第10話

ゴホンっコボンっ!
いきなり喋ろうとして、私は思わず咳き込んだ。
しかし、何とか少し喋れるようになった私は、かすれた声で問い質した。

「な、な、何よこれ、こんな高級旅館だなんて聞いてないわよ!!」
「でも一度当館の温泉に入られた方は、この世のものとは思えない体験をするとのこと。その対価としてはまぁ妥当なのではと、当主も考えてございます」

「私、こんなお金払えません!」
「何を仰っているのですか。それは領収書。もう支払いは済んでいるのですよ」
「え…」

こんな大金の支払いが済んでいる…もしかして旦那が払ったのかしら?
でも夫婦での温泉旅行代が10万円なんて、いくら何でもちょっとないわ。後で問い詰めてやろう…それにしてもどこ行ったのかしら旦那。

「それで、もう1枚のこれなんですが…」

“硝子”が渡したもう1枚の紙を見て、再び私は仰天した。

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*** 請求書 ***

●● ●● 様

件名:施設使用料(10月25日 1泊分、翌日10時迄有効)
下記の通りご請求申し上げます。

ご請求金額 ¥108,000-

小計 ¥100,000
消費税(8%) ¥8,000

お支払期限:当日中
(クレジットカード一括払いのみOK、分割払い不可、[※]労働支払い可)
[※]女性に限る。当館指定の男性に対する奉仕活動、1名に付き2万円(税別)を支給。

旅館 愛泉院
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「つまりですね、貴女は昨日、気を失ってからここに運ばれてずーっと寝てました。ええ、お昼過ぎまで。当館では10時チェックアウトが原則となっておりますので、その規定時間を超えてしまったために本日1泊分のカウントが付いてしまってるんですね」
「………」
「ということですので、本日中に10万飛んで8千…」
「払えないわよっ!!」
「これは困りましたね、こちらは規定通りに請求させて頂いているのに、そんなことを言われましても」
「旦那に言いなさいよ旦那にッ!!」

私はあまりのことに、精一杯かすれた声を荒らげた。
そうだ、そもそもの発端は旦那なんだから、旦那が自分の小遣いで支払えばいい。しばらくゴルフ代節約すればそのくらい捻出できるだろう。

「それが…旦那様はすべての支払いは妻に任せるからと言って、先に出ていかれました」
「…え?」
「昨日午後、温泉から上がってすぐ、車で下山されましたよ」
「…!!1台しかない車で私を置いて出て行ったっていうの?」
「そういうことになりますかね…」

やられた。
私はハメられたんだ。
そもそも混浴の露天風呂に妻を連れてきて、旦那がひとりでさっさとあがることがそもそもおかしいと思わなきゃいけなかったんだ。
ああ、私の馬鹿!!
…ん、ということは…?

私はふと、非常に恐ろしいことに気付いてしまった。
そんな…だから…そうだったのか…。
そう考えるとすべての辻褄が合う。
これを聞くのは怖い。
でも、そうとしか考えられない…。

「あの…。さっきの領収書の金額、あれは誰が支払ったの?」
「貴女ですよ、奥様」

やはりそうだったのだ。
請求書に書かれていたあの「労働支払い」。
昨日、“ボス”と呼ばれていた男が言っていた「ビジネス」という言葉。
あれは、つまりそういう意味だったのだ。

私は、まさに身体を売っていた…!!

何てことを!
旦那にハメられたとはいえ、私は取り返しのつかないことをしてしまった。
どうしよう…?
ともかくここから逃げなくては…!
そう思いつつ身体を動かそうと必死にバタつくも、昨晩イカされまくって力が残っていない所為か、全身にダルさが残り、イモ虫のようにしか動けない。

それに、よく考えたら…。
服も何もない状態~すなわち全裸~で、いったいどこに逃げられるっていうの…?

「さぁ、お支払いくださいませ」
「………」
「“ご奉仕”でお支払するなら、昨日と同じコース。1人2万円+消費税1,600円が5人つきますので、ちょうどご請求金額の108,000円という計算になります。最後に労働奉仕に対するサーヴィスとしてマッサージ機使い放題がセットとなって御座います」
「うぐっ!!」

昨日のあの記憶が甦ってきた。
全身を椅子に固定されたままマッサージ機を動かされて、暗い部屋の中何時間にも渡ってイキ続けた地獄の記憶…。
あんなことをまたやられたら…私は…。

「無論、奥様の好きな方法で構いません」
「…い…や…、もう、あんな、こと…は…」
「そうですか、ところでいま、奥様はどこを触っていらっしゃるのですか?」
「…あ!!」

いつの間になのだろうか。
私の指先はまたもや股間に伸び、いやらしい手つきでアソコの中に指を入れ、入り口を擦っているではないか。

「…そ、、、んな、こ、、、これは…」
「これは?何ですか?」

“硝子”は私を包んでいた布団を剥ぐやいなや、私の股間をしばし見つめた。
そして私がいま唯一動かせる手をガシっと掴んで、真っ赤に膨張したクリを舌先でチロチロと舐め擦った。

「うあぁぁぁっ!!」

さっきまで、忘れてたのに。
昨日までのあの性感が戻ってきた私は、そこが旅館の和室で布団の上であるのにも関わらず、またもだらしなくオシッコを吹いてしまった。

「あぅっ、うんん…あへへへ、ひひいい、いぐぅ…」

呻きながら転がっている私を置いて“硝子”は立ち上がり、部屋を出て行こうとする。

「あぁん、まって、まって、ひゃめないで、いぎたいの、いぎたいの、おねぎゃいぃ…」
「…昨日の温泉で待ってますよ。もう少ししたら動けるようになるから、自力で来てくださいね」
「そ、そんにゃあぁぁ…。まって、まって、つれてってよぉ…」


こうして、私の2日目の施設使用料を支払う「仕事」が確定した。
ちなみに「仕事」の最後に待ち受けているあのマッサージ機。
あの悪魔の機械で死ぬほど絶頂させられたあと、翌日の朝10時までに目を覚ましてチェックアウト出来なければ、私はさらにもう1泊分「仕事」をしなくてはならないのだ。

私が無事帰れたのか、それともずっと帰ることなくいまも温泉旅館「愛泉院」でこれを書いているのかは読者の皆様の妄想に委ねることとしたい。
そんな風に書いているそばから、私の左手はまたいやらしい手付きで股間に…。





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