第7話    年上の男の子をリードして


「あ、あの……春夏秋冬さん。本当に……?」

「はい、淳二さん。だからわたしのことも、苗字ではなくて名前で……神楽って……」

「神楽……さん」

「うれしい。淳二さん♪」

わたしは、ベッドの端で彫像みたいに固まった男性に抱きついた。
両腕を背中の後ろでクロスさせて、お互いの身体をバスタオルを挟んで密着させる。

「ふふっ、心臓がドクドクしてる。もっと肩の力を抜いてよ。淳二♪」

「あ、ああ。こ、こうかな?」

淳二さんは、わたしから目を逸らせたまま、肩を2度3度持ち上げては下した。
言われたとおりにリラックスしようと、深呼吸も3回繰り返した。

「うん、その調子。後のことは、神楽に任せてね」

わたしは淫らなお仕事を愉しむように舌を見せた。

魂柱。それは当主見習巫女である神楽の身体を使って男の人と肌を合わせること。
もっと普通に言えば、セックスするってこと。
そうすることによって、性愛エネルギーに反応した鬼が現れるの。
それが身を滅ぼす罠だとも知らずに……

「淳二さん。見ててね」

わたしは淳二さんから離れるとベッドの脇に立つ。
そして、不安そうに見上げる淳二さんに右目でウインクすると、脇の下で堅く結んだバスタオルをはらりと床に落とした。

スルスル……ファサッ……

ごわごわしたタオル生地が過敏な肌を刺激する。
瞬間、神楽の女の子がちょっとだけ恥じらいを浮かべた。
同時に、淳二さんの目線が下から上へと駆け上がって、急降下するようにダブルベッドに落ちている。

「ど、どうかな? 神楽の身体。これでもプロポーションにはちょっぴり自信があるんだけどな、ふふっ」

唇の端に悪戯っぽい笑みを浮かべて、生まれたままの姿で1回転する。
神楽自慢のバストも、これ以上成長して欲しくないヒップも、経験済みだけどやっぱり覗かれるのはちょっと……の秘密の場所も……

「…… ……」

でもトランクス1枚の姿で、反省するようにうつむいたまま正座している淳二さん。
さっきはちらっとだけど、神楽の身体を見てくれたのに……
わたしは、そんな彼が5歳も年上なのに、逆に5歳も年下に思えて……これって母性本能なのかな?
胸の奥がキュンとなるのを感じた。
同時にいつまでも彼の心に住み続ける京香さんを、ちょっぴり羨ましくも感じた。

「あのね淳二さん。こんな格安ホテルで、そのぉ……あのぉ……エッチすることに抵抗あるかもしれないけど、これもあなたのためなの。ね、わかって。こんなわたしだけど、好きでもない人とエッチするのって苦痛だと思うけど、お願い! 神楽を抱いて! セックスして!」

「あ、あぁっ……か、神楽さん?!」

わたしはベッドの真ん中で淳二さんを押し倒していた。
そのまま、彼の上に身体を乗せて唇を合わせる。

「ちゅっ、うむぅぅっ。淳二さん……お願い……はんむぅ、神楽を……」

戸惑いと気後れの表情のまま、淳二さんも舌伸ばしてくる。
わたしは唇の隙間を開いて彼の舌を受け入れると、お返しに神楽の唾液を流し込んであげた。

「おいしい? ちゅぷぅ、ちゅぷ。飲んで♪ 淳二さん。んむぅ、神楽の飲んで♪」

「はぐぅ、はむ。君のこと嫌なんかじゃない。嫌じゃないけど……神楽さん、すまない。君をこんな形でなんて……ちゅぶ、ちゅぱ」

「そ、そんなこと……むちゅぅぅ、気にしないで。これもお仕事……それに、わたしたちの使命だから。はぐぅ、そんなことより、神楽のおっぱいを弄ってよ。ねぇ、触って……ほら♪」

名残惜しそうに唾液の糸を引く唇を別れさせて、淳二さんの腕を掴んだ。
背中を反らせて空間を作ると、おっぱいへと誘導してあげた。

これじゃ、まるで淫乱娘。
わざと部屋中に響くようにおっきな声で、エッチ大好きな女の子になりきって……
乗り気じゃない年上の男の子をその気にさせて……
神楽は、バージンを失ってから?回目のセックスをしようとしている。

毎回違う相手と、未熟で大人の世界なんて全然知らないのに、それなのに毎回神楽がリードして、セックスしないといけないの。
これが春夏秋冬家に生まれた者の定めだから。
ひとり娘としての覚悟だから。
恥ずかしいけど見守っていてね、お母さん。

「はあぁ、ふぅん。上手よ、淳二さん……ああぁ、優しくて……きもちいいよぉ。もっと、神楽のおっぱいを揉んで! 揉んで気持ちよくしてぇ……はうぅぅっ」

わたしは、両手を使って乳房を揉む淳二さんを励ました。
まだまだギコチないけど、時々指先に力がこもって神楽のおっぱいに痛みが走るけど、いいの。許してあげる。
だって彼、一生懸命なんだもん。
これから始まる辛い経験を乗り越えようと必死なんだもん。
だから、もっと神楽のおっぱいをオモチャにしていいよ。
硬くなった乳首もつねっても構わないから。
気持ちいい!って叫んであげるから。

カタカタとベッド脇に置いた観鬼の手鏡が揺れた。
午前零時を過ぎたホテルの廊下にハイヒールの音が響いてくる。
コツコツと小さな音だけど確実にこの部屋へと近づいて来る。

淳二さんは、わたしのバストに夢中になってまだ気付いていない。
わたしは、部屋の隅に備え付けのワードローブに目配せをする。

頼むわよ、お父さん。
いいえ、今は『輪廻の霊媒術師 春夏秋冬 四巡(ひととせ しじゅん)』だったよね。


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