第7話  あなたのためならM字開脚も平気


「ふーん、19才かぁ。意外と毛深いのね、美桜のヘアーって」

「嫌、恥ずかしい……見ないで……」

舐めるような視線なのに、それは刺々しい痛みを感じた。
ゴスロリ少女が腰を屈めるようにして、美桜の股間を覗き込んでいるのだ。

とても恥ずかしかった。
心を通じ合わせた大切な人の前でも、心が絞め付けられるような激しい羞恥を覚えたのに、よりによって同性の目の前に曝け出しているのだ。
なんとか引き立たせていた腰が、視姦の刺激だけで崩れ落ちそうになる。

「あらあら、お愉しみはこれからのに。ちゃんと立っていないと、大切な彼氏がどこかへ行っちゃうわよ」

「あぁ、立っていますから。好きなだけ見ていいですから、どうか翔吾を……助けてください」

しかし今は耐えるしかないのだ。
美桜は歯を食いしばると、震える両足に気合を込めた。
内股に変化しようとする膝関節には、厳しい喝を入れた。

「もう少しでバージン卒業だったのに。そうしたら、割れ目のお肉だってもっとパックリしてたかも」

鑑賞するサキコの顔がじりじりと近づいてくる。
黒か灰色か、無数の渦を巻くようにカールさせた髪が、先陣を切って美桜の下腹に触れた。

「くぅっ! はあぁぁっ!」

思わず腰が引けた。
惜しげもなく晒した女の花弁はそのままに、サキコの顔面とわずかな隙間を確保しようとする。

「女の子どうしなのに、美桜は恥ずかしいの?」

「は、はい……覗かれるのは恥ずかしいです」

「ふーん、だったら勘弁してあげてもいいけど……その代わりに」

「その代わり……?」

主導権はサキコが握っている。
美桜は全裸の身体を震えさせながら、オズオズと訊いた。

「オナニーして見せてよ。あたしの前でね」

そうしたら命じられた。
表情ひとつ変えることなく、抑揚を感じさせないトーンで、サキコはさらりと言ってのけたのだ。
これは決定事項と言わんばかりに顔も引き離した。

「オ、オナニー……ですか?」

美桜はまた訊き返した。

「19才なんだし、もちろん知っているわよね?」

「は、はい……それは……」

サキコは腕組みをしていた。
射貫くような眼差しをぶつけ、自慰の念押しまでされて、美桜は逆らうことの無意味さを覚えた。

「そこにベッドがあるでしょ。その上でやりなさい。股を開いて、あたしによーく見える格好でね」

サキコの瞳が真横にスライドする。
美桜は強張った首の関節を捻らせて、それを追った。
白いモヤの中に浮かぶベッドをなんなく見つけた。

「美桜、するのよ」

「はい……」

躊躇する間も与える気はないらしい。
サキコに促されて、美桜は足を進ませた。
歩いているのか? 飛んでいるのか?
その区別もつかないままに、彼女は目的地に辿り着く。

金属のパイプがフレームにされた粗末なベッドを見つめて、それから足を掛けた。
薄板のようなマットが敷かれたその上へ、身体を押し上げた。

(慰めるのよ、美桜。まずは足を拡げて)

従順に飼い慣らされた心の一端が、美桜にささやいた。
あっさりと従うことを決めた美桜の身体が、しなやかに動きを開始する。

「恥ずかしいのに……」

唇だけは女の子の抵抗を示そうとする。
けれども美桜の身体は、あざ笑うようにハシタナイポーズを完成させる。
マットの上にお尻をひっつけ、立膝にさせた両足を左右に拡げた、要するに『M字開脚』のポーズである。

「うふふ、恥ずかしい恰好ね。でも美桜は、オナニーをするんだから仕方ないわね」

こちらは明らかに飛んでいた。
ドレスの裾をヒラヒラとなびかせながらサキコは浮遊し、美桜の真ん前に着地する。
相変わらず腕組みをしたまま、晒された美桜の恥部を眺めた。

「サキコ……様、どうか翔吾のこと……いえ、美桜は今からオナニーをします」

声にしてから後悔して、それでも美桜は恥辱な宣言をしてみせた。
そして、鷹揚にうなずくサキコを前に、肌に貼り付かせた腕を離した。
右手を胸前へと伸ばし、少し迷った末に左の乳房に触れさせる。
左手を割り開かれた腿を横切るように差し入れ、指先をしばらく彷徨わせてから乙女の恥部に添わせる。

「うぅっ」と、当然の呻きを漏らしていた。
零れそうになる涙は、気合を込めて阻止させた。
女の特徴である部分に当てた両手の指を動かすのだ。
出来ることなら何も考えずに、独りエッチに徹するのだ。

「感じるまでするのよ。イクまで止めさせないからね」

「あぁ、はい……んんっ、感じるまで……イクまで……美桜はオナニーを、くふぅっ」

年下のゴスロリ少女が脅すように命じて、美桜はそれを復唱する。
鼻に掛かった愛らしい声音で、あやふやなセリフに置き換えて。

(覗かれてる! あの子に美桜のオナニーを見られちゃう!)

鈍感にさせた美桜の女の子が、はっと思い出したように悲鳴をあげた。
けれども当の美桜は、淫らな指使いを止めようとはしない。

乳房を揉み込む指に握力を加えた。
女の子の割れ目に沈めた指先を、縦に鋭く往復させた。



絶頂しないと終わらない。
エクスタシーの痴態を披露させないと、たった一人のギャラリーを満足させられない。

「あん……ふぅっ、んんっ……」

それなのに、美桜の理性が控えめな喘ぎを意識させる。
どんなに感じても、本気の悦びを漏らせないでいた。

じゅにゅ、ぬちゃ、にちゅ……

「はっ、はあぁ……濡れてる、美桜のアソコ……エッチな音を鳴らしてるぅ……んくぅ」

だからだろう。
美桜は演技の嬌声を混ぜた。
夜の自室のベッドで奏でる単純なのに激しい喘ぎ。
それをアレンジさせて、男の子が悦ぶふしだらなセリフに喉を震わせた。

「うふふ、美桜ったらホントにスケベなんだね。割れ目のお肉がびしょ濡れになっているわよ」

そうしたら、サキコが話しかけてくる。
少なくとも不満はないようである。
辛辣な表現で美桜を貶なすと、一歩また一歩と滑るような足取りで近寄ってくるのだ。

「ふくぅんっ、ダメ……なのに、指がぁ……ああんっ、とまらないのぉ」

汗ばむ乳房を、右手の指がもみくちゃにしている。
柔らかく弾むような乳肉に指を沈めて、十分に尖らせた乳首をビンビンと弾いてみせる。

濃厚な水アメを塗した恥肉のスリットに、左手の指が挿し込まれている。
崩れたM字開脚の中、無造作なくらい乱暴に、ねっとりとさせた肉壁をこすらせる。

(美桜、ファイトよ。そこのゴスロリガールに、女の子のする本気のオナニーを見せつけるのよ!)

決して声には出来ないエールも、美桜は自分自身にささやきかけていた。
いつしか、空々しい演技が消滅している。
サキコという少女を盾にして、快感をむさぼる淫らな自慰に美桜は取り憑かれていた。








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