第1話“結婚詐欺”

折原真美は22歳、昨年短大を卒業し東京の中堅商社に入社して一年ほど過ぎた。
真美の実家は山梨県で小さな町工場を経営していた。
真美は親の工場の経営状態があまりおもわしくないことはわかっていた。
親に少しでも仕送りができるようにと真美は夜も麻布のキャバクラでアルバイトをしていた。
その店の常連客に西島五郎という30歳前後のハンサムな男性がいた。
銀座で宝石店を経営しているらしい。
西島はいつも真美を指名し、真美も西島に好感をもっていた。
そんな西島に誘われ交際を始めて1ヶ月ほどになった。
西島のやさしさに真美はどんどんひかれていった。
西島は真美と結婚を前提につきあいたいと話してくれたのは1週間ほど前のことだった。
そんなある日、いつものように西島が店にあらわれた。
「真美、今日店が終わったらつきあってくれ、店の前でまっているよ」と西島はニコッと笑った。
真美もあわせるようにニコッと笑ってうなずいた。
店が終わって真美は外に出た。
店の前に西島の愛車ベンツS320が停まっていた。
「おまたせ!」と真美は助手席に乗り込んだ。
車は新宿の方へと走った。

「真美、明日は日曜日だから会社休みだね、二人でモーニングコーヒー飲みたいね」
「あら、五郎さん・・・・・そんな」
真美は恥ずかしそうに顔をうつむけた。
「ねぇ、いいだろう、結婚だって約束したじゃないか」
真美は黙っていたがゆっくり五郎の方に顔を向け軽くうなづいた。
それから何分か走って車はあるラブホテルにと入った。
その夜真美と五郎ははじめて肉体関係をもったのだ。
真美は五郎の腕の中で余韻に浸っていた。
「真美、君のご両親に来週頃合いに行って結婚のお願いをするよ、真美も一緒に行ってくれるね」
「えっ、本当に・・・・・・うれしい」と真美は五郎の胸に顔を埋めてきつく抱きついた。
「ところで真美お願いがあるんだ、今度ある商社から2億円ほど宝石を仕入れることにしたんだけど、保証人が必要で成城にいる父になってもらったけど、もう一人必要なんだ、父だけでも十分なんだけど一応もう一人書かなきゃいけないので真美、名前だけ貸してくれないかな」
「えっ、私なんかじゃダメじゃないの」
「いいんだよ、うちの父は資産が10億以上あるから誰でもかまわないんだ」
「それならいいわよ」と真美は安心して答えた。
「五郎さんのお父様大金持ちなのね、私みたいなものでいいのかしら」
「心配ないよ、父には君のことはすでに話してあるんだ、父も僕が好きになった人なら誰でもかまわないよと了承済みだから」
「えっ、もう話していたの」
「君と会った時から僕は決めていたんだ、この世の中で僕の妻になる人は真美以外にはいないよ、もうすぐ君も社長夫人だね」と五郎は笑った。
その翌日五郎が持ってきた保証人承諾書になにも見ないで真美はサインし捺印したのだ。

それから数日後、真美に矢沢商事という会社から電話が入った。
「折原真美さんですか、こちら矢沢商事ともうしますが西島五郎さんをご存知ですよね」
「は、はい、なにか」
「実は西島さんの会社が昨日不渡りを出しまして社長が失踪してしまいました。折原さんが保証人になっておりますのでお電話差し上げた次第です。今日会社が終わりましたら一度当社の方へご足労願いたいのですが」
「えっ、それは本当ですか・・・・・・・」
真美の顔が青ざめた。
「でも、お父様が保証人になっているはずですが」
「えっ、折原さんお一人だけですよ」
その言葉に真美は愕然とした。
その日真美は渋谷にある矢沢商事という会社に向かった。
その会社は古びた三階建てのビルの三階にあった。
地下がクラブ地下牢というSMクラブ、1階がアダルトビデオショップ、2階がSMグッズショップになっていた。
真美はおそるおそるドアをノックした。
「どうぞ」と中から声がした。
ドアを開けて入ると数人のヤクザ風の男と二人の女事務員がいた。
「折原さんかね」と一人の男が近寄ってきた。
「は、はい」
「待っていたよ」とその男は真美を下から上まで舐め回すように眺めてニヤリと笑った。
「社長がお待ちだ、こっちへ来てくれ」と男は真美を奥の社長室へと案内した。
「やぁ、折原さんですか、まずお座り下さい」と矢沢は真美に言った。
「大変なことになりましたね、折原さんあんたも災難ですな」と矢沢はニヤリと薄笑いを浮かべた。
「私、二億円などとてもお払いできません」
「えっ、二億円・・・そんな大金じゃありませんよ、うちから融資したのは二千万ですよ」
「えっ、宝石を仕入れたのじゃないのですか」
「違いますよお金を融資しただけですよ、あなたうまく騙されましたね、あの西沢というやつは前にも結婚詐欺でバクられたことがあるんですよ、しかし、どんな理由がありましても保証人になった以上当社としては保証してもらいませんとね・・・・どのようにお支払いただけますかね」
真美はうつむいたまま黙っている。
「折原さん、黙っていては始まりませんなぁ、三日以内に全額耳をそろえてお返しいただかないと会社やご両親にも迷惑がかかることになりますよ」
「ま、待ってください、親には言わないで下さい」
「じゃあ、払ってもらえるのですね」
「三日以内に二千万はとても無理です、明日二百万はお支払いたします、残りは少し待っていただけないでしょうか」
真美は頭を下げお願いした。
「うちも資金繰りがいい方じゃないものでしてね、遊ばせておくほどの金の余裕はないんですよ、待つことは出来ませんね」と矢沢は冷たく断った。
真美は青ざめた顔をうつむけ黙っている。
「折原さん、仕方ないですね、ご両親から払っていただきますか」
「それだけは待って下さい」
「じゃあ、払っていただけるのですね」
「とても二千万は私には無理です」
「そう言われましてもこちらも困りますよなんとかしてもらいませんとね、どうしても払えないのであればこのビルの地下で働いて返してもらう以外ないですね」
「えっ、地下で」
真美の頭にSMクラブの看板が浮かんだ。
「なにをするのですか」
「ショーのモデルになってもらえば一日5万円になりますよ、そのほかいろいろありますよ頑張りしだいでは一日20万位も稼げますよ、どうですか」
真美の頭の中は混乱した。
「折原さん、私からマスターに一日20万以上になるように交渉してあげますよ、どうですか」
真美には承諾する以外道はなかった。
真美は顔を上げると「わかりました、お願いします」と目に涙を浮かべ答えた。
「但し、一日20万以上稼ぐにはつらいこともありますが大丈夫ですね」
真美は軽くうなずいた。
翌日朝、真美は会社に退社願いを提出しそのまま退社した。



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投稿官能小説(3)

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