最終話「二十一歳の春」
夕食が終わりありさが洗い物をしていると、トオルはチェストから何やら取り出しありさに見せた。
「これ、ネット通販で買ったんだ」
そうつぶやきながら、ありさに見せたものはバイブレーターのパッケージだった。
「ええ~!? そんなの買ったの? もうエッチなんだから~!」
ありさは正直あまり嬉しくはなかった。
バイブレーターの経験はないが、男根を模したシリコンは見るからにグロテスクだし、友人の美和が以前彼氏にバイブレーターを乱雑に使われて痛かったとこぼしていたことがあった。
第一そんなグッズに頼らなくても本物の男性が良いに決まってる、とありさは考えていた。
ところがそんなありさの考えも一時間後には一変していたから、世の中は分からないもの。
トオルが買ったのは昔ながらの厳つい代物ではなく『ピンチングバイブレーター』という最新型のスタイリッシュなバイブレーターであった。
内外からクリトリスと膣壁を挟み込んで強力に刺激を加えられ、ありさは瞬く間に昇天してしまった。
従来のバイブレーターだと、クリバイブがうまくクリトリスに当たらないことがあったが、この代物だとクリトリスをすっぽりと包み込んで触手のような繊毛が確実に刺激する。
第1ラウンドが終了し、わずかな休憩の後第2ラウンドに突入したありさとトオルは第1ラウンドのとき以上に激しく愛し合った。
ピンチングバイブレーターによる前戯のせいもあって、ありさの身体が尋常ではないほど高ぶっていたからだろう。
終わったあと二人はしばらく抱き合ったまま、まどろんだ。
トオルはティッシュをとりありさの大事な場所を拭いてやると、つづいて自身のペニスの処理をした。
トオルが顎を突き出してきたので、ありさはトオルと唇を合わせ舌を絡めた。
そのあと二人はベッドでいちゃいちゃと転がり合ったり、ピロートークを楽しんだりと、充実したひとときを過ごした。
◇◇◇
それから1週間が過ぎ、大学で美和が突然つぶやいた。
「ありさ、なんだか最近変わったね。きれいになったんじゃない? どうして?」
「そう?」
ありさはさりげなく返したが、そこは鋭い美和のこと、ありさの状況を的確に言い当てる。
「例の医学部クンとつきあってるんでしょ?」
「うん、まあね」
「もしかしてアレは済んだ? うふふ、済んだんだ~。顔に書いてある~」
「もう美和ったら~、やめてよ~」
ズバリ美和に言い当てられたありさは、帰宅すると姿見鏡でしみじみと自身を眺めた。
(どうして分かったのかな……?)
どこがどう変わったのかよく分からない。
どこも変わっていないはずだ。
(いや、ちょっと待てよ。何かが違う……)
ありさは自分の姿を見ながら、自身の変化を探った。
(私、どこが変わったのかな……? ん? 何か肌が整ってきれいになった気がする……それは思い過ごしかな?)
「でも女性は恋をすると女性ホルモンがたくさん分泌されて美しくなると聞いたことがある。男性に愛されるとさらに美しくなるって……」
ありさは一人つぶやいた。
恋の歓びを教えてくれたトオル、ありさは彼を心からいとおしく思った。
◇◇◇
そしてまた蜜のように甘い週末が訪れた。
はじめは控えめに、けれども段々と大胆になっていくキスに、ありさは頭がくらくらしてしまう。
トオルの分厚い舌がありさの小さい舌に絡まる。
舌の裏を舐められて、ありさは我慢できずに声を漏らした。
歯茎をなぞるように舐められて、背中がぞわぞわと震える。
くぐもったような声が漏れる。トオルに与えられる甘い快感に、ありさは次第に溺れていった。
「気持ちいい?」
「う、うん……、すごい、キスだけでこんなにふらふらになっちゃうなんて……」
「ありさはきっとエッチなんだよ」
「うう、違うもん……トオルに、好きな人にチュ~されたから、だよ……」
いつしか呼び捨てで呼び合う仲になっている。
◇◇◇
「あっ、あああっ……ふぁぁっ」
「気持ちいい? ありさ」
「うんっうんっすごく、きもちいっ」
ショーツ越しにもかかわらず、ありさの花芯は濡れそぼっていった。
まるで決壊したダムのように愛液が滲んでいく。
ショーツを濡らされるのは気持ちがよいものではないが、それ以上に与えられるトオルの愛撫が堪らなく気持ちがよくて、不快さなどはどこかへ飛んで行ってしまった。
ぐちゅ、ぶちゅという淫らな水音が室内に響き渡る。
そしてありさのはしたない喘ぎも。
胸の突起はもうずいぶんと硬くとがっていて、トオルの愛撫に悦んでいる。
ありさの陰核も顔をのぞかせていた。
トオルはおもむろにありさのショーツを取り去ると、濡れた花弁に顔を寄せた。
「美味しいよ」
「かわいいよ」
「きれいだよ」
トオルはとても誉め上手。
愛し合うたびにありさに愛の言葉を届けてくれる。
もともと美麗なありさだが、女は誉められると美しさに一層磨きが掛かるもの。
恋をしてきれいになり、愛されてまた美しくなっていく。
ありさはそんな二十一歳の春に、今まさに大輪の花を咲かせようとしている。
完
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