<第29話:遊戯開始>


「皆川様?」

姿見の前に立つ幸雄は、祐佳に呼ばれ、ハっとしたように振り返った。
オフホワイトのスカートスーツに身を包む祐佳が、持ち前の優雅な雰囲気を漂わせながら、サブベッドルームへと繋がる扉の前に立っている。

「お支度が整うまで、こちらでお待ち下さい。本日ご一緒しますお二方は、もういらっしゃっておりますので、ご歓談でもどうぞ。」

祐佳が扉を開き、中に入るよう促す。
妄想が過ぎたか。内心苦笑しながら幸雄はサブベッドルームへと入っていった。部屋へ入ると、見知った2つの顔が並んでいた。
1つは佐藤隆。年は幸雄より少し上だったと思う。少し白髪の混じった男は、見上げるほどに体が大きい。元軍人だったと聞いたことがあるが、納得である。何せ、普通の女くらいなら片手で軽々と持ち上げてしまうほどの怪力なのだから。
もう1つは戸田祐樹。彼は幸雄と同い年だったと記憶している。体格的にも幸雄と同じくらい。ただ、物言いが非常に粗野な人間であった。相手を威圧するくらいの大きな体をしている隆の物腰が柔らかなのとは対象的である。

幸雄は、二人が腰を下ろしているツインベッドに並ぶようにして同じく腰を下ろした。

「今日のご馳走は、このホテルのフロントさんだそうですね。」

隆が口を開いた。

「えぇ。チェックインの時に拝見しましたが、なかなか美味しそうでしたよ。高級ホテルらしい上品な制服姿で、スカートの裾から伸びるパンスト脚、それに足元を彩る黒革のパンプスが美しい。間違いなく最高のご馳走でしょうね。」

「最高のご馳走と言ったら、及川祐佳の方が美味しそうじゃない?ナビゲーターとか言いながらすまし顔で白スーツ着てさ、あのパンスト脚なんか絶品だろ。エナメルパンプスごと食いついてベチャベチャになるまで嘗め回してやりたいよ。」

幸雄の言葉を継ぐように発した祐樹の言葉、彼も同じような妄想をしたかと幸雄は内心苦笑していた。

「ラメの効いたアイシャドウばっちり入れて、唇はグロスでテカテカさせて。まるで食べて下さいと言わんばかりの顔だし。 あんなモデルみたいな顔した及川祐佳でも、嘗め回したら化粧が剥げて中を曝け出すだろうし。
 1回やってみたいんだよね。上品ぶってナビゲーター気取ってるあの女を襲って、スーツ姿のままヒーヒー泣かす遊び。時遊人コーポレーションの社長さん、1回で良いから及川祐佳の身体を楽しませてくれないかなぁ。」

「まぁまぁ、ああいうバッチリメイクは剥がれると違う顔が出てきちゃうかもしれませんよ。」

隆の言い分も最もである。仕事用に毛穴が見えないほど濃い化粧をしてる女は、それを嘗め回して剥いでいくと、素肌の粗とか赤味とかが露出して、中味は案外フツーの顔だったりする。まぁ、そうやってメッキを剥がすのが面白いのだが。

「私は、あのインナーを引き裂いて中に隠された胸を見てみたいですね。ブラを外したらどんな大きさのどんな形が出てくるか。」

幸雄は、隆の力なら祐佳のインナーを素手で引き裂くことも不可能ではないと思った。何せ、彼の怪力は半端ないのだから。

「コンコンコン。」

扉を叩く音がした。間もなく扉が開かれ、玄関ホールから祐佳が姿を現した。

「お待たせしました。お支度が整いましたので、ご案内致します。こちらへどうぞ。」

オフホワイトのスカートスーツ。ナイロンの薄い皮膜に包まれた美しい脚。照明を反射して輝くエナメルパンプス。持ち前の優雅な動きで祐佳が三人をリビングルームへと誘導する。
祐佳の身体を楽しむ話に花を咲かせていた三人である。目の前に現れた祐佳の頭から足先までを、まるでご馳走でも愛でるかのように見ていた。

リビングルームに入った三人は、直ぐに美香の姿を目にした。
綺麗に作られたシニヨン、グレーのアイシャドウが入った目元、軽いグロスの効いた唇、上品な顔である。黒ジャケットのVゾーンからはスクエアネックの白いカットソーが覗き見られ、鎖骨が浮き出るほど綺麗なデコルテが三人を惹き付ける。
下半身には黒のタイトスカート。そしてベージュのパンストに包まれた二本の綺麗な脚が伸び、足元は黒革のパンプスが輝いている。流石はパノラミックホテルのフロントと思わせる優雅さである。

ただ、何時もと違うのは、三人の前にいる美香は、立ち姿ではないことだった。
ソファーに囲まれたガラステーブルの上に背中をつけて仰向けに寝そべり、両腕と両足を床に向けて下している。
そして、両の手首と足首には手錠がされており、ガラステーブルが床に下ろす四本の脚と繋がれている。
そう、美香は制服姿のままリビングルームにあるガラステーブルの上で磔にされているのだ。

「それでは皆様、時遊人倶楽部にお集まりいただき有難うございます。本日、皆様のご案内をさせていただきますナビゲーターは私、及川祐佳です。もっとも、皆様常連さんですのでご存じかと思いますが。」

ガラステーブルに張り付けられている美香を囲むように立った三人の前で祐佳が挨拶を始めた。と言っても、彼女が言うとおり三人とも時遊人倶楽部の常連。今更挨拶もという感じだが。

「本日、皆様にご提供いたします商品は、この界隈で最高級に位置付けられるクラシカルパノラミックホテル日本橋のクラブラウンジでフロントを務めます美しくも若き女性、金沢美香26歳。
 ご覧の通り、パノラミックホテルフロントの制服を身に纏い、皆様に自慢の身体を賞味いただくべく、準備万端整っております。」

悲しげな顔で目を軽く瞑り、今の状況に耐えているという感じの美香。閉じた瞼は、仕事用に施されているダークグレーのアイシャドウ全体を三人の前に見せ、ラメを煌めかせている。
抵抗した形跡は無いので、大人しくこの姿にされたのであろうが、何とも哀れな姿だ。まさか自身が働くホテルのロイヤルスイートで制服姿のままこんな目に遭おうとは、本人にとっても信じ難いことだろう。

祐佳がトレーにワイングラスを載せ、三人に赤ワインを配り始めた。いよいよ遊戯開始である。



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画像は相互リンク先「PORNOGRAPH」PORTER RIMU様からお借りしています



















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