第19話 想いをひとつにさせて


「美桜、一緒よ……はぁ、イクときはぁ、一緒じゃなきゃ……嫌ぁ」

常にリードして、美桜を弄ぶ一方のサキコなのに、らしくない声を吐いた。

「わぁ、わかってる……気持ちいい声はぁ、一緒に……あぁ、サキコ……」

常にリードされて、性人形のように弄ばれる一方の美桜が、向かい合う少女の名をついに呼んだ。

(翔くん、ごめんね。バージンなのに、こんなエッチな美桜を許してね)

縦に刻まれた女の子のスリットが、クロスして組み合わされていた。
ギュウギュウと押し合って、食い込ませ合って、無毛の幼い恥丘と、黒く繁らせたちょっぴり大人の恥丘が、濃密なキスを繰り返している。

「み、美桜……」

「サ、サキコ……」

唾液に濡らされた唇が、向き合う人の名を呼んだ。
それを合図に、美桜は腰をひねった。
負けずにサキコが、絡めて挟んだ両足で美桜の下半身を強く抱いた。

それは柔らかな快楽であった。
下半身からジワリと拡散し、緩やかな旋律で背筋のラインを這い昇っていく。

「はぁぁっ、ふはぁっ……美桜、イク、イクのぉ……イッちゃうぅぅっっ!!」

「ふは、ひあぁっ! あたしも、サキコもぉ……いい、いいのぉっ……イクぅぅっっ!!」

絶頂を知らせる喘ぎが、重なり合って響き渡る。
美桜が、そしてサキコが、支えるように突かせていた両腕を引き上げ、お互いの背中へと。
強く抱き合わせ、波打つ鼓動の調べを分かち合い、覚束ない瞳と瞳をまっすぐに見つめ合わせる。

「ちゅぷ、ちゅばっ……美桜の唇、おいしい……」

「むちゅ、ちゅりゅ……サキコのくれる唾だって、とってもおいしい……」

それは自然な流れの口づけであった。
ほのかな恥じらいを共に秘めた、女の子どうしの耽美な触れ合いであった。



「美桜、帰るのね?」

「えぇ、翔くんと一緒に元の世界へ」

美桜は翔吾の身体に身を寄せると、サキコを見つめた。

「ここへは、もう帰らないから」

「そう、だったらこれで美桜とはお別れってこと?」

美桜は翔吾の肩を抱いた。
そして、戸惑いながらも顔をうなずかせた。

「大丈夫かしら?」

「……」

「また火事の炎に焼かれて、こっちの世界へ……うふふっ」

「期待してもいいけど、わたしは変わったの。絶対にサキコの思う通りにはならないから」

挑発されて、美桜は声のトーンを強くさせる。
翔吾に這わせた手のひらにも、思わず力を込めた。

「そう、ならいいけど。でもねぇ、あたしも暇だし、ちょっと覗いちゃおうかな。うふふっ」

ベッドに寝そべったままのサキコが、ポンと弾むように身体を浮かせた。
スイスイと白い空間を飛び回り、美桜と翔吾の前へと着地する。

「サキコって、そんな趣味が有ったの?」

「うん、有ったのかも。今まで気づかなかったけど。うふふっ」

とぼけてみせて、白々しくごまかせてみせて。
サキコの表情からは、ミステリアスな面影が消えていた。
好奇心を溢れさせた無邪気な少女の表情のままに、美桜を見つめ返していた。

「ふ~ん、サキコのスケベ、エッチ……でも、見たいのならいいわよ。わたしと翔くんの……その……」

「セックスを覗いてもいいのね。うふふっ」

現世への旅路は男の身体が一つと、可憐な少女が二人。
予想もしなかった成り行きに、つい美桜の頬も緩んだ。

「でもね、翔くんは譲らないからね。翔くんの……その……」

「オチ〇チンは、美桜のオマ〇コ専用なんでしょ。うふふっ」

「そ、そういうことよ……うふふっ」

そして、向き合ったままの少女は白い歯を見せて笑った。
どちらともなく顔を赤く火照らせて、愛し合って間がないのに、また唇どうしを寄せ合って。

「ふむぅ、むはぁっ……サキコ、いつでもいいわよ」

「ちゅぶ、ちゅにゅ……それじゃ、いくわよ美桜」

唇を吸い合ったまま、舌と舌とを戯れさせたまま、美桜が合図を送る。
サキコがそれを受けて、片腕を天に翳した。

「蓄積されしマナの力よ! 妾と相対し乙女と、そこに漂いし男を運ばん! 滅びし肉体よ! 砕けし魂よ! いざ廻らん! 現世への扉へと!」

白い空間が唸りを上げた。
白く淀んだ大気が、波立つように揺らいだ。

美桜とサキコと翔吾と、腕と腕をつなぎ、肌と肌をひっつけ合わせたまま、白銀の膜が三人を包んだ。
ほとばしる白い輝きの世界で、肉体が消失し、新たな肉体が形作られていく。

(失敗は許されないの。今度こそ美桜は翔くんと結ばれないと……そのためだったら、どんなことでも。恥ずかしいことだって、今の美桜なら平気だから)

確かに触れていた肌の感触は、遥か時の彼方に。
美桜は孤独にされた魂のまま祈り続けていた。

翔吾への想いを。なぜかこれがラストチャンスのような気がして。

やがて再生し始めたばかりの素肌が、時の流れを感じた。
懐かしくて、少し恐ろしい質量の風を拾った。
意識が覚醒していく。
現世の人としての実感を、美桜は捉えた。
そして……








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