第13話  糸を引いて、淫語を口にして


「ひうぅっっ! はぁ、はうぅっ……負けない! 負けないからぁっ!」

わたしは前のめりになりかけた手足を踏ん張らせると、お腹に力を込めた。
アソコにも気合いを入れて、クリトリスの根元に絡んだ糸をクイクイと引いた。
腰を揺するたびに、敏感なお豆が千切れそうになる。
涙腺が決壊して熱いモノが目尻を垂れてるけど、それがどうしたのって顔で両手を引いた。両足も引いた。

「うはぁっ! お姉ちゃん……止めてよ、もう……諦めてよ」

わたしが引いて、孝太が泣きそうな声を漏らした。
1メートルくらいの距離を置いて、その中間に記されたチョークのラインにまで巻き返してみせる。

「あらぁ、ダメじゃない孝太。そんな大きなモノをぶら下げて、遥香のお豆に負けてどうするのよ。あ、そうだ! 綱引きなんだから掛け声を出しなさいよ。そう、孝太は男の子なんだから、オチ○チンって叫ぶのはどうかしら?」

「ナイスアイデアだ、千津子。さしずめそれだったら、遥香は女だから、オマ○コでいいな。ほら二人とも聞いただろ、連呼しながら糸を引くんだ!」

お義父さんはそう命じると、ピンと張った糸に指を当てた。
爪の部分を糸に密着させてから勢いよく弾いてみせる。

「ひぃ、ひぐぅっ……お、オマ○コ……オマ○コぉ、オマ○コぉっ!」

「あぁ、あぐぅっ……お、オチ○チン……オチ○チン、オチ○チンっ!」

わたしが禁句の四文字を口にして連呼して。
孝太も一緒になって、やけっぱちな声で叫んでみせて。

こんな惨めな綱引きをいつまで続ければいいの?
悦んでいるのは、身も心も引き裂かれる痛みを知らない二人連れだけ。
そんな淫らで哀しい糸引きを、わたしと孝太はどうして見せなくちゃいけないの?

「うくっ、グッ……オマ○コ、オマ○コぉ、オマ○コぉっ!」

「お、お姉ちゃん、きつい……オチ○チン、オチ○チン、オチ○チンっ!」

疑問と虚しさがごちゃ混ぜになって、頭の中を駆け巡っている。
わたしはノタウツような痛みと闘いながら、答えを探して顔を持ち上げた。
目を閉じたままの孝太も、わたしの気配を感じたの? 顔をこっちへ向けた。

辛いよね、孝ちゃん。
お互いに恥ずかしい処をすべて晒して、こんなバカなことをさせられるなんて。
でもね、クリトリスがもげそうなくらい痛くたって、この糸で孝ちゃんのオチ○チンと繋がっていると思うと、なんだか不思議な気分。

口を開けば、孝太もわたしも禁句の単語しかしゃべらせてもらえない。
だからこうして、アソコとアソコを結んだ糸を糸電話みたいにして、想いを伝え合っているの。
お義父さんやお義母さんに気付かれないように。

そしてわたしは、勝者を意識して腰を思いっきり引いた。
「オマ○コッ!」って汚れた声で絶叫しながら、クリトリスが千切れるんじゃないのかって。
そんな覚悟で腰を何度も何度もしゃくってみせた。

「クッアァァッッ! オマ○コッ、オマ○コォッ、オマ○コォッッ!!」

だけどその想いは、孝太も同じだった。
ギリギリと歯を噛んで、わたしの腰運動が息切れするのを見計らって、ずるずると手足を動かした。
グイッグイッと勢いよくじゃなくて、ジワァッと遥香のクリトリスが痛まないように優しく、でも力強く!

「んぐぁっ! オチ○チンッ、オチ○チンッ、オチ○チンッッ!!」

孝太の声が涙で擦れた。
わたしは孝太の心の叫びを鼓膜で拾いながら、手足を滑らせていた。
頼もしい孝太の声に導かれて。逞しく感じる孝太の心に打たれて。
遥香のクリトリスを労わりながらリードする、孝太のオチ○チンにもちょっぴり惚れて。



「決まったな」

「孝太、鞭打ちの覚悟はいいわね」

全てが終わって、全身から汗を噴き出させているわたしと孝太を、この人達は見下ろしていた。
運動もしていないのに、鼻息だけ荒くして顔を紅潮させて、落ち着かないようにツマ先を持ち上げては床に下ろして。

「遥香、アンタは部屋に戻ってもいいんだよ」

「いえ、ここに残ります」

わたしはコンクリートの床の上で正座すると、お義母さんを見上げた。

「お願いがあります。せめて孝太の傍にいることをお許しください」

上目遣いにそうお願いをすると、堅い床にオデコを擦りつけていた。
この人達のOKが出るまで、いつまででもそうするつもりで。
今の遥香に出来ることは、これくらいしか残されていないから。

「いいだろう。孝太が鞭で打たれている間、寄り添ってやるんだな。その代わりだ。遥香、お前がカウントするんだ。わかったな」

空から降ってきた踏ん反り返った声に、わたしは頭を持ち上げると大きく頷いてみせる。
そして、お義母さんによって四つん這いにさせられた孝太に近寄ると、何も言わずにほっぺたを背中に当てた。
微かに震えている汗ばんだ肌に唇までひっつけて、その時を静かに迎えた。

びゅいぃんんッッ! ピシィィッッ!!

「うぐゥゥッッ! ンアァァッッ!」

「1回ィッ!」

孝太が絶叫して、わたしは喉が裂ける思いでカウントを始めた。
これが地獄なんだと、瞳と鼓膜に焼き付けながら。



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