第2話 舌を絡めておっぱいを揉みあげて


陽に焼けた肌を、人気の無い校舎の空気が撫でる。
心地良いというより、ちょっぴり後ろめたい気分まで味わいながら、治彦は教室の引き戸を開けた。
すると、その脇をすり抜けるようにして、松葉杖を器用に扱う智花が薄暗い室内へと。

「誰もいないね」

「誰かいたら、どう言い訳を言うつもりだよ?」

「その時は……そうね、『体育祭でいっしょうけんめいに汗を流すクラスメイトを見てたら、変な気分になっちゃいました』とか」

「それじゃ、俺たちって変態だろ」

「そうよ、治彦ってフェチな変態さんだもん。ついでに、その彼氏とお付き合いしているつもりのあたしも……」

智花は顔を伏せた。
卓球台のように大きな化学実験用の机に片手をつくと、脇に挟んだ松葉杖を離した。

「こっちに来て」

智花が呼んだ。
うつむいたままの体操服姿の少女に、治彦は無言のまま吸い寄せられていく。

「もう、待たせすぎよ」

「そうかな」

お互いに向かい合っていた。
カーテンが引かれ、秋の木漏れ日が薄く射しこむ中で、治彦は見つめた。
智花もまた顔を持ち上げた。
頭一つ分は差のある彼氏の表情を、下から覗きこんだ。

「キスして」

「キスだけでいいのか?」

「治彦のいじわる。でも……」

黒くて大きな瞳が泳いでいる。
こんがりと日焼けした智花の顔が、わずかに傾いでゆき……

「じゅば、じゅぶっ……」

「むぅっ、ふむぅ……急になんて……ちゅぶ、ひきょうよ……」

そらされる寸前の少女の顔に、武骨な少年の顔が圧しかかる。
不安定に揺らいだ少女の身体を、それなりに逞しさを装った少年の腕が支えた。

「う、ふんっ……ちゅにゅ、ちゅる……」

薄い唇を割るように、分厚い唇が交わっていた。
男の匂いをまぶした舌が、女の子の香りに包まれた舌に絡みついていた。
決して怯えはしない。
嫌がりもしない。
そんな健気で柔らかな舌の肌へと、湧き出させたはぜかりの唾液を治彦は撫でつけていく。

「はふむぅ、治彦のつば……おいしい……」

細い喉がコクリと鳴った。
もてあそばれる一方の智花の舌が、今度は積極的に吸いついてくる。

「ぶはぁ……智花、いいよな?」

「そのつもりなんでしょ」

お互いの口の中を舐め合い、二人分の唾液をミックスさせ、治彦は訊いた。
幾筋もの細い糸を唇と唇のすき間に渡し合いながら、智花が拗ねた声で答えてくれた。



「足の方はだいじょうぶなのか?」

「うん、治彦が支えてくれてるから平気」

実験用のテーブルに、智花は両手をついていた。
その彼女の腰を片腕に抱かせて、治彦は眺めた。
ポニーテールにまとめられた頭が、細やかに揺れているのを。
髪の生え際から露わにされるうなじの肌が、ひそやかに汗ばんでいるのを。

緊張しているのだろう。
もしかして、興奮しているのでは?

次第に後者へと憶測の比重を移しながら、治彦のもう片方の腕が伸ばされる。
背中を向ける智花の身体を指先でなぞりながら。
回りこませながら。
豊かな盛り上がりを見せる彼女の胸元へと。
白シャツに覆われたバストの膨らみを、辿り着かせた指に触れさせる。
ツンと突いてから、5本分の指先を柔らかな肉に埋めた。

「おい智花、ブラジャーはどうしたんだ? まさかノーブラで、これまで……」

「ブラジャーはね、着けてくるのを忘れちゃったの。智花って、そそっかしいから」

しっとりと湿るシャツの生地越しにも、ごわごわとした女性専用のランジェリーの感触は見当たらない。
そんな智花の胸にぴったりとしがみつく治彦の腕は、ほっそりとした指に掴まれる。

一瞬、華奢な女体がぐらりと揺れた。
慌てて彼女の腰を支え直す一方の腕をよそに、バストと戯れていた男の指はスルスルと下ろされる。
細い指にエスコートされるまま、引きしまった腹筋を感じる女の子のへそのあたりへと。

「おっぱいを生で触って欲しいの。だからこれを……」

「お、おう……わかった……」

男らしく返事をしたのに、声が上ずっていた。
治彦は喉を潤すように、女の子の匂いが混じる唾液をごくりと飲み干した。

急に汗ばんだ指先に、白シャツの裾を摘ませる。
導いてくれた智花の指が姿を消す中、節だった男の指だけでそれをまくり上げていく。

「あぁん……ヒンヤリしちゃう」

智花が背中をくねらせた。
素肌に密着する上着がズルズルと引き上げられ、治彦の目の前にも、女っぽい背筋のラインがはだけさせられる。

「プルンプルンしてるぞ。智花のおっぱい……」

男の腕力で裏返せば拝めるかもしれない。
けれども治彦は、その感触を手のひらだけに味合わせた。
高校3年生。
18才になったばかりの、青々しさとまろやかな張りを同居させた丸いふくらみを、やわやわと揉みしだいてもみせる。

「はあぁ、くすぐったいけど……いい気持ち……」

「俺も……すげぇ、気持ちいい……」

智花の背中へと、治彦は己の身体を重ねた。
首のあたりまでたくし上げられた白シャツにアゴを乗せると、彼女の腰を支える腕も誘い出し、両手で二つのふくらみを捏ねまわしていく。

「んふぅ、もっと強く揉んでぇ……乳首もお願い……」

智花が鼻を鳴らした。
自らおねだりもしてみせ、背中のラインを反らせた。
バストが自然な形で突き出されていく。
太くてがっしりとした指が、餅肌の乳肉に吸いついていく。

「ブラをしてないから、カチカチに尖ってるぞ。智花の乳首」

「ひくぅ、んんっ……言わないで、そんなの……恥ずかしい……」

「朝からこの格好で、他の男子には気づかれなかったのか? 『おっ! 浅井ってノーブラじゃん』とか」

「あふぅ、もしかしたら気づかれちゃったかも……乳首、弾かれるとジンジンしちゃうぅっ!」

治彦の身体の下で、智花の身体が跳ねる。
充血し硬くさせても、それでも野苺のように愛らしい蕾を刺激され、切なげな大人の喘ぎを吐き洩らす。

「ジンジンしてるのは、おっぱいだけじゃないだろう。こっちの方も……」

摘まんでは、揉みあげて、いつまでも戯れていたい乳房である。
蕩けるまで愛撫し、智花の喉からハシタナイ歌声を響かせたい、そんな白桃のような乳肉である。

(あと二十分か……)

治彦の目が、黒板の上にかけられた丸い時計を見やった。



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