5.スーパーお嬢様聖奈さんちの秘密(1)

 次の日聖奈さんは猫を被っていた。いや、「ヘンタイ宣言」に始まり、突然のプロポーズ、そして一緒にアダルトグッズを買い込んでしまった昨日が異常だったわけで、それまでの平穏な日々が戻っただけの事だ。人一倍勉強が苦手で、大学受験に備えて大いに奮起が必要なボクにとってはありがたかった。聖奈さんのプロポーズを受けたは良いが、そのために浪人なんて羽目に陥ったらシャレにならないし、ひょっとしてそんな駄目男じゃ聖奈さんに見限られてしまうかも知れない。ボクはこのヘンタイだけど激カワで将来まで誓った聖奈さんのために、良い大学に行ってしっかりした職に就き、彼女を幸せにしてやる使命があるのだ。こうして大きな目標が出来たボクは苦手なりに授業に集中し、これまでになく勉強に打ち込んだのである。

 昼休みになるとそんなボクを認めてくれた聖奈さんから嬉しい言葉を掛けられた。

「ウチ今日は自分でおべんと作って来たさかい、一緒に食べよな。珍しく居眠りせえへんと授業を頑張っとったナオくんにご褒美や」

 こうして又昨日と同じ場所に2人で行って一緒にお昼を食べた。ラブジュースでベチョベチョの白パンツを見せ付けられた昨日のような事はなく、ごく普通に隣に座ったかわいい彼女がボクのために作ってくれたお手製の弁当を、新婚気取りで、はい、ナオくん、あ~ん、などと食べさせてくれたのである。彼女の料理は自己申告通りイマイチの味だったけど、そんなの問題じゃない。ボクは本当に嬉しくて、こんなに幸せでいいのかな? と思ってしまったくらいだった。

 そしてタップリ時間を使った昼食が終わると聖奈さんが言った。

「今日ガッコ終わったら、ウットコ来てくれへんか? オトンとオカンに会うて欲しいんよ」
「えっ!……」
「ええやろ? 善は急げっちゅうし。やっぱ親にも正式に挨拶して貰わんとな」

 ううむ。こんなトントン拍子に話が進んでも良いのだろうか。本当に夢じゃないだろうな、などと思っていると、聖奈さんが不穏な言葉を発して来た。

「ウットコの親、一寸変わっとる言うたやろ? ビックリせえへんように、よう覚悟してから来てえな」
「覚悟がいるの?」
「実はな、オトンもオカンも筋金入りのドヘンタイやねん。そらもう、ウチなんか足下にも及ばへんくらいのな」
「そ、それは凄いね……」

 言葉が詰まってしまうボクに、聖奈さんはさらに衝撃の事実を打ち明けて来た。

「ウチがこないなヘンタイさんになってもうたんも、親のせえなんやで」

ーーええっ!?
 
「小っちゃい頃から、エッチい事いっぱい教えてもろてな。バージンなんか、しょうがっこの高学年さんで破られたんやで」  
 
ーーぎええ~っっ!! それってお父さんに犯られたって事? 

 ボクはショックを口にしないようにしていたけど、表情が強張ってしまってただろう。聖奈さんもボクの心境を察したようだ。

「ごめんな。聞きとうなかったやろ、こないな話。せやけど、ウチと結婚するアンタには知っといて欲しかったんや。どうせすぐにバレる事やしな」

 もう頭がパニック状態のボクには、彼女の言いたい事がよくわからなかったんだけど、その真意はすぐにわかってしまう事になる。

「せやけどウチのバージンあげたんは、オカンが使うオモチャやったから、許してえな。ウチの親もそこまでアホとちゃうわ。オトンのちんちんも小っちゃい事からしゃぶりつけとるけどな、まんこに入れられた事は誓うて一度もあらへんよ。マジもんのちんちんは、ナオくんのが初めてや、ホンマやで。ウチ、アンタのちんちんに一目惚れして、コレや! コレを入れてもらうんや、思たんやでえ」
「それは、どうも」

 そして幼い頃から両親に性的なイタズラをされていたと言うショッキングな告白をした聖奈さんは、テヘッとかわいらしさ120%の笑いを見せながら、顔に似合わぬお下劣な言葉を続ける。

「ウチな、小っちゃい頃からヘンタイな親にイジくられとったおかげで、カラダじゅうどこもかしこもメッチャえっちで感じ易いねん。女の子に慣れとらへんナオくんが、なんぼヘタクソでもダイジョーブや。マンコでもオクチでもオシリノアナでも、アンタの好きな所にチンチンぶちこんでくれたらええよ。ウチ、大好きなナオくんのチンチンなら、どこでも気いやったる自信があるで」

ーーそんな事豪語されましても。それにボクのペニスって、そんなに立派なのかな

「何せウチが惚れたチンチンやさかいな。セイナのまんこにはベストフィットなんよ。ウチの親も、チンチンよう確かめて結婚相手探せ、言うてたからきっと喜んでくれるで」

 何と言うクレイジーなヘンタイ一家なんだろう。お嬢様である筈の聖奈さんちの異常さがどんどん暴露されるに連れて、ボクは大いに引いてしまったんだけど、もう後には引けそうになかった。

「ただいまー!」
「お嬢様、お勤めご苦労様でございます」
「ウチの彼氏連れて来たで。オトンとオカン呼んで来てえな」
「は、かしこまりました」

ーーゲーッ! 聖奈さんって、本物のお嬢様だったのか、こりゃスゲエ……

 さて、そんなこんなでメチャクチャ緊張しながら訪れた聖奈さんの家。門から屋敷までかなりの距離があるような豪邸で、それだけでもビックリだったけど、玄関の外に暑いのにビシッとダークスーツを着込んだガタイの良い強面の男が立っており、聖奈さんとそんな会話を交わす。これはマンガで読んだ事のある「執事」とか言う種類の人間だろうか。男はボクにはムスッとして愛想笑いの一つも見せず、聖奈さんにだけ恭しく応対すると家の中に引っ込んだんだけど、ボクの方は予想以上の聖奈さんの「お嬢様」ぶりに圧倒されて、一言も発する事が出来なかった。男はどう見ても一般人でなく、聖奈さんをお嬢様として崇めているボディーガードみたいな迫力があって、彼女に指一本でも触れようものなら即半殺しの目に遭わされそうなムードを持っていた。聖奈さんの希望だったとは言え、ボクは彼女にあんな事やこんな事をいっぱいしちゃったんだけど、もしこの男に知られてしまったら命はないんじゃなかろうか。そんな恐ろしい妄想で青くなってしまったボクに対して聖奈さんは平然としている。

「ナオくん、どないしたん? あないな下っぱにビビらんでもええんやで」
「下っぱ、なの……」
「ウットコ、若いもんをぎょうさん使とんねんで。輪番でウチらの世話をしてくれとんのや」
「やっぱり凄いお嬢様だったんだね、聖奈さんって」
「そう言うたやんか!」

 ボクは聖奈さんの前でオドオドした態度を見せちゃいけないと無理矢理虚勢を張り平気な風を装ってたんだけど、ホントはもう「下っぱ」にビビっておしっこをチビりそうになっていた。だけど笑わないで欲しい。ただでさえ彼女の親に結婚を前提とした交際をお願いすると言う、男にとっては人生最大の難関なんだから。それにしてもあのど迫力の黒スーツ男が下っぱだとしたら、聖奈さんのお父さんはどれだけ凄い人なんだろう?

「おお、アンタがセイナの彼氏くんかの、待っとりましたで。まあ楽にしとったらええがな。じきに母親も来まっさかい」
「ナオくん、ウチのオトンやで」
「あ、ああ、初めまして。吉田直之です」

 だけど聖奈さんのお父さんは拍子抜けするくらい、予想と全く異なる人だった。服装自体ステテコにランニングシャツ1枚と言うラフ過ぎる格好で、ヘラヘラ笑った姿はまるでお笑い芸人だ。娘と将来を誓った恋人(ボクの事だ)に初めて会うと言うのに、関西の人はこんなノリなんだろうか。ヒョロッとして小柄な体付きやニコニコと脳天気で人の良さそうな所は聖奈さんに似ていると思った。

ーーでもこの人、凄いドヘンタイなんだよな

 いかに暑いとは言え客を迎えるのにほとんど半裸で出て来る所はそれっぽい感じもする。だけどお父さんが、わてはこういうもんでっせ、よろしゅう頼んまさ、と渡してくれた名刺の肩書きを見てボクは驚いた。「真崎組代表取締役」と書いていたのだ。こんな立派な屋敷に暮らし、使用人を沢山使っているくらいだから大金持ちなのは間違いないけど、土建屋か何かの社長さんなんだろうか。

 だけど聖奈さんがサラッと言った言葉で、今度こそボクはぶっ倒れそうになった。

「ウットコのオトンな、ヤーさんなんやで。指定暴力団真崎組の組長やねん」

ーーぎええ~っっ!!

「ナオくん、やったかいな?」
「は、はい」
「セイナの大事な彼氏くんやからな。わてもそれなりに礼を尽くさせてもらいまっさ。せやから、そない怖がらんでもエエ」
「そやで。オトンはヤクザの組長や言うても、普段はフツウのオッサンやからな。まあ、ドヘンタイなんやけど」
「コラ、セイナ! お前、ナオくんに何つう事を……」
「ええやん、ホンマの事やし。それに、どうせそうゆう話すんのやろ」 

 お父さんは一応怒った見せただけと言う感じでちっとも怖くなく、聖奈さんとは本当に仲の良い父娘みたいだ。ボクは少しホッとすると同時に、別の心配が頭をかすめた。聖奈さんはどう言うつもりで最後の言葉を述べたんだろう。

「あっ、オカンも来たで」
「これセイナ! お客様の前ですよ」
「ごめんなさーい、お母様」

 その心配が解消される前に今度はお母さんがやって来たんだけど、お父さんと別の意味でボクは大いに驚いた。

ーーうわ、マジで極道の妻だ! こりゃ、ヤベエや……

 ステテコ一丁の情けないオッサン姿のお父さんと正反対に、お母さんは高級そうな黒っぽい和服を着ており、おまけに少しだけ覗けている胸元の素肌に刺青が入っていたのだ。そして並の男では敵いそうにない長身で威厳があり、これぞ正しく極道の妻だと思った。体型は全然違うけど聖奈さんのお母さんだけあって、やはり色白の凄い美人。大人の女性の色香で、年上趣味のないボクでもクラクラしそうだった。

「あなたが聖奈の彼氏様ですね。聖奈の母でございます。以後お見知りおきを」
「は、はい。こちらこそよろしくお願いします」

 凄艶な和服美女であるお母さんに三つ指を突いて深々と頭を下げられたボクの頭の中は完全にカオス状態だった。一体どうやったら、こんな奇妙きてれつな家族が出来上がるんだろう。

「まま、ナオくん、楽にしときや、ラクに」
「あなたっ!」
「はいっ!」
「大事な話をするのです。慎しみなさい」
「申し訳ありませんでした」
「ナオくん、ウットコおかんのが強いねん」
「セイナッ!」
「ごめんなさーい」
「もう、この子は……」

 聖奈さんに言われるまでもなく、お母さんに叱られたお父さんはシュンとしてしまった。聖奈さんも叱られたけど、ペロッと舌を出して謝っても反省してる様子はない。天真爛漫な聖奈さんらしく、お母さんもそれ以上厳しく言う事はなかった。結局お母さんにも臆せず聖奈さんは言い放つ。

「けどセイナはマゾっ子やさかい、ナオ君亭主関白な。ウチ、ナオ君にご奉仕すんねん」
「吉田様、聖奈の言う通りにお願い出来ますでしょうか。この子はわたくしと違って、たいそうマゾなのでございます。ご面倒とは存知ますが……」

ーーな、何なんだ、このわけのわからない展開は……

 ボクは聖奈さんとの結婚を前提とした交際をお願いに来たつもりだったんだけど、恐るべき事にもうそんな段階はすっとばして、お母さんにお願いされてしまった。アダルトグッズを買い込んだのはお母さんの入れ知恵だと聞かされてたんだから、覚悟しておくべきだったんだろうけど。

 聖奈さんの事前の話からボクは反対の状況を想像してたんだけど、実はお母さんがSでお父さんがMなんだそうだ。ところが娘の聖奈さんは強いマゾ願望を持っているので、結婚したらボクがSになって彼女をイジめてやってくれとお母さんに依頼されたのだ。さすが「ドヘンタイ」の親である。まともじゃない。

「吉田様はSMのご経験はおありでしょうか?」
「オカン、無茶言うたらアカン。ナオくんな、ウチとエッチしたのが初めてやったんやで。チェリーちゃんや」
「そうですか。それではわたくしが母として、聖奈のイジめ方を一から伝授致しましょう。よろしいですか? 吉田様」
「は、はい。よろしくお願いします」
「それではさっそく用意して参りましょう。しばしお待ち下さいませ」

 ど迫力のお母さんに逆らえるわけもなく、ボクは頭を下げてしまう。下手したら命の危険すら覚えているんだから。そしてお母さんが去ってしまうと、それまで黙っていたお父さんが話し掛けて来た。

「ナオくん、セイナのオカンは怖いやろ。すまんなあ。実はわても……」

 お父さんのヒソヒソ話はボクを心底慄え上がらせる恐ろしい内容だった。

「昔浮気がバレた事があってな。そしたら、こうや」

ーーギョエ~ッッ!! もうボクお家に帰りたいよう!

 お父さんが見せてくれた両手はどちらも小指がなかったのだ。ボクがもう涙目になっていると、聖奈さんが言う。

「ダイジョーブやで、ナオくん。ウチはそないな酷い事絶対せえへんから」
「ホンマでっせ。セイナは見ての通りごっつうカワイイし、性格も優しいホンマにええ子や。せやからナオくん、セイナの事をよろしゅう頼んまっせ」
「は、はい、わかりました……」
「それにオカンも筋さえ通せば無茶はせんやろ」
「セイナはねえ、ナオくんが浮気したらあ、チンチンちょん切ったるねん」
「コラ、セイナ! お前の方が酷いやないか」
「だって、ナオくんは絶対浮気なんかせえへんもん」
「すまんなあ、ナオくん。けど、セイナはそんだけアンタの事を好いとって信じとるんや。頼むで」
「……はい」
「オカンによう教わって、セイナをヒイヒイ泣かしたってや。けど、浮気して泣かしては困るで」
「よろしくね! ナオくん」

 組長なのにMで、Sであるお母さんには頭が上がらず、浮気がバレて両手の小指を詰めさせられた情けないお父さんだったけど、ボクはこの人に親近感を覚えた。でもボクはお父さんみたいにMでいる事は許されない。ドMな聖奈さんを満足させるため、Sとなって彼女をイジめてやらなくてはいけないのだ。

ーー何てヤバい子と結婚する事になってしまったんだ。下手したら指が、いやチンチンがなくなっちまうぞ


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作者:二次元世界の調教師さんのHP 『新・SM小説書庫2』


主に女子高生を羞恥や快楽で調教するソフトSM小説が掲載されている。
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