ありさ エゴイストな春 改

Shyrock作





第5話「同時絶頂は望むところ」

 トオルとどれだけの時間交わっていたのか、後日ありさは思い出そうとしたが思い出すことができなかった。
 思い出すのが困難なほどありさがこの日に経験したセックスは濃密であった。

 ありさは今騎乗位に変換しトオルの上で激しく揺れている。

「……イキそうっ……」

 春のつむじ風が吹き荒れるような行為の中、ありさはそんな喘ぎを漏らしていた。
 眩しい閃光に全身を包まれ、かつて味わったことのない迷路に、ありさはその時迷い込んでいた。
 素直に快感を告白し、ありさは自ら蜜唇を突き出すように腰を振った。

「あぁ、もう……もう、ダメ……イキそう、イキそう、もうイキそう……」

 泣き出しそうな声を奏でトオルの胸にもたれかかるありさ。
 ありさに呼応するかのようにトオルは、

「イク……あぁ、気持ちいいっ……イクよ、あ、あぁ……好きだ……っ」

 彼の言葉は、うわごとのようになっていた。
 こんなときに好きだと言ってもらえるのは、嬉しい。
 絶対に嘘ではないだろうから。
 ありさはそう思った。

 深く繋がりながら、トオルの首にしがみつく。
 トオルのモノが、一段と硬くなり中でどくんと脈を打つ。

「ううっ……うううっ……おおおっ!」
「ああっ……イク……イッちゃう……あ、あ、あぁぁぁ……」

 二人はほぼ同時に頂上に向かって駆け上がる。
 ありさは身体をピクピク痙攣させているが、トオルはまだ名残惜しそうに腰を動かしている。
 スキンを着けているから最後の一滴までありさの中で搾りだすつもりらしい。

「あ……あぁん、ダメ……イッちゃうよぉぉぉぉぉ……!」

 達したありさはトオルの胸に顔をうずめたままピクリとも動かない。
 ひたすら余韻に浸っている。

「ああっ……気持ちよかったぁ……」
「僕もすごくよかったよ」
「ねぇ、トオルさん、二つ目の体位は何ていうの? 身体が宙に浮くような不思議な感じがしたよ」
「ああ、あれはね、友達から借りたブルーレイにあった体位で、将来エッチする女の子と必ずしようと思っていたんだ」
「へぇ、そうなんだ。てことはトオルさんにとって私が初チャレンジの女の子?」
「うん、ありさちゃんだけの体位にするつもり」
「ええっ? 私だけの体位?」
「ねえ、ありさちゃん、僕と付き合ってくれる?」
「うん、私でよければ」
「やった~! ありがとう~!」
「それで、さっきの続きだけど、あの体位、名前はなんて言うの?」
「何でも『抱き上げ』っていうらしい」
「へえ、そのままのネーミングなのね」
「ありさちゃん、肘立て伏せみたいな体勢になってたけど、腕だるくなかった?」
「うん、だいじょうぶ。だってフィットネス通ってるもの」
「だから、そんなに身体が引き締まってるんだね。めちゃカッコいいもの」
「ありがとう。トオルさん、大好き~(チュッ)」

 ありさはトオルのほっぺに軽くキスをした。

「それに……」
「なに?」
「身体もよく締まってるけど、アソコの締まりもすごくいいね。速効でイキそうになって必死に耐えたよ」
「我慢しなくていいのに。イキそうになったらイけばいいのよ。2回戦すればいいことだし」
「へえ、嬉しいことを言うね。じゃあすぐに2回戦始めちゃう?」
「あはは、せっかちね。その前にケーキタイムしようよ」
「そうだね、ありさちゃんが買ってきてくれたケーキ美味しそうだもの」

 ありさはトオルの胸に頬を寄せて甘えてみせた。
 ジャスミンのような甘い香りがトオルの鼻をくすぐる。
 トオルはやさしくありさの髪を撫でるとそっと抱き寄せた。
 それから唇を重ねたがなかなか離れようとしなかった。

◇◇◇

 それから1週間が経過した。
 ありさはトオルに手料理を振る舞う約束をしていた。
 彼氏に手料理を作るのは、女性にとって大きなイベントなのだ。
 ありさが作った料理はオムレツだった。
 滅多に自炊をしないトオルは久しぶりに味わう手料理を大いに喜んだ。

「ありさちゃんって意外と料理がうまいんだね」
「ん? 『意外』ってどういう意味かな~? 聞き捨てならないね~。もう次は作ってあげないもんね~」

 ありさはほっぺをぷ~っと膨らませた。
 その表情がすこぶる可愛いとトオルは思った。
 トオルは素直に謝った。さらに……

「ありさちゃんは勉学とモデル業を両立させているので、かなり忙しいだろうと思って」
「うん、確かに忙しいけど」
「それに美人でおしゃれな子は家であまり料理を作らないと勝手に思い込んでた。それって僕の偏見だよね、ごめんね、謝るよ」
「料理が苦手と思われたのは残念だけど……美人だと言ってくれたから許すとするか!」
「ほっ……」
「ただし!」
「ん?」
「この後のエッチで必ず私をイかせること」

 トオルはありさが出した条件を聞くと、手を叩いて笑い転げた。

「クスン……そんなに笑わなくてもいいのに……」
「ごめんごめん。つい可笑しくて。あ、そうそう、コーヒーを淹れるよ。キリマンジャロ買ったんだ」



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