第六話 “後手縛り片足吊り”

「強情な野郎…じゃなかったか、強情な女だぜ。おい、捨蔵、尻側の後ろ縦褌も絞ってやれ」
「承知した」

 背後にいる捨蔵が臀部の後ろ縦褌を掴みぐいぐいと引き絞った。
 前後の立褌を同時に絞られては堪ったものではない。
 ふんどしが一段と強く亀裂に食い込んでいく。

「ううっ……うううっ……」
「どうだ?痛いか?」
「うぐぐっ……」
「けっ、まだ我慢してやがる。まったく片意地な女だぜ」

 その頃、ありさの衣類や持物を物色していた弥平が突然素っ頓狂な声をあげた。

「と、頭領!!」
「なんだ、騒がしい」
「こんなものが見つかりやしたぜ!」
「何が見つかったんだ?」

 徳太郎がふんどしを絞るのを中断し、弥平の方に注意を払った。
 弥平はありさが身に着けていた襦袢を運んできた。

「なんだ、ただの襦袢じゃねえか」
「いやいや、ただの襦袢じゃねえんだよ。襦袢の裏地に手紙のようなものが縫いこんであるんだ」
「何だと!?で、何と書いてある」
「えへへ、おいらは字が読めねえもんで」

 弥平はきまりが悪そうに頭を掻いた。

「おい、その手紙をよこせ」

 徳太郎は蝋燭を近づけ、文章に目を走らせた。

「ふむふむ……ほう~、なんと!こりゃすげえことが書いてあるぜ!」
「どんなことが書いてあるんで?」
「聞いて腰を抜かすなよ。手紙は豊臣秀頼からで、こちらの九度山に幽閉されている真田幸村に宛てたものだ。『この度、我らは徳川氏を滅ぼさんがために兵を挙げることとなった。ついては幸村殿の力を貸していただきたい』だと。何でも豊臣方が大坂城に多くの武将や浪人を集めているようで、幸村には参謀として来て欲しいらしい。ついに豊臣と徳川が大戦を押っ始めるようだぜ」
「げげっ!」
「な、何と!」
「俺たち山賊には関係ねえよ」

 檄文を読み終えた徳太郎はにたりと笑った。

「関係ないだと?ぐふふ、それは浅知恵ってもんだ。よ~く考えてみろ。この情報を徳川方に持っていくとたんまりと褒美がもらえるぞ」
「あっ、そうか、なるほど。気がつかなかったぜ」
「当分遊んで暮らせるかも知れぬのぅ」
「でへへ、こりゃ楽しみだ」

 襦袢に縫い込んでいたにもかかわらず、いとも簡単に密書が見つかってしまったことにありさは愕然とした。
 男たちは徳川方に通報するとまで囁き合っている。
 それだけは何としても阻止しなければならない。
 だが囚われの身となった今、どうすれば良いのだろうか。
 ありさは悲嘆に暮れた。
 この先いかなる辱しめを受けようとも生き延びて、彼らが徳川方に通報する前に彼らを成敗しなければならない。

(隙をみて脱出しなければ……)

「おい、女武者、もうしゃべる必要はないぜ。手紙を全部読ませてもらったぜ。がははははは~~~!」
「くっ……」
「まさか大坂方の間者だったとはな。全部ばれてしまったからもうお前の役目はお終いだ。勇ましい女武者ともおさらばだな。俺たちがちゃんと女に戻してやるから楽しみに待ってな。ぐふふふふふ……おい!この女の片足を天井から吊るすんだ!」
「な、何をする!やめろ!!」

 手下たちは一旦ありさの縄を解くが、すぐに縛り直しにかかる。
 ありさは後手縛りにされ、乳房の上下にも縄をかけられた。
 括り出された乳房は張り詰め、薄紅色の乳首も痛々しく顔を覗かせている。
 その縄尻は天井の梁に通され、ありさは吊り下げられてしまった。
 さらに天井から垂れ下がったもう一本の縄は右脚の膝に巻かれ、高々と吊り上げられていく。
 ありさの右脚は、腿が胸につくほどに吊られ、左脚一本で何とか平衡を保っている。
 その左脚もようやく床に着くほどで、姿勢の不安定さにありさは怯える。

 いや、緊縛による苦しさよりももっと辛いのは、ふんどしを着けてはいるが、脚を広げ男たちの面前で股間を晒すことだった。
 ありさは生まれて初めて味わう屈辱と羞恥に顔を歪ませる。
 
「くっ!や、やめろっ!足を下ろせっ!」

 梁に吊るされたうえ片足を吊り上げられては、男たちの視線から逃れる術もない。

「こりゃあ、たまらねえ格好だぜ~」
「全くだ。若い娘のふんどし姿と言うだけでも珍しいのに、恥ずかしげもなく股まで晒してやがるぜ。おい、みんな、たっぷりと見てやりな!」

 男たちはわざとありさの股間に顔を近づけ、食い入るように覗き込んだ。

「み、見るな!」
「ぐふふふ、見るなと言われりゃ余計に見たくなるのが人情と言うもんだ。おい、穴の開くほど覗いてやりな!」
「それはそうと、そのじゃまな布切れを早く毟り取っちまおうぜ」
「まあまあ、そう焦るなって。ふんどしを解くことなど朝飯前だ。その前にふんどし姿の娘をたっぷりと可愛がってやろうじゃねえか」

 徳太郎が逸る心の手下たちを制して、ありさの乳房をぐいぐいと揉みに掛かった。

「さ、触るなっ!気持ちが悪い!」
「けっ!いちいち逆らいやがって!口は慎みなっ!」

 徳太郎の平手がありさの頬にさく裂した。

「うぐっ!」
「まあまあ、頭領、ここは穏便に」
「うん、そうだな。大事な玉だしな」

 捨蔵が徳太郎を諫めると、意外にも徳太郎は素直にうなずいた。
 たとえ山賊に身を落としても捨蔵の元の肩書が、徳太郎に微妙な劣勢感を与えているのかも知れない。

「ひぃ~~~~~!」

 徳太郎が愛撫を中断すると、ありさの左右から待ってましたとばかりに平吉と弥平が白い双丘へ一気にむさぼりついた。






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