8.欺瞞

 翌日の朝、昨夜の浣腸セックスで乱れ狂い最後は失神してしまった自分を思い出して、ドレッサーの前で一人赤面しながら、私はある決意を胸に秘めていました。今日さえうまく乗り切る事が出来れば、明日は正ちゃんと海へ行く約束をしています。すなわち初めて彼に体を許せば、解毒されるチャンスがあると言う事です。そのためには町田先生を油断させておく必要がありました。

ーー菜穂さんみたいに身も心も征服されたフリをするのよ。そうすればあの男はいい気になって、私の計画になんか気付きゃしないから

 どうしてもモジモジしてしまう股縄の喰い込んだ腰の動きを自制せず、欲望に身を任せてしまうと素晴らしい快感の戦慄が込み上げて、私は陶然としていました。そう、こんな風に積極的に肉の歓びに身を投じ、町田先生にアプローチするんです。覚悟を決めた私はウットリしながら入念に化粧を施し、下品なまでに濃いルージュを引きながら気持ち良く昇天していました。スカートの中が冷たくなりましたが、あえて気にしません。 

 こんな下品な化粧を施した私を他の人達はどんな目で見てるだろうかとドキドキしながら通学する途中も、あえてお尻を大きく振るモンローウォークに挑戦します。オズオズと小股で歩いても股縄が擦れてヤバくなってしまうんですから、こんな歩き方をするとオナニーしてるのと変わらない快感が迸って、ついに路上で気をやる事に成功しちゃいました。覚悟してたので大きな反応を見せる事もなく、立ち止まって火のように熱く乱れる吐息を整えながら、私は途方もない恥ずかしさと快楽で頭を痺れさせていました。

ーーああ、凄かった。こんなに良くなっちゃうなんて、恥ずかしいけど……もうどうなってもいいわ

 私は町田先生を油断させるため、性の快楽を貪る淫らな女に成り下がってしまった演技をしてるだけ。言わば偽りの姿なんですけど、もしかするとこんなエッチな私も全くの演技とは言えないかも知れません。でも、いいんです。今日はそんな淫らな欲望を解放して町田先生にぶつけ籠絡しちゃうんですから。どうせあの男のペニスには敵わないし、狂ったように歓んでしまうのは避けられません。それなら初めからそんな演技をしてるんだと自覚して、積極的に振る舞う方がずっと気楽でもありました。今日一日我慢すれば救われるんですし。

 教官室に入ると今日も菜穂さんが先に来ていました。でも他の男性の精子を浴びて解毒した彼女は、もう町田先生と嫌らしい行為に耽ってなどいません。私をイジめるためだけに、ここへ来てるんです。きっと彼女に蔑まれる事だろうと思いましたが、それはますます私の興奮を煽るだけ。自分から町田先生に向かって行った私は、思い切って口を開きました。

「お願いです、町田先生。く、ください」
「おしとやかな千寿先生がこれは又どんな風の吹き回しだ?」
「ずいぶん積極的じゃない、千寿せんせえ。うわ、何ソレ? 実習生が厚化粧? あり得なーい」
「まあ、それだけ早く俺のチンポの虜になって来たと言う証拠だな」
「せ~んせ、こうゆう場合は物の言い方ってもんがあるんだよ。菜穂が教えたげるから、言ってごらんなさい」

 計算通り得意満面でホクホクえびす顔になった先生を見て、内心しめたと思った私は、屈辱を噛み締めながら菜穂さんが言った言葉を口にしていきます。

「千寿は、チンポが大好きな、嫌らしい女の子です。どうか、町田先生の、お情けを下さい」
「よしよしいい子だ。チンポをやるからケツを振ってオナニーするんだぞ。一緒にイコウな、千寿」
「ありがとうございます。菜穂さん! 千寿の嫌らしいお尻をぶって!」
「せんせえってそんなにどMだったんだ。もうビックリ」

 もちろん演技だったんですけど、先生の差し出す肉棒をくわえてしまうと脳髄までジーンと甘美に疼き、どうでも良くなっちゃいました。嫌らしく突き出して揺さぶり始めたタイトスカートのお尻を菜穂さんが思い切り叩き始めると、私はどんどん興奮してエクスタシーの階段を駆け上がっていきます。そして私がはしたなく極めてしまうのを見た先生がドッと吐き出した冷たい精液をゴクゴクと飲み下し、一滴もこぼすまいと後始末に精を出していると、安らかな至福感に包まれました。

ーーさっきの言葉、まんざら嘘じゃなかったかも

 淫らな私を演じるため菜穂さんに教えられた通り自らの意志で口に出した言葉でしたが、本当の自分を晒け出しているような気もしました。そのくらいお尻をぶたれて気をやり、先生のザーメンを飲むのが私の変態性欲を満足させ、魂が震える程の愉悦に包まれてしまったんです。でもそれは偽りの私。どれだけ淫らに振る舞い、狂ったような肉の歓びに打ち震えても、なお心の片隅では冷静にこの男へ反抗するスキを狙っている私も確かに存在しています。菜穂さんと言葉を交わしている町田先生のデレデレぶりは失笑ものでした。愚かにも私が心まで完全に屈服してしまったと思い込んでるんですから。

「千寿せんせえ、堕ちるの早過ぎるんじゃない? 菜穂はもっと抵抗したよ」
「そりゃ本命だからな。俺も張り切って調教してんだよ。昨日なんかケツから吹きまくりながら、俺のチンポをくわえ込んで離してくれなかったんだぜ。挙げ句にゃイキ過ぎて気絶しやがった」
「ふうん。やっぱ大人の女の人って、どスケベで嫌らしいんだね」
「ははは、図星だろう、千寿」

 冷たいザーメンを飲み終えた私は駄目押しのように言いますが、先生の体液を摂取する度に理性は溶け崩れ、もう演技なのか本心なのか区別が付きませんでした。

「はい、その通りです。千寿はどスケベでどMなの。だからもっともっとイジめて下さい。お願いします」
「やれやれ、こりゃ参ったな」
「千寿せんせえ、あんまツンデレ過ぎると、町田せんせえも引いちゃうよ」
「ああ、だってえ。町田先生のチンポが大好きなの。お浣腸もして下さい、お願い」
「予定より一週間早く仕上がっちまったか」

ーーそんなわけないじゃない。バカな男……

 計画は順調だなと思いました。おまけに私の演技に欺されてたのは、先生だけじゃなかったんです。

「千寿せんせえ、反抗的じゃないから詰まんなーい」
「お前だって俺にデレデレだったんだから仕方ねえだろ」
「じゃあ、最後に浣腸して、ぶっといバイブでフタしたら、私もう帰る。彼をたんまりイジめちゃうんだ~」

ーー菜穂さんまで欺されてる。この分なら……

 でもやっぱり浣腸をタップリ施されてから立派なイボイボ付きペニス型バイブで尻穴にフタをされ、町田先生と繋がっちゃうのはとても刺激的。そんな状態で犯されると、アナルバイブのイボイボと先生のペニスが薄い粘膜越しに擦れ合う超絶快感で、あっと言う間に理性が吹き飛んじゃいます。おまけに今日は先生を籠絡するのが目的ですから、何のはばかりもありません。私は町田先生のペニスを力の限り締め上げて大きく腰を振り快楽を貪りました。先生のブヨブヨの肥満体に両手を回して必死でしがみ付き、唇を合わせると自分から積極的に舌を絡めて口を吸います。そして呆れる程何度も何度も気をやっては浣腸液をぶちまけ、先生にも何発か中出しされて、昨日同様意識を喪失してしまいました。

「さあ、もうお帰りだよ、千寿」

 頬を熱く弾力性のある物でピシャピシャと叩かれて目覚めると、それは町田先生のペニスでした。何度も出してしまったからでしょうか、少し柔らかくなってるようでしたが、私に意識を取り戻させるには十分でした。

 そして目覚めた私はすぐ、体が軽くなってる事に気付きました。私の体中をギチギチに緊縛して息苦しいくらいの圧迫感を与えていた縄が外されていたんです。もちろん最大の悩みのタネだった股縄からも解放されており、意識がハッキリして来るに従って、私の期待はいや増しに膨らみました。

ーー縄が解かれてる! これで、正ちゃんに抱かれるのに何の障害もないわ。まさか、こんなにうまくいくなんて……

 完璧に堕ちてしまったと見せ掛ける私の欺瞞に満ちた痴態で、町田先生はコロッと欺されてるんでしょう。もう絶対に私が他の男に体を許す事などあり得ないと。

「千寿、もうお前は俺の女だ」
「はい。その通りですわ、ご主人様」
「千寿っ!」

 最後に駄目押しのつもりで自然と口を突いた「ご主人様」と言う言葉に、激情を露わにした先生は唇を合わせて来ました。私はもちろん応じると、さらに淫らな女を演じ続けます。

「もう一度抱いて下さい! ああ、ご主人様のチンポが欲しいの」
「すまない。俺のチンポは、今夜はもう打ち止めだ」
「そうなんですか」

 確かに私がまさぐっている先生の股間の肉塊はダラリと力を失っていました。

「又来週だ。コッテリ抱いてやるからな、千寿」
「ああ、待ち遠しいわ」
「土日も電話するか知れない。その時は出るんだぞ」
「はい、わかりました」

 土日に電話、と聞いて少し嫌な事が頭をかすめましたが、そんな事はオクビにも出しません。この調子なら易々と「解毒」出来そうでした。何か私に抜けてる事があるんでしょうか?

「ああ、生きてて良かったぜ。お前みたいないい女と巡り会えるなんてな」
「そんな、オーバーですわ」
「ちょっとハードに調教し過ぎたみてえだからな。しっかり休めよ、千寿」
「はい、ありがとうございます」

 町田先生が感激を隠さず言葉にするのを聞いて、私は少しだけこの男に心を許しそうになってしまいました。彼は何と少し涙ぐんでいたんです。だからその後の言葉は百パーセント欺瞞ではありませんでした。

 だけどもう終わりです。私は明日、この男を裏切って正ちゃんとデートし、初めて体を許すつもりでした。彼がためらってしまわぬよう、私の方から積極的に誘って関係を持つんです。失敗する事なんか考えられませんでした。私は優しい言葉を掛けて来る町田先生にわずかだけ良心の呵責を覚えながら、家路に付いたのでした。でもよく考えれば、町田先生に同情してやる余地は全くありません。解毒をすましてしまえば、迷う事なくこの男を警察に突き出すべきでしょう。

 私が町田先生の呪縛から解き放たれて自由を手にするまで後わずかでした。




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