第3話  少女から大人の女へ~柔肌を晒して


神谷美桜は、都内の大学に通う女子学生である。
地方の高校を卒業すると同時に親元を離れ上京し、今は簡素なアパートで一人暮らしをしている。

おおらかで優しく、なによりも活気のある性格をしている。
おまけに、大学の構内でも噂が立つほどの美形でもある。
先月、十九才の誕生日を迎えたばかりの美桜だが、見た目の印象は幼い、或いはあどけないという表現がしっくりとくるかもしれない。
しかし、少女から大人の女へと。
少女の顔、身体つきから、大人の顔、身体つきへと。
その成長曲線の端境期に位置する彼女は、美少女と美女の両面を持ち合わせていると称しても、なんら過言ではないだろう。

そして、そんな美桜もまた年頃の女の子である。
大学での新生活の傍ら、いつしか甘い恋に落ちていた。
相手は同じ大学に通う男子学生である。
『翔くん』こと『大山翔吾』
美桜と同年齢、同学年の彼もまた、生まれ育った故郷を後にしての上京である。
高校時代まで野球に明け暮れた精悍な顔立ちの青年に、彼女は強く惹かれていくのだった。



(お付き合いを始めて六カ月記念日の今夜、あたしと翔くんは一つに結ばれるの。翔くんのお財布から七割、美桜のちっちゃなお財布からも三割出し合って、それで予約したプチ贅沢なホテルでエッチをするの。美桜は翔くんにバージンをプレゼントするの)

スル、スル……ファサ……

「あぁ……恥ずかしい……」

まるでケーキの包み紙をほどくように、翔吾の指がバスタオルを開いた。
その瞬間しっとりと汗ばんだ素肌が、冷たい空気の波に撫でられる。

「み、美桜……お前の身体、きれいだ……」

「そ、そうかな……でも、翔くんに見てもらえて……うれしい……」

翔吾は不器用な物言いで褒めてくれた。
羞恥心が物凄い勢いで自己主張するなか、美桜の方は照れ笑いをこしらえた。

「あぁ、あのね……翔くん、これも脱がせて……」

声の詰まりは、男から女へと伝播する。
広いダブルベッドを独占するように寝そべる美桜は、震える声帯をどうにか鳴らした。
そして、固く締めていた両脇から力を抜いた。
捩るくらいに閉じ合わせていた太腿の筋肉も、無理矢理に脱力させる。

「お、おい……あんまり急かせるなよ。俺はだな……」

しかしである。
肝心な翔吾の眼差しは、美桜の身体に貼り付いたまま離れようとはしない。
女の子が恥を凌いでお願いしたのに、オーケストラの指揮者のように腕を掲げたまま、石化の魔法に掛かったように全身の筋肉を硬直させている。

(や、やだぁ……覗かれてる。美桜の下着、ブラもパンツもみんな……!)

それは、ちょっぴり背伸びして購入したランジェリーだった。
いつも着けているブラジャーよりカップが浅めで、いつも穿いているパンティーより布地の面積がとても小さかった。
可憐な花柄の刺繍がデザインされているのに、その生地は破けそうなくらい薄くて、ほのかに透けている。
赤い野イチゴのような乳首も、少しフサフサ感が気になるアンダーヘアーも、恐らくは……

「翔くん……早くして……」

美桜の唇が、もう一度声を振り絞っていた。
セクシーなランジェリーに隠された姿と、全裸にされた身体と。
恥ずかしさの度合いさえも区別できないまま、ベッドに寝そべる肢体を僅かに揺らせた。

「あ、あぁ……脱がせてやるからな」

そのお陰か、翔吾に掛けられた石化の魔法は解けたようである。
固定されていた逞しい両腕が、ようやくとばかりに美桜の肌を目指して落下する。

(翔くんがあたしを……翔くんが美桜を裸に……)

美桜は背中を浮かせた。
「くふぅっ」と恥じらいの呻きを漏らしながら、利き腕をシーツとの隙間に潜らせる。

カチッ……シュル、ファサ……

それは初めての体験なのに、滑らかに進んだ。
美桜の指がブラホックを外すなり、翔吾の指が肩に引っかかるストラップをずらせた。
支えを失い乗せられるだけになったブラカップを、そっと捲るようにして取り去っていた。

「ンンッ……んふぅ……」

思わず身構えて、思わず固い鼻息を漏らしかけて、美桜は意識する。
ぷるんと弾ける乳房を目の下で追いながら、甘ったるい女の吐息を演じてみせる。

「美桜……」

両腕を少女のバストに残したまま、翔吾の目だけが真っ直ぐに下っていく。
おそらくそれは、美桜の下腹部で止まった。

(パンツも脱がせてもらうの)

女の子の本能が、念押しするようにささやいてきた。
そして「んく、はぁぁ……」と、さっきより長めに恥じらいの呻きを漏らしながら、美桜は腹筋に力を込める。
シーツの海に沈んだヒップをじわっと持ち上げる。

シュル、シュル……スス、スス……

「やはぁ、はぁ……恥ずかしい、恥ずかしいの……」

無意識な両手に、美桜の顔は覆われていた。
くぐもった声を手のひらにぶつけながら、同時に下腹部が軽くなるのを感じた。
たっぷりな男の気配と、浴びせられてヒリヒリとした視線と、激しく息衝く大好きな彼氏の呼吸の音色と。

「きれいだぞ、美桜」

(ど、どこのこと? 美桜の顔って、シャワーを浴びた後だからメイクもしてないし、スッピンだし……)

女の子にとって大切な処を覗かれているのだ。
恥ずかしい恥肉の割れ目を、たった今、翔吾の目に晒しているのだ。

それなのに、美桜は現実逃避していた。
翔吾が掛けてくれた言葉の真意などちゃんと理解しているのに、ますます火照る顔肌だけを意識しようとする。
分厚い手のひらが遠慮気味に美桜の太腿に添えられて、それでも顔の温度を下げるように被せた彼女自身の手のひらを浮かせた。

「ひゃ、はぅっ! 翔くんの指がぁ、美桜のアソコに……」

けれども、美桜の唇は正直だった。
太腿から股間の中心へと、ジワジワと這い進む指の感触を伝える。

シャリ、シャリ……チュク、チュク……

(触られてるの? 美桜の下の毛も、美桜の盛り上がったお肉も、美桜のエッチな割れ目のビラビラの中まで?)

それは経験したことのない恥ずかしさだった。
たとえ愛する人の指でも、他人の目に覗かせたことのない女の子の秘部を好きにされているのだ。

しかしなぜだろう。
胸の奥がキュンとしている。
羞恥心に任せて太腿を閉じようとしているのに、力を込めれば込めるほど反発するのだ。
翔吾の指使いを密かに期待しようとするのである。

「美桜のヘアーってさ、手触りいいよな。しなやかでフサフサしてさ」

花弁のヒダと戯れて、興味本位に小判型をした陰唇の縁をなぞって。
翔吾の指がそこに生え揃ったヘアーの毛先を摘んだ。
手のひらで撫でつけるようにもして、更には恥丘部分を覆う逆三角形の繁みにも指の腹をダイブさせる。

「あぁ、恥ずかしいの……下の毛でなんか、もっと他の処も……」

「他の処って? どこかな、美桜?」

「ひぐ、くぅっ……いじわる、翔くんの……ふぁ、イジワル……」

そしてこれは、美桜自らが撒いた種なのだろうか。
初心な仕草をしても、翔吾はれっきとした大人の男である。
その彼にからかわれるように、美桜は女の秘孔まで曝け出していくのだ。

太くて節立った指先が一本、亀裂の底の膣口をさぐった。








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