ありさ姫






第九話“夕陽の彼方”

 繰り返し壷に浸された穂先は、水飴のような液体を滴らせながらありさ姫の女陰を何度も襲った。

「ひぃ~~~~~~~~~~!!ぐわぁぁぁぁぁ~~~~~~!!!!!」

 男根であればいかに精力絶倫な男が長丁場に及んだところで、最後は必ず発射という終幕がある。
 ところが無機的な張形の場合は操る者がやめない限り終焉がない。
 槍をさばく人間が中止を意識しない限り延々と続くことになる。
 淀みない快楽の連続に、ありさ姫は何度も絶頂に達した。
 そして過酷な絶頂の連続に何度も失神した。
 失神しても水を掛けられて、正気へと戻されてしまう。
 そして引続き激しい槍攻撃を浴び、快楽の波間をさまよう。
 槍の使い手はいつのまにか黒岡から最初の執行役人に代わっていた。
 黒岡から「生かさず殺さずの“女陰槍”」を伝授された執行役人たちは、いつしか巧みな槍さばきを見せていた。
 繰り返し絶頂に達し、ありさ姫の恥じらい、奥ゆかしさ、そして理性は粉々に崩壊しようとしていた。

 やがて陽が西に沈み夜のとばりが下りても、執行役人が交代しただけでありさ姫への槍責めは続行された。
 刑は間断なく一昼夜行なわれ、翌日も刑は引き続き行なわれた。
 磔という過酷な姿勢と絶頂の繰り返しによる体力の消耗は想像を遥かに超えていた。
 水や食物も与えられず、睡眠もままならず、ありさ姫の肉体は次第に衰弱していった。
 薄れ行く意識の中、今は亡き父や母そして弟の姿が浮かんでは消えていった。

(父上さまぁ……母上さまぁ……ありさはもう限界です…………まもなくお傍にまいります……景勝…あとを、あとを頼みますぅ…………)

 磔刑は三日目を迎え、その日もすでに夕方になっていた。
 すでにその場には黒岡や下川の姿はなく、観衆の影もまばらになっていた。
 執行役人はありさ姫の様子が急変していることに気づいた。
 ありさ姫はうな垂れて、目を閉じていた。
 それは実に静かな幕切れであった。
 ありさ姫の死は、すぐに執行役人から黒岡源内へと伝えられた。

 ありさ姫の陶器のような白い肌は夕陽を浴びた赤く染まっていた。
 苦しみから解放されたありさ姫の表情は、穏やかでやさしいふだんの表情を取り戻していた。
 十八才にして儚く散った若い命を惜しむかのように、梢に止まった烏が悲しそうに鳴いた。







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