第五話「五色の蛇」

 秘所を覆う唯一の布をあっさりと解かれてしまったありさは、必死に両腿を閉じ合わせようとした。

「ふふふふふ、いくら隠しても、のちほど嫌と言うほど恥ずかしい目に遭わせてやるから、楽しみに待つがよい。それよりも先ずは密書じゃ」

 まだありさの温もりが残っているふんどしを、玄はゆっくりと広げていく。
 ふんどしはよじって締め込むため布が少なく見えるが、解いてみると六尺あり案外長くて幅が広い。
 密書は簡単に見つけられてしまった。
 ふんどしの前袋内側に縫い込まれていたのだ。

「ほほう、これだな……」
「んぐぐっ!」

 密書を広げた玄はすぐに目を通し大きくうなづいた。

「やはり豊臣家家臣片桐且元は徳川と通じておったか。豊臣の動きは徳川に筒抜けというわけじゃな。この密書を徳川に渡せば、江戸城を警護しておる伊賀者の甘さが指摘されるであろう。くくくくく、伊賀者に代わってわれらが諜報の任務を仰せつかる日も近いのう……」
「うぐぐぐっ!」

 玄のたくらみを聞かされたありさは、驚きのあまり卒倒しそうになった。
 苦労して奪った密書が、不幸にも玄という男の手に渡り、さらには徳川の元に戻るというのか。
 それでは密書を奪ったのが真田だと徳川に知られてしまうではないか。
 
(なんとかして取り返さなければ……)

「くノ一ありさよ、江戸城から密書を持ち出してくれてご苦労じゃったのう、何か褒美をやらなければならぬのう。ぐふふふふ」
「……?」
「褒美として、しばしの間、五色(ごしき)と遊ばせてやろう」

(ごしき……?)

 まもなく白い靄が牢獄内に立ち込め、玄は靄に溶けるように次第に薄くなっていった。

(なんだ、この靄は?玄はどこへ行った……?)

 白い霞がどんどん濃くなっていき、ついに牢獄の格子が見えなくなった。
 そのときカサカサと何かが床を這って近づいてくる。

「んっ……?」

 ありさの足元に正体を現したのは数匹の蛇であった。

「うんぐっ!」

 足元でうごめき鎌首を上げてありさを威嚇している。
 それぞれが色の異なる四匹の蛇であった。
 茶色、緑色、青、そして、赤。
 森で襲撃してきた蛇よりも小ぶりで、太さはせいぜい一寸五分程度といったところだが、こちらの方が色艶が鮮やかで何やら不気味さが漂っている。

 ありさは青ざめた表情で足元の蛇を見つめた。
 森で蛇が襲いかかってきたときと、今は状況が違う。
 あのときは身体に巻きついた蛇を武器を使って追い払うことができた。
 だけど今は柱に縛られて抵抗できないうえ、全裸という最も無防備な状況だ。

 最初に這いあがってきたのは茶色の蛇だった。
 ありさが柱に縛られていることを良いことに、蛇は露わになったありさの乳房を這いずり回り、乳頭を赤い舌でチロチロと舐める。

「んぐっんぐっ!」

 さらに緑色の蛇がもう片方の乳房に絡みつき、茶色の蛇と同じように乳首を舐め回す。
 そして濡れてもいない秘所めがけて青い蛇が太腿を這いあがってきた。

「ふんぐっんんぐっ!」

 ありさは身体をよじって振り落そうとするが、まったく効果がなく、蛇は恥丘を探り実(さね)を探し当てると赤い舌でチロチロと舐め始めた。
 ありさはそのおぞましさに耐えかね、気も狂わんばかりに髪を振り乱す。
 青い蛇は、何やら粘着性の液体を実に吹きかけながら、実と花弁の間を擦るように撫でる。
 
「いやぁ~~~~~~ぁん!……んっ!?」

 髪を振り乱している間に、あろうことか幸運にも猿轡が解けた。
 しかし叫んだところで、救出してくれる者などどこにもいない。
 囚われたときは舌を噛み切って自ら命を絶つことを考えていたが、今は密書を奪い返しなんとか脱出したいと思うありさ。
 
『どうじゃ、蛇に舐められる心境は?気持ちがよいじゃろう?』

 どこからか玄の声が聞こえてきた。

「どこにおる!?」

『ふふふふふ、おまえからは見えぬわ。猿轡が解けて口元が楽になったろう。偶然と思ったか?わしが解いてやったのじゃ。おまえに自害の気配がなくなったから解いてやったまでじゃ。蛇にいたぶられて泣き叫ぶ声を聞きたいからのう。ぐふふふふふ』

「おのれ!どこまで私を辱しめれば気が済む!絶対に許さぬ!」

『相変わらず意気盛んな娘じゃのう。そのように強気でいられるのも今のうちだけじゃ。もうすぐ媚薬が効いてきて、泣き叫ぶ姿が楽しみじゃのう』

「媚薬?媚薬などいつ着けたというのだ?」

『蛇じゃよ』

「蛇だと?この蛇が媚薬と関係あるというのか?……ま、まさか!?」

『この蛇たちに与えている餌は秘密じゃが、唾液の中に媚薬が含まれておるんじゃよ』

「そんなっ……!?」

『もうすぐ媚薬の効果が現われるはずじゃ。さあ、蛇たちよ、この生意気な小娘を徹底的にいたぶるのじゃ!』

 玄が号令をかけると、三匹の蛇に加え、赤い蛇がやってきて、ありさの菊門を舐め始めた。
 四匹が一斉にそのおぞましい舌でありさの鋭敏な個所を舐め回す。

「そ、そんなっ……!やめ、やめろ~~~~~~~~~!」

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