官能小説『隣人 改』
しょうた&リレー小説参加者の皆様

※第1話~第2話はしょうたさんの直筆により、
第3話以降はリレー小説の皆様の合作によります
編集はしょうたさんです



第19話

「ふぅ~」
 殺していた息を大きく吐き、ドアに寄りかかった。
 雲ひとつ無い水色の春の空を眺めながら、これからどうすべきか考えはじめる。
 久美一人だけならば、迷うことなく鍵を取りに伺えるのだが、みどりもいる。さっきの二人の会話から察すると、きっと久美はお昼を食べに俺が来るということをみどりに伝えるだろう。
 それで、みどりはどうするか?
 遠慮して帰るか……いや、久美は気にしなくてもよいと言っていたから、きっと、みどりは帰らないだろう。
 本当は久美と二人きりで昼食を食べたいのだが……きっと、久美も同じだろう。
 しかし、久美はみどりと約束していたし、このためにみどりは久美に頼まれたというケーキを買ってきたらしいので、そんなみどりを他に予定ができたからって帰すわけにはいかないだろう。
 俺が来るから、みどりに帰ってくれとなると、みどりは間違いなく俺と久美の関係を疑うことになるだろうし。
 みどりが立ち去る可能性は極めて低い。
 これ以上考えても無駄だ。 
 ここは久美の家に行くしかないようだ。
 しかし、このトレーナーにスゥエットという格好でみどりに会うのは気が引きる。
 それに、さっきスゥエットパンツの前部、丁度、勃起した肉棒の先端が位置したところに染みができていることに気づいた。
 染みを隠そうにも、丈の短いトレーナーだから、それもかなわない。
 当然、鍵を持っていないので、家にはいれず、着替えることもできない。
 いや、みどりにあう前に着替えられるかもしれない。
 久美のうちに行き、インターホーンを押せば最初にでてくるのは久美に違いない。
 その時に、久美にキーケースを探してもらい、受け取れば無事家に戻り、着替えて出直すことができる。
 キーケースは寝室にある可能性が高いと思うから、きっと久美がすぐに見つけてくれるだろう。

 俺は覚悟を決め久美のドアの前へ行き壁の横に備え付けられているインターホーンのボタンを押した。
(……あれっ?)
 ボタンを押したが、スピーカーからは受話器を取る音すらしない。
 ここに二人がいることはわかっている。
(んっ?)
 アルコープの天井にある排気口から石鹸か、シャンプーの甘い香りが漂ってきた。それにガス給湯器が点火している。
 そうだ、久美はシャワーを浴びるといっていたから、久美にチャイムの音は聞こえていない。
 一方、みどりは訪問者が来たのはわかったはずだが、さすがに、家のものではないので、インターホーンをとることをためらっているのだろう。
 仕方がない。もう少し時間をおいてから、チャイムを鳴らそう。
 そう思ったとき、スピーカーから受話器をとる音がした。

「どちらさまでしょうか?」
 久美ではなく若妻の声だ。
「あっ、すみません。お隣のものですけど……」
「え、お隣の……あ、吉川さんのご主人?」
「えっ、えぇ、そうです」
「あ、わたし、隣の松木ですけど。久美さん、いえ、森崎さん今シャワー……あ、いえ、ちょっと手が放せないん状況なんですけど……どうしましょう?」
「あぁ、そうですか……わ、わかりました、また後ほど伺います」
 みどりに鍵のことを尋ねても仕方がないし、説明するのも面倒だと思い、手短に返答しここから立ち去ろうと思った時、
「あ、待って! ちょっと待ってください。今、久美さんに替わります」
 と、みどりが早口で言い、二人の女性の会話が微かに聞こえた後、久美の声がした。




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