官能小説

『ありさ 義父の視線』

Shyrock 作



 
野々宮ありさ(役名 湊川ありさ)



第1話「義父の視線」

 隆志と社内恋愛のすえ結婚したありさは二年目を迎え、平凡だが幸せな生活を送っていた。あの日までは……

 ありさたちは結婚後新居に住んでいたが、一年後夫の両親と同居することになった。
 一人息子を持つ両親のたっての希望でもあったが、それより両親と同居することにより生活費が節約でき貯蓄に回せることが大きな理由であった。
 同居を始めると両親はやさしく接してくれ、ありさとしては特に不満はなかった。
 とりわけ義父の諭は色々と気遣ってくれてすごく“良い人”に思われたが、一か月も過ぎると彼の視線にどことなくいやらしさが感じられるようになっていた。

 ある日のことだった。
 ありさが風呂に入っていると、ふと窓の外から視線を感じるのである。

(あれ? 誰か見ているような気が……)

 両親から「湿気でカビが生えると困るので風呂に入るときは窓を開けてね」と言われていたので、ありさはいつも十センチ程度窓を開けた状態で風呂に入るように心がけていた。
 附近に家が密集していないことや裏が山になっていることなどから安心していたのだが、いつも窓の隙間から誰かに覗かれているような気がするのであった。
 しかも奇妙なことに、ありさが家の掃除をしながら階段に差し掛かると決まったように諭が階段下を通るのであった。
 家の中でもスカートを穿くことが多かったありさのパンチラを期待するかのように、足音を忍ばせ、気づくと階段下から見上げていることが度々あった。
 またソファーで寛いでいると、諭は決まってありさの向かい側に座ることが多く、トイレに入っているときもタイミングを合わせるかのようにノックをしてきた。
 ありさはそれらのことを隆志に相談してみたが、「気にし過ぎだよ」とまともに取り合おうとしなかった。

 同居を始めて半年が過ぎた頃、一つの転機が訪れた。
 隆志が本社の企画開発部に人事移動を命じられたのだ。
 実家から本社までだと通勤が二時間を要するため、実家を出て都内の社宅で暮らすことになった。

🌗🌗🌗

 それから平穏な日々を過ごしたありさたちであったが、一年が経過したころ湊川家は大きな不幸に見舞われた。
 隆志の母千賀子が脳梗塞で急逝し、諭が一人ぼっちになってしまったのだ。
 定年を迎え仕事を失った諭に追い打ちをかけた状況を、隆志としても看過することができず、実家に戻ることをありさに相談した。
 隆志の通勤時間が片道二時間を要するなどマイナス面もあったが、満足に自炊もできない諭を一人暮らしさせておくわけにもいかず、ありさとしてはやむを得ず承諾することになった。

 それから一か月後、ありさたちは社宅を引き払い実家に戻った。
 妻を亡くして落胆していた諭もありさたちと暮らすことで気がまぎれ、次第に笑顔を取り戻すようになっていた。
 慣れない長距離通勤にも愚痴をこぼさず会社に通う隆。
 すべてが順風満帆にいくように思われた。

 だけど良い日は長くつづかなかった。
 毎日諭と一つ屋根の下で暮らすことになって、ありさは例のあのいやらしい視線を再び感じるようになっていた。
 しかも千賀子が健在だった頃と違って、現在昼間は二人っきりということもあって、諭の態度は以前にも増して図々しくなっている。
 日頃パンツよりスカートを好むありさが、実家に戻るなりパンツ姿では隆志も奇妙に感じると思い、ありさはあえてスカートを選んだ。

 諭の視線は日に日にいやらしさを増していた。
 ありさがソファーで寛いでいるときも、諭は向かい側で横になりながらありさの閉じた太腿の奥に視線を向けていることがあった。
 二階に上がるときもふとありさが振り返ってみると下から見上げていることが時々あった。
 また寝室で着替えているときもドアのわずかな隙間から覗く諭の姿を、偶然ありさが目撃してしまったこともあった。
 ありさは隆志に相談しようか思い悩んだが、最近残業つづきで疲れ果てている悟に余計な心配をかけるまいと、喉まで出かけている言葉をぐっと吞み込んでしまった。

 隆志が勤める広告代理店では長時間残業が常態化しているばかりか、大きなコンペが近づくと休日出勤はもちろんのこと連日徹夜が続くこともあった。
 当然夫婦の営みも途絶えてしまい、ありさの欲求不満も日に日に溜まっていった。
 そんな中、諭のいやらしい視線に妙な疼きを感じていることも事実であった。
 隆志が徹夜で帰れないと連絡があった夜には、ベットに入ると通販で購入したバイブを握りしめ自身を慰めることも増えていた。



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