿があった。
 床に倒れていた兵士の剣を奪い取り、いつの間にか張宝の背後に回り込んでいたのだった。

「あなたに卑怯なんていう資格は無いわ!罠をかけて私を連れ去り、そして呂布達を待ち伏せし岩を落とし多くの人々を殺し、そして今、自分が不利となると、灰を撒くなどという卑劣な手を使う。許せないのはあなたよ!死んで!」
「むむむむむ・・・ううっ・・・おのれ~~~!!」

 剣で腹部を突き刺されて苦しむ張宝だったが、渾身の力を込めて綾を後方に突き飛ばしてしまった。
 そしてよろめきながらも、綾を切ろうと剣を振り上げたその瞬間。

(ズバッ!!)

 張宝の身体に鋭い閃光が走った。

「ぐわぁ~~~~~~!!」

 剣を光らせたのは呂布であった。
 振り抜いた後も瞼を押さえている。
 張宝の声だけで居場所を悟り、見事、張宝の胸板を貫いたのだった。
 まさに英傑ならではの離れ技と言えよう。

 張宝はすでに即死の状態であった。

「綾~~~!!大丈夫か!?心配したぞ!」
「呂布、助けに来てくれたのね・・・嬉しい・・・あっ、目が早く水で流さないと」
「それより綾、お前、今裸だろう。早く何か着ろ。残念ながらオレには見えないが、配下の者に見られるぞ」

 呂布の横にいた武将が呂布と同様に目を押さえながらポロリと呟いた。

「ご心配は無用です。ご覧のとおり私も目をやられ、綾様のお美しいお姿は見たくても見れません。むむむ・・・」
「まあ、大変、今すぐ目を洗浄しなくては。皆さん、待っててください。今すぐ水を汲んできますので」

 かくして、綾は無事救出され、呂布達とともに凱旋の途に着いた。
 幸い呂布達は目を少し傷めたが、大事には至らず、全ての武将の視力はまもなく回復した。

 綾と呂布は十分な静養を取ることもなく、帰ってまもなくベッドでもつれ合っていた。

「怪我がなくて良かった。本当に心配したぞ、綾」
「ごめんね、呂布・・・生きた心地しなかった・・・」
「そうだろうな。それにしてもヤツラにエロいことはされたものの、犯されなかったのが不幸中の幸いだったな」
「そうね、私もそう思う」
「でも太い張形で責められたんだろう?」
「うん・・・太かったあ・・・」
「むむむ!綾、気持ちよかったのか?」
「気持ち良いはずないよ~」
「本当か?」
「もちろんよ。気持ちいのは呂布のモノだけだわ~」
「こいつ~」
「あははは~」



第43話

「よし、では、その気持ち良いものを今から入れるぞ~」
「いやん~、もう~呂布は相変わらずせっかちなんだから~」
「しかし綾のここはもうこんなに濡れておるぞ?」
「やあ~だ、そんな恥ずかしいこと言わないで~」

(ズズズン!)

「あああ~ん!」
「どうだ?」
「すごいよ~。おなかにズンと響くよ~」
「うううっ、狭い・・・でもそれがまた堪らくいい」
「はぁ~ん、呂布があ、呂布が入って来る~。はぁぁぁ~ん、すごい!あぁん、気持ちいいよ~」
「ははは、そんなにいいのか?よし、では進軍だ!」
「進軍っていくさみたいに・・・ああっ!あああああ~~~~~~!すご~~~っ!すご過ぎる~~~っ!いやぁん~~~!」

(ズンズンズンズンズンズン!)

 195cmを超える巨体に包まれた綾はまるで子供のように見える。
 長い巻物が綾の中心目掛けてグイグイと食込んでいく。
 しかし巻物はあまりにも長過ぎて、半分ぐらいしか収まらない。

(ズンズンズンズンズンズン!)

「はぁ~、いいよ~!すごいよ~!すごく気持ちいいの~~~!」
「もっともっと気持ちよくしてやるぞ~!覚悟せい~!」
「や~ん、呂布~!はぁぁぁぁぁ~~~~~!」

 呂布から深く愛されて、綾は幸せだった。
 そしてその幸せがいつまでも続くようにと願った。
 しかし、不幸にもふたりの春はそう長くは続かなかった。
 生まれてきた時代と境遇がふたりの邪魔をした。
 そして呂布の生まれ持っての野心が、ふたりの別離に拍車をかける結果となってしまった。

 その頃、曹操は献帝を許(きょ)に迎え入れ勢力を伸ばしていた。
 まもなく曹操の大軍は、呂布と陳宮達を攻めた。
 曹操は呂布の強さには舌を巻き、ある一策を講じた。
 曹操は呂布の配下の武将と通じ、やがて呂布は捕らえられてしまった。
 198年、呂布が処刑された後、時代は【魏・呉・蜀】三国の幕開けへとうねり上げて向かって行った。

 そして・・・
 呂布の死後、綾が彼の死を嘆き悲しんで、何処かに去ってしまったのか・・・
 それとも、呂布を追って死地への旅を選んだのか・・・
 いずれの文献を見ても記されていない。












image









自作小説トップ
トップページ



inserted by FC2 system