官能小説『掘割の畔に棲む女』

知佳 作





 

第20話 ~鍛え上げた肉体のみが持つ魔力~

 千里さんは過去から自分というものを消す為藤乃湯旅館の離れに棲み暮らしました。 住まわせてくれる条件が別段仲居だのコンパニオンだのの経験がなくても女ならそれなりに出来る夜伽だったのです。 しかし業突く張り女将は女を売るだけでは許してくれなく雇女、つまり住み込み女中もやらされました。

 旅館が如何に忙しくても体力的には農婦の方が数倍キツイ肉体労働。 しかも掘割に住むと決めた以上自転車通勤せねばならず更に一層躰は逞しくなっていきました。 太股などなまじっかの競輪選手張りになっていったんです。 男との睦言のために躰を鍛え上げたわけではありませんが鍛えるということは肉体が若返るということらしく一時は潮が引くが如く男日照りになっていった廃屋も、それを知った男どもがぼちぼち帰ってきて以前にやや近い状態になってきたんです。

 本当なら仕事で汗をかいた時など、大塚家の浴室に入ってシャワーを浴び着替えてから帰って来ていたものを、そんなことして時間潰したら男どもと繰り返している睦言に間に合わないのでこの頃ではコンロでお湯を沸かし、それを廃屋の浴室に持ち込んで行水するようになったんです。

 廃屋の浴室の脱衣所はお金がなくてDIYを行ってなかったので着替えは浴室を出たところで行わなきゃなりません。 それをまた男どもは喜びました。 彼らに言わせると願っても叶う筈もない魅惑的な躰を拝めるとあって廃品ではなく貯金をはたいて何やら買い込んできてはご機嫌を窺うようになってきたんです。

 千里さんからすればその逆でした。 旅館にいた頃は化粧でごまかしてはいたものの夜と昼が逆転したような生活を強いられ、おまけに食べさせてもらってないものだから必要なところに肉が付かないんです。 おまけにしょっちゅう眩暈を起こすものだからまるで病人のような顔をしていたんです。

 農場でもそうですがシャワーを浴びるにしても燃料代に気を使い極力低い温度で使うようにしてました。 最初の頃は血の気が引いて気が遠くなったりしていましたが、この頃では躰に少し冷たいぐらいのお湯を掛けた方がかえって気持ちよく感じられるようになっていったんです。

 いわゆる肌が水を弾くってやつです。 こうなるときれいに着飾って街を闊歩するデリ譲などより脱いでみると余程きれいなんです。

 性格たるや比べ物にならないほど素直となれば頭を下げてデリ譲を買いに走るより場所的には少々難はあるけれど廃屋で千里さんを拝んでいた方が良いように思えたんでしょう。 徐々に人気を博していきました。 以前のように順番待ちになるほどだったんです。

 千里さんにしてももうすっかり司のことは諦めてしまってますので、俗に言うところの実態さえわからなかったら喜んでもらえてしかも自分も気持ちよく精神までも安定するならイケイケになってしまったんです。

 「お願い、おじさん。 ウチはもう限界みたい」 鼻にかかった悩ましい声で千里さんがこう訴えてきました。 おじさんと言われた男は頷き、太股に心を残しながらも両手を再びウエストに滑り上げました。

 どこの親父が買い与えたのか滑らかな生地でできた下着をお尻の方から毟り取るようにしながら下にずりおろしていくんです。 小さな布切れが股間を離れる際、蜜液が長く糸を引くのが見えました。 これまでの稚拙とも思える行為で千里さんはこの夜何故だかたっぷり濡らしてしまったらしいのです。

 引き締まった足首から丁寧に下着を抜き取り、このおじさんと呼ばれた男は立ち上がりました。

 屋根から雨漏りがし床は踏み場所を間違えると抜け落ちてしまいそうな風呂場で行水を終え出て来てやらやっと衣服を身に着けたばかりのところをこのおじさんと呼ばれる男が襲い掛かっていたのです。

 見下ろす千里さんは正に戦利品と呼ぶにふさわしい見事な肢体を男の前に晒してくれていたのです。

 生まれたままの姿になった千里さんをおじさんと呼ばれた男は抱え上げました。 千里さんは少々びっくりしたようで小さな悲鳴を上げましたがおじさんの意思を知りそれ以上は抵抗しなかったのです。

 廃屋ですので灯りといえば蝋燭です。 お互い信頼しあえてなければとても抱っこし移動などというわけにはいきません。 千里さんはだからおじさんと呼ばれる男の首に両手を回しされるままにしていたんです。

 千里さんがここに辿り着く前にこの家に忍び込み彼女の帰りを待つ間に閨は整えてありました。 布団の中央におじさんは千里さんを横たえ彼女の足を大きく開かせたのです。

 割った太股の間で腹ばいの姿勢を取り千里さんに膝を立てさせ、己は左右の太股を下方から掌で支えました。 

 デリ譲を相手にしていた時と違って表面は女性特有の滑らかさがあるものの芯部は年老いて既に無くしてしまった筋肉が漲っているんです。

 だらしない生活を続けて来た街の女どもと違いえもいわれぬ芳香が鼻腔をくすぐりました。 男は静かに千里さんの秘部目掛け顔を近づけていったのです。



前頁/次頁





image









<筆者知佳さんのブログ>

元ヤン介護士 知佳さん。 友人久美さんが語る実話「高原ホテル」や創作小説「入谷村の淫習」など

『【知佳の美貌録】高原ホテル別版 艶本「知佳」』



女衒の家系に生まれ、それは売られていった女たちの呪いなのか、輪廻の炎は運命の高原ホテルへ彼女をいざなう……

『Japanese-wifeblog』










作品表紙

投稿官能小説(4)

トップページ
inserted by FC2 system