第16話 ゴスロリ少女の手慰み


美桜と翔吾は、サキコの力により旅立っていった。
男の精を豪快に放出した後も、微動だにしない翔吾を美桜が抱きしめ、白い空気に溶け込むように消え去っていた。

「あーぁ、二人とも行っちゃった。でも、どうかしらね。うふふっ」

サキコは気怠そうに独り言を吐くと、意味ありげに笑った。
そして、翔吾が横になっていたベッドへ向かう。
伸ばした人差し指をそのベッドに当てる。

「あの子たちが辿り着くたびに、あっちのマナがこんなに流れてきて……はあぁ、そのお蔭で……サキコのあそこも……」

黒いパイプをフレームにした質素なデザインのベッドは、一瞬にして様変わりしていた。
シルクの布が側面と天井を覆う天蓋付きのメルヘンチックなベッドへと。

シュル、シュル、ファサ……

サキコはそんなお姫様ベッドの脇に立つと、身に着けていた衣装に手を掛けた。

キュートさを強調させた胸元のリボン。
可憐な魅力を助長させるレース仕立てのフリル。
幼いながらもカリスマ性を引き立てるゴシック模様の刺繍。
それらを絶妙なバランスで組み合わせた漆黒のドレスを、迷うことなく脱ぎ落していく。

「どうするの、お二人さん? もうすぐタイムリミットよ」

天然の色を知らない。
灰色をした瞳が中空を覆う大気を見つめた。
口元にほのかな笑みらしきものを浮かべて、純白色の裸体を晒した。

大人なのか?
子供なのか?
そのどちらとも言い難い中性的な魅力をたたえる肢体である。

「うふふっ、あなたたちには見つけられない。永遠に時の狭間を彷徨うのよ」

サキコは、華麗なベッドへとその身体を横たえていた。
仰向けのまま寂しそうな笑いと、寂しそうなセリフと。
流れ込む白いモヤに忍ばせて、腕を滑らせた。

ちゅにゅ、ぬちゃ……

「ふうんっ……とっても濡れてる……」

妖しい水音がした。
陶磁器を思わせる指先が無毛な股間を撫でる。
伸びては曲げて、自在に変化する指のタッチは、少女の割れ目のラインをなぞり、甘い蜜に浸された恥肉の壁を優しくこじ開ける。

「あぁ、はあぁ……気持ちいい……オマ〇コのお肉、んんっ……ちゃんと感じてるの」

白銀色のシーツの中で、サキコの未熟なボディが揺れた。
右腕と左腕をクロスさせ手首を重ね合い、程よい角度で開かれた股間へと宛がわれている。
幼いのに手練れた指捌きで、女の慰めを曝け出していた。

「二人とも早くいらっしゃい……ふぅ、はぁ……炎に焼かれて、肉も骨も灰にされて……あはぁ、うふふっ」

無の迷宮から質量感溢れる現世へと。
サキコは声を飛ばした。
閉じかかったまぶたの下から虚ろな瞳を覗かせて、サキコは見つめていた。

「はあ、こんなに気持ちいいなんてぇ……だけど、ふぅ……もっと、もっとよぉ、んんくぅっ!」

捩り合わせた指の束が、蕩ける狭間に沈んだ。
手首を返すようにして、グイグイと捻じ込んでは、グンと引き抜いた。

じゅりゅ、じゅちゅ……ぬちゃ、にちゃ……

「あふっ、ひゃあぁっ! 待ってるからぁ……んぁっ、ああぁぁっっ」

淫らな肉音が激しさを増した。
ベッドの縁へと伸ばされた足の筋肉が、緊張し、伸びきり、その末端のつま先が何かを掴むように鍵の字に曲がる。

「ふはぁぁっっ! イク、イク……飛んじゃうぅっ! ふぅ、くぅぅっっ!!」

やがて少女はエクスタシーを感じた。
あられもなく開かせた両足をシーツから浮かせ、ピクピクと何度も痙攣させる。
柔らかなシーツの上で全身を波打たせ、それから……

「はあぁ、ふぅ……」

切ない溜息を途切れることなく吐き出した。
強張らせていた筋肉をだらしなく弛緩させ、サキコは花弁に挿し込んだままの指を引き抜いた。



美桜と翔吾が、サキコの元へと舞い戻ってきた。
思い出すのも哀しい痴態を晒し、現世へ旅立つチケットを手に入れたのに、それはむなし過ぎる帰還であった。

「おかえりなさい、美桜」

出迎えるサキコを前に、美桜は顔を項垂れさせる。
その傍らには、プカプカと宙を漂う翔吾の身体が。

「どうしてなの? どうして毎回……」

喉を絞るようにして漏らした美桜の無念は、不確かな地面に吸い込まれる。
追いかけるようにポタポタと垂らした涙は、空中でキラリと輝き、煙のようなモヤと同化する。

「これで三回目ね。少しは骨まで燃やされる刺激にも慣れたかしら?」

しかし、向き合うサキコの顔には同情の欠片も見当たらない。
フランス人形そのものの容姿で冷たい笑みを漏らすと、美桜の肩に手を乗せた。

「うふふっ、あんなに熱い炎に炙られたのに、美桜の肌ってきれい……」

「ま、待って……わたしはまだ、そんな……」

美桜はうつむかせていた顔を上げた。
素裸にされた身体の大切な二か所だけを腕と手のひらで隠すと、サキコには泣きつくような目を当てた。

「でも、いいの? このままだと死人のような彼氏と、ここで永遠の同棲よ」

「そ、そんなの……嫌……」

「でしょうね。だったら……うふふっ」

胸に押し当てられていた美桜の左腕が排除される。
へしゃげていた乳房の膨らみが、呼吸をするようにプルンと弾んだ。

「あたしとね、また愉しいことをしたらチャンスあげる」

縦向きにさせ、ぴったりと密着させていた美桜の右手のひらも脇へとずらされる。
苦渋の汗に蒸らされた陰毛が、ムクムクと起き上がり黒い繁みを回復させる。
その陰りに半分隠された女の子の割れ目は、恥じらいを見せて震えた。

「愉しいことって、なにをすれば……?」

美桜の両腕は、だらりと下げられていた。
隠すモノを失い、落ち着きのない指先だけが触れた肌を掴んだ。

「う~ん、そうねぇ……」

訊かれてサキコは考える素振りをしてみせる。
顔面だけでなく、首筋まで赤く紅潮させた美桜に、マジマジとした目線を送ると、手の甲を彼女のこめかみに当てる。
そして、焦らせるように時を稼いで……

「決めたわ、美桜。二人で愛し合いましょ。女の子どうしで気持ちよくなれるまでね」








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