第6話 人妻はナイスバディ! 「お、おい雪音。僕はまだ……」 「なに言ってるのよ。お父さんも見たでしょ、あの人の涙。あたし、ピーンときちゃったの。久藤さんの写真は売れるって…… 後は、超一流カメラマン北原武雄……じゃなかった、ピンクの傀儡子の腕の見せ所でしょ。がんばって、お父さん♪♪」 あたしは、乗り気じゃない手つきでカメラの準備をするお父さんを、思いっきりおだててあげた。 そして、大急ぎで撮影の準備を進める。 「お父さぁーん、天井の照明は何色にするの~?」 「そうだな。暖かみを表現したいから薄いオレンジで……」 これで準備OKと……あとは…… 「あの……律子さんで、いいですよね。どうぞ、こちらへ」 スタジオの片隅で身を固くする律子さんを、カメラの待つオレンジの世界へと促した。 彼女はコクンとうなづくと、青ざめた表情のままぎこちない足取りで歩いていく。 無理もないわね。 取り敢えず相談に来たつもりが、あっという間にヌード撮影だもんね。 それも、見ず知らずのあたしたちに見られながら…… 多分あたしだったら……って、ダメダメ! 今はお仕事に集中しないと……! 「そ、それでは、最初は服を着たままで……」 カシャッ、カシャ、カシャ、カシャッ…… お父さんが色々とポーズを指示しながらシャッターを押していく。 でも、相変わらず律子さんの表情は石のように固まっちゃって、作ってる笑顔も笑っているというより泣いている方が様になっている。 「では下着姿になってくれませんか? そ、そうですね……ブラジャーとパ、パ……パンティーだけに……」 自称超一流カメラマンのくせに、声が裏返っている。 あたしは脱衣かごを律子さんに差し出すと、スタジオに隣接する一応更衣室を指差した。 「どうされます? ちょっと狭いですが更衣室はあちらにございますが……」 「いえ、できればここで。ふふ、変でしょう? でも、この場所を離れたら私……多分2度と戻って来られないかも」 律子さんがあたしに笑いかけてきた。 ホッペタの上端に可愛らしいエクボを浮かべて…… そして、さっと顔を引き締めると、留めボタンの部分がフリルになった三角襟のシャツを脱いでいく。 細くてしなやかな指がフリルの上を撫でるように降りていくと、中から汗に光る白い肌が顔を覗かせた。 「はぁー」って、律子さんが辛そうな息を吐く。 吐き終えて、きゅっと口を閉じると、はだけたシャツを肩ぐちから脱ぎ去った。 そのまま休むことなく、指はスカートのホックを緩めた。 ひざ下の薄茶色のスカートが、両手の指に促されるように引き下ろされていく。 ストッキングを着けていない吸い付きそうな肌が露出されていく。 「きれい……♪♪」 「ああ、素晴らしい♪♪」 ベージュ色のブラジャーとショーツだけになった律子さんの姿に、どちらともなく感嘆の声をあげた。 お世辞なんかじゃない。本心で…… だって律子さん、別人みたいに見えるんだもん。 胸の谷間を意識しなくたって強調できるバストに、全然脂肪の付いていないウエスト。 肉感的な太ももに大きく膨らんだヒップ。 きっとこういう体形を着痩せするタイプって言うのね。 あたしも、将来はこんな女性になれたらなって、嫉妬混じりの溜息まで吐いちゃった。 「あ、あの……急なことだったのでこんな下着ですが、よろしいでしょうか?」 律子さんは、声を震わせながら立っている。 背中を猫背にして片手で胸を押さえて、もう片方の手のひらでしっかりと大切な処をカバーしている。 「え、ええ。却ってその方が自然体の主婦って感じが出ていいと思いますよ。では、僕の指示に従ってくださいね」 「は、はい……お願いします……」 身体に貼り付いていた両手が引き剥がされる。 さっきまで真っ青だった顔を、今度は真っ赤に染めながらお父さんの声に従いポーズをつけていく。 カシャッ、カシャ、カシャ、カシャッ…… 「次は、横向きのままケンケンするように片足を上げて……そう。つま先を後ろに跳ねる感じで……」 まるでお転婆娘のように、右足を後ろに跳ね上げたままの姿勢で律子さんがカメラを振り返っている。 太ももが前後に大きくひらかれて、薄いショーツの生地から大切な処が透けて見えている。 上体をひねったせいで、ブラジャーの隙間から豊かな乳房も顔を覗かせている。 「いいよ! そのまま……そう、そのまま悪戯っ子みたいに笑って! うん、最高!」 カメラを操作するお父さんの声が変わった。 目が輝いて、声まで輝いて、あたしの脳裏に嫌な思い出がよみがえってくる。 「次は、下着も全部、取っちゃっいましょうか?! 雪音、買い物かごを持って来て……!」 ほらやっぱり! ピンクの傀儡子が覚醒しちゃった?
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